紋枯病  Thanatephorus cucumeris

〈生態と防除のねらい〉

 葉鞘と葉、ひどい場合はみごや穂を侵す。本病は葉鞘の水分上昇を妨げ、倒伏しやすくなることが減収の原因となる。初めは株の水際の葉鞘部に、暗緑色の小さな不規則な斑点ができるが、次第に大型となり中央部が灰緑〜灰白色の雲型病斑を形成する。古い病斑に形成された淡褐色の菌核(球形、楕円形、馬蹄形)は非常に落ちやすく、土壌中で越冬し、翌年の田植前の代かきで水面に浮上して伝染源となる。
 菌核から発芽した菌糸は、角皮や気孔から侵入する。本菌は高温多湿(侵入最適温度30〜32℃、湿度96%)を好むため、多肥密植栽培を行って茎葉が繁茂した圃場で本病の発生が多い。幼穂形成期頃までは、水平進展(発病株の増加)が行われ、その後高温が続くと垂直進展(病斑の上位葉への進展)が多くなる。
 初発生は、最高分げつ期〜幼穂形成期で、気温の上昇と共に病斑進展が速くなる。早期栽培では、イネの耐病性が極めて弱い時期である出穂期以後(抽出5〜6週間目ごろにもっとも罹病的になる)も、高温が続き、水平進展及び垂直進展が続くので、発病茎数は増加し、止葉付近まで病斑が達して被害程度も高くなる。普通期栽培では、出穂期以後、気温の低下とともに病勢も衰えていく。
 薬剤防除は、水平進展と垂直進展がもっとも盛んな幼穂形成期に行うと効果が高い。しかし、早期栽培においては、散布時期を早めに1回だけ行うと、水平進展を妨げて発病株率を低く経過させるが、上位葉への進展が盛んとなる時期に薬剤の効力が低下し、出穂後再び上位葉への進展が見られることがある。

〈耕種的防除法〉

 施肥基準を守り、窒素肥料の多用をしない。

〈薬剤防除法〉

 早期栽培は出穂期前後、普通期栽培は出穂2週間〜10日前に防除を行う。出穂期以降高温多雨で経過し、病斑の上位進展が認められる場合は、補正防除を行う。 

〈写真〉


紋枯病の病斑(停滞型)

進行型発病株