苗立枯性病害 

T.細菌による病害

〈生態と防除のねらい〉

もみ枯細菌病
Pseudomonas glumae
 苗立枯細菌病
Pseudomonas plantarii
褐 条 病
Pseudomonas avenae
本県の初確認 1955年(昭和30年) 1994年(平成6年) 1993年(平成5年)
症状 苗腐敗
(褐色、時に白化苗あり)
苗立枯
(赤褐色、乾燥枯死)
苗腐敗
(褐色条斑)
病徴   芯葉

      根
 容易に引き抜ける
 

引き抜けない(病徴が進むと抜ける)
伸長は極めて悪い
引き抜けない

種子から数cm離れて冠根あり
初発生時期 催芽時 緑化期 出芽時
発生状況 坪状に発生しやすい 帯状に発生しやすい 育苗箱全体に散在
発生助長要因 催芽〜緑化期の高温多湿
加温育苗(32〜35℃)
育苗中の高温多湿
(30〜34℃)
育苗中の高温多湿
催芽機の使用
伝染源 罹病種子 罹病種子 罹病種子
一次感染時期
二次感染時期
開花期(籾)
浸種〜播種14日後
開花期(籾)
浸種〜播種4日後
開花期(籾:不明確)
不明
本田での病徴 籾に有り 無し 無し

〈耕種的防除法〉

 催芽及び出芽時の高温条件は発生を助長するため、30℃以上にならないように育苗管理を行う。 

〈薬剤防除法〉

 1.種子消毒(水稲の農薬一覧表参照)
 2.床土混和処理(水稲の農薬一覧表参照)


U.糸状菌による病害

〈生態と防除のねらい〉

病 原 菌
(症 状)
発生生態 病徴 発生要因
地 際 部 種 籾 葉身・葉鞘
フザリウム属菌
(苗立枯)
Fusarium spp.
土壌に生息し、種籾の傷口から侵入するが、病原力は弱いため苗の抵抗力の低下で発病する。
褐変 
白色カビ 
褐変 
伸長悪い
土壌中の籾を中心に紅色の菌叢
生育不良で萎凋・黄化
@緑化直後の低温
A傷籾
BpH5.5以上の土壌
C極端な乾燥・過湿
D汚染土壌(土壌伝染)
リゾクトニア属菌
(苗立枯)
Rhizoctonia
solani
発育適温は20〜30℃、多犯性の土壌生息菌で菌核が第一次伝染源。移植約1週間前に急に発生。
灰緑色病斑“葉腐れ”葉鞘は菌糸が蜘蛛巣状に絡み、白〜淡褐色の菌核を形成。
@汚染畑土壌  (土壌伝染) 
A厚播
B多肥
C高温多湿
ピシウム属菌
(苗立枯)
Pythium spp.
土壌・水中に生息する。出芽直後の低温が発病を助長。
カビはみられない。
水浸状に褐変腐敗するがカビはみられない。
カビはみられない。
褐変腐敗し枯死。
@出芽直後の低温
A汚染土壌(土壌伝染)
B傷籾
ピシウム属菌
(ムレ苗)
Pythium spp.
土壌・水中に生息する。第2〜3葉期に急激に水分不足のようにしおれる。
水浸状に褐変するがカビはみられない。
細根が少なくて根張りが悪くやや褐変している。検鏡により組織内に菌糸や卵胞子が見られる。
カビはみられない。
2〜3葉期に急性萎凋する。
芯葉は針状、葉身は緑色→淡黄褐色→灰褐色に枯死。
坪状、リング状に発生する。
@緑化〜2葉期の温度較差(最低10℃、最高32℃)
A汚染土壌(土壌伝染)
B極端な乾燥・過湿
C傷籾
リゾプス属菌
(苗立枯)
Rhizopus spp.
発育適温は25〜30℃、適温下での発育は早い。土壌中に生息する。
出芽直後に育苗箱全体に白・灰白(胞子)の綿毛状のカビで覆われる。
伸長止まる先端が膨らむ、褐変腐敗、マット層の裏に菌糸が密生。
種もみのまわりに菌糸が密生(地際部には見られない)出芽しな
い。
苗の生育は悪く、黄緑色に退化。
@土壌・空気伝染
A出芽時高温多湿
B厚播
C緑化〜10日の低温D保水力の大きい土 壌
E窒素過多   
ムコール属菌
(苗立枯)
Mucor fragilis
生育適温は26〜30℃でリゾプスに類似した腐生菌。
リゾプスと同様
根数が少伸長が劣る褐変・腐敗
リゾプスと同様
リゾプスと同様
トリコデルマ属菌
(苗立枯)
Trichoderma
viride
発育適温は25〜30℃で、発育はリゾプスに次いで早い。土壌中に生息する。
出芽時に育苗箱の表面が白色菌叢で覆われる鞘葉、不完全葉の褐変
褐変 
根長:短 
根数:少
緑化以降青緑色のカビ(胞子塊)腐敗
黄化・萎凋枯死する
出芽不揃い
@出芽30℃前後
A保水力の小さい土壌
BpH4.0以下
C土壌水分不足
D土壌・空気伝染
白絹病菌 
(苗立枯)
Corticium rolfsii
発育適温は30℃、多犯性の土壌生息菌。比較的水には弱い。
絹糸状の菌糸→1〜2oの菌核(白・栗色)を形成。
黄化淡褐色萎凋枯死
@汚染畑土壌(土壌伝染) 
A高温多湿
いもち病菌
(萎凋枯死)
Pyricularia
oryzae
育苗後期に発生。急速に病勢進展し、ズリコミ症状となる。
暗褐変 葉身に灰緑色〜褐色の紡錘形斑点心葉の萎凋・枯死
@種子伝染
A高温多湿
B不完全な覆土
C厚播
ごま葉枯病菌
(立枯・苗焼 け)
Cochliobolus
miyabeanus
生育適温は27〜30℃、老葉にでやすい。低温・乾燥条件下で長期生存可能。
赤褐変 生育悪い 「苗焼け」全面褐変・黒褐色短線状斑点からねじれ、曲がり症状。
@種子伝染
A不完全な覆土
B高温多湿
C厚播
ばか苗病菌
(徒長枯死)
Gibberella
fujikuroi
生育適温は26℃前後、低温に強い。
紫紅色の菌叢
第 2葉展開頃から黄化徒長・枯死
@種子伝染
A厚播

〈耕種的防除法〉

 1.育苗箱は播種作業前に良く洗う。
 2.前年発病土壌、または土壌汚染が心配される畑土壌は使用しない。
 3.傷籾は感染しやすいのでなるべく使用しない。
 4.極端な厚播きをしない。
 5.窒素過多にならないように施肥基準を守る。
 6.出芽〜生育期間中の温度較差(最低10℃、最高32℃)がないように管理する。
 7.極端な乾湿にならないように管理する。
 8.古いコモ、ムシロ、ビニルなどを被覆資材として使用しない。
 9.直接土壌上に育苗箱を置かず、下にビニルシート等を敷く。

〈薬剤防除法〉

 1.床土混和、潅注(水稲の農薬一覧表参照)
 2.種子消毒(水稲の農薬一覧表参照)