もみ枯細菌病  Pseudomonas glumae

T.育苗期

〈生態と防除のねらい〉

 出芽時にひどく感染すると、幼芽は褐変、わん曲し、葉身は展開することなく腐敗・枯死する。
 緑化期から硬化期にかけて生き残った苗の葉鞘には、淡褐色水浸状の病斑が現れ、しだいに濃褐色となる。葉は完全に抽出できず、ねじれたり、わん曲して奇形となる。
 さらに苗齢が進んで感染した苗は、葉鞘が褐変し、腐敗・枯死し、時には白く退色して異常伸長する症状も見られる。葉鞘が褐変した苗の芯葉を引くと、基部あるいは腐敗部から容易に抜ける。
 主な伝染源は罹病種子であるが、保菌していても必ず苗腐敗症が発生するとは限らず、催芽〜緑化期の高温(32〜35℃)と多湿が発生を助長する。発生すると苗の生育抑制が目立つが、生育促進のために過剰な潅水と高温育苗を行うと、逆に本病の発生を助長し、被害を大きくする。
 箱内感染は出芽期までで、緑化期以降の感染は少ないようである。また、播種量が多いほど発病も多い傾向である。
 発病が認められた苗を移植した場合、枯死することが多い。また、病原菌は、茎基部や葉鞘上で生存し、穂へ伝染するため、発生苗の移植は行わない。

〈耕種的防除法〉

 1.無病種子を用いる。
 2.塩水選を必ず行う。

〈薬剤防除法〉

 1.種子消毒(水稲の農薬一覧表参照)
 2.育苗箱処理(水稲の農薬一覧表参照)



U.本田期

〈生態と防除のねらい〉

 苗と籾で発生する。本田移植後、出穂期までの期間は明らかな病徴は生じず、乳熟期頃の籾のみに発生する。一般に籾は、乳白色ないし淡褐色となるが、枝梗や穂軸は変色せず、緑色のままであり、いもち病やごま葉枯病との区別は容易である。重症穂では大部分が不稔となるため、傾穂せず、直立したままとなり、重症穂を中心に坪状に発生する。罹病籾は登熟が悪く、重症穂はしいなとなる。
 本病は種子伝染し、病原細菌は、無病徴のイネ茎基部や葉鞘上に存在している。しかし、発病には、出穂期前後に発病に好適な気象条件が必要なため、発生の年次間差が大きい病害である。 
 主な感染時期は開花期頃で、この時期に高温(日最高温度30℃以上)で降雨があり、残暑が続くと多発する。

〈薬剤防除法〉

 出穂期と穂ぞろい期に5日間隔で2回散布を行うと効果は安定する。

〈被害解析〉 

 発病と収量については指導資料参照

〈写真〉


発病穂

発病穂

被害粒