稲こうじ病  Claviceps virens

〈生態と防除のねらい〉

 本病は籾にのみ発生する。出穂数日後には、感染した籾の内部には乳液状の物質が認められ、この乳液は被膜に覆われている。出穂7〜10日後頃(乳熟期頃)より外穎の隙間から青白色を帯びた小菌塊が現れ、しだいに籾を包むようになり、出穂14〜20日後まで肥大し、被膜が破れて中の厚膜胞子が露出し、最初は黄緑色であるが、日がたつにつれて濃緑色や緑黒色に変化する。老化した病籾は、外側は暗緑色で割れ目があり、内部は黄緑色、淡黄色の厚膜胞子、中心は白色の菌糸で構成され、淡黄色層に菌核が形成される場合もある。病籾の1穂当たり着生数は通常1〜数個で、20個以上生ずることもある。
 第一次伝染源は、土壌上で越冬した菌核あるいは土壌上や被害わらで越冬した厚膜胞子と考えられているが、幼芽期感染は明らかではない。
 菌核が発芽して子実体を作り、これに形成された子のう胞子が飛散するか、または厚膜胞子から分生子が形成、飛散して、穂ばらみ後期の葉鞘の隙間から雨や露と一緒に葉鞘内へ流れ込み感染すると考えられている。
 本病は俗に豊年穂と言われ、好天の年に多発し、発病しても実害はないとみなされていた。しかし実際には、幼穂分化期〜穂ばらみ期に降雨が多くて気温が低い、いもち病が多発するような年に発生が多い。茨城県での調査によると発病穂では発病籾が1粒増加するにしたがい、発病穂の登熟歩合は約5%、精玄米千粒重で約0.4gの低下となり、乳白米、青米および死米などが増加し、また品質にも影響することが明らかとなっている。 
 このほか、発生では品種間差が認められる。また、窒素の多施用、特に晩期追肥した圃場や山間地などの日照不足になる圃場、晩植や前作が野菜の場合に発生が多い傾向にある。

〈耕種的防除法〉

 1.病籾は早めに取り除く。
 2.施肥基準を守り、窒素の多施用、特に肥料が遅効きしないようにする。

〈薬剤防除法〉

 出穂10日前が散布適期である。

〈写真〉


発病ほ場


黄色の菌塊

黒色の菌塊