ウイルス病  

(1)萎縮病  Rice dwarf virus

〈生態と防除のねらい〉

 前年秋罹病イネを吸汁してウイルスを獲得した主にツマグロヨコバイによって媒介され、ウイルスは経卵伝染する。
 本病は媒介虫の保毒虫密度と関係があり、育苗期から本田初期の感染が主体となる。
罹病株では、草丈が短く葉色が濃くなって、葉脈に沿ってカスリ状の斑点が現れる。罹病株から出た分げつはすべて発病し、分げつ数が多くなって出穂しない場合が多く、出穂しても奇形となり稔実しない。

〈写真〉


葉の病徴(カスリ状斑点)



左:発病株(草丈が低い)、右:正常株

(2)縞葉枯病  Rice stripe virus

〈生態と防除のねらい〉

 前年秋罹病イネを吸汁してウイルスを獲得したヒメトビウンカによって媒介され、ウイルスは経卵伝染する。
 本病は媒介虫の保毒虫密度と関係があり、育苗期から本田初期の感染が主体となるが、7月下旬〜8月中旬の感染によっても発病する。
 本田初期の病徴は、新葉がこよりのようにねじれて徒長し、わん曲して垂れ枯れ下がる症状「ゆうれい病」を示す。展開した葉では葉脈に沿って幅の広い黄緑色または黄白色の縦縞を生じ、カスリ状となる。罹病株は草丈が低く、分げつ数は少なく、出穂しないか、しても奇形となり、稔実しない。

〈写真〉


発病株(新葉がこよりのようにねじれて枯れる)


(3)わい化病  Rice waika virus

〈生態と防除のねらい〉

 罹病刈り株体内で越冬したウイルスは翌春、ツマグロヨコバイの吸汁で伝搬するが、媒介虫の体内では越冬できない。
 8月に入って、中位葉(12葉中心で2、3葉)が退色黄化し、草丈が10〜25%低い、わい性となる。稈長の短縮化に伴って穂長も短くなり着粒数が減少する。根は黒色となり、粗剛で切れやすく、上根が少ない傾向がある。籾の褐変など汚れが目立つ。

〈写真〉


葉の病徴(退色黄化)


(4)褐穂黄化病(グラッシースタント)

 トビイロウンカが媒介する。
 本病の詳細については1991年版(p83)参照。