ばか苗病  Gibberella fujikuroi

T.育苗期

〈生態と防除のねらい〉

 苗床及び本田で発生し、主に種子伝染する。病原菌の生育適温は26℃前後で低温に強い。
 育苗箱内は、畑状態、高温多湿、密播等で、本病原菌の好適条件にあるため、罹病種子を中心に周辺の籾へ感染が進む。早期栽培では育苗期間中が低温のため病徴が発現しにくく、見かけ上健全な苗による本田への持ち込みも多い。
 第2本葉展開頃から徒長苗が現れ、移植時まで継続する。罹病苗は葉色がやや淡く、細長くなり、草丈は健全苗の2倍以上になることもある。このような苗の多くは移植後枯死する。また、罹病苗を抜き取って見ると苗基部や籾の周辺に紫紅色の菌が着生している。
 1980年以降、全国的にベノミル剤の本病原菌に対する効果の低下が認められ、耐性菌の発生が確認されている。本県でも1988年以降、防除効果の低下が認められたため、ベノミル単剤及びチウラム・ベノミル剤に対する薬剤感受性検定が行われてきた。その結果、両薬剤とも感受性の低下が認められ、チウラム・ベノミル剤に対しては90年時点で中度耐性菌(100ppmでは菌糸進展するが 1,000ppm では菌糸が進展できない)が、ベノミル単剤に対しては、高度耐性菌(1,000ppmで菌糸が進展)が確認されており、EBI剤等による種子消毒の徹底が重要である。

〈耕種的防除法〉

 1.無病種子を用いる。
 2.塩水選を必ず行う。
 3.発病苗は見つけ次第抜き取る。
 4.本圃での発病枯死株は、出穂2週間前までに抜き取り、処分する。

〈薬剤防除法〉

  種子消毒(水稲の農薬一覧表参照)

〈参考資料〉

 発生生態と防除対策については1991年度指導資料(P.3〜10)、1992年度指導資料(P3)参照



U.本田期

〈生態と防除のねらい〉

 罹病苗や移植時には見かけ健全な苗を本田に移植すると、移植2週間目頃から発病を始める。罹病イネでは、葉鞘、節間が著しく伸長し、全身が黄化し、葉の着生角度が大きく横に開いた感じになり、葉鞘をはぐと、地上部の節から発根する(2段根)場合が多い。
 発病株のうち、病勢の激しい茎は穂ばらみ期頃に枯死し、葉鞘上に白色のカビ(分生子)を生じる。分生子は1〜2カ月間形成され、出穂開花中に飛散して穎内に落下し感染した籾が、翌年の主な伝染源となる。

〈耕種的防除法〉

 1.翌年、種子として用いる場合は、開花期前に発病枯死株を除去する。
 2.多発圃場の影響は30m以内で大きいので広域的に発病株を抜き取る。

〈参考資料〉

 1.発生生態と防除対策については1991年度指導資料参照



〈写真〉


発病苗は葉色が薄い


葉鞘上の白いカビ(分生胞子)

本田での発病株(葉色が黄色になって薄い)