イネミズゾウムシ 

〈生態と防除のねらい〉

 雌のみで増植(単為生殖)し、年1回(一部で2回)発生する。畦畔、土手、果樹園、雑木林、野草地などの枯草や落葉下で、成虫態で越冬する。越冬成虫は4月中旬頃から活動し始め、大半の成虫は4月下旬〜5月上旬に越冬地付近のイネ科雑草(ネザサ、チガヤ、ススキなど)の新葉を摂食し始め、田植が始まると次々と本田へ移動する。
 越冬成虫は雑草やイネを約2週間摂食すると産卵を開始する。産卵は30〜60日の長期にわたる。卵は水面下のイネの葉鞘組織内に1個づつばらばらに産み込まれる。若齢幼虫は根の内部に潜入し、根を空洞状に食害するが、中齢以降は外部から食害するため断根状態になり、生育障害が大きい。幼虫は土中を容易に移動する。幼虫は4齢を経て老熟すると卵形の土まゆをつくり、その中で蛹化するが、土まゆの一瑞は必ずイネの根に連なっている。発育日数は卵約7日、幼虫約30日、蛹7〜14日である。新成虫は7月中旬頃より出現し、ほとんどがしばらくイネ株に生息し、遅発分げつの葉などを摂食する。8月下旬には越冬場所への移動を完了し、そこで雑草を摂食したのち、休眠に入り越冬する。
 イネミズゾウムシの被害は越冬成虫による本田初期の新葉の食害と幼虫による根の食害であるが、成虫による被害は通常の密度では認められず、幼虫による根の食害が被害の主体である。また、新成虫による葉の食害は全く問題にならない。
 越冬成虫の本田への侵入は移植時期が早い水稲ほど多くなる。また、成虫は若く軟らかい葉を好んで摂食するため稚苗移植は中、成苗移植に比較して成虫の集まりも多く、苗も小さいこともあって被害程度も甚しい。幼虫による被害の出やすい水田は排水不良の低湿田、還元が強く根の発育不良田、未分解きゅう肥の多施用田などである。
 早期水稲における越冬成虫の本田への侵入パターンは他の移植時期と異なり、移植直後からの侵入は少なく、5月上旬にやや密度の増加が見られ、侵入最盛期は5月中旬〜下旬となる。移植から侵入最盛期までの期間が長いのが早期水稲における特長である。

〈耕種的防除法〉

 1.移植時期をできるだけあわせる。周辺ほ場に比べて少しでも移植時期が早いと成虫の侵入が集中する。
 2.できる限り浅水にし、深水にしない。1993年版指導資料(P.15〜17)参照。
 3.早期水稲における防除はほ場条件の違いに対応して以下のように行う。
 (1) 水管理が実施可能なほ場では、間断灌水及び中干しを徹底し被害を回避する。
 (2) 中干しが十分できず、例年成虫が多発するほ場では、育苗箱施薬により防除する。この場合にも浅水管理や間断灌水を可能な限り実施する。
 (3) 中干しが十分できず、例年成虫の発生が比較的少ないほ場では、浅水管理や間断灌水を可能な限り実施し成虫の定着を抑制する。5月5〜6半旬の成虫密度が要防除水準を越えた場合にのみ水面施用薬剤で防除する。

〈薬剤防除法〉

 1.要防除水準
  5月5〜6半旬の成虫密度が株当り0.5頭
 2.育苗箱施薬
  施薬量が不足すると残効期間が短くなるので、1箱当たりの施薬量を厳守する。
 3.本田での水面施用剤の使用法
 (1) 成虫密度最盛期に施用する。
 (2) 早期水稲では移植後しばらくは越冬成虫の侵入は少なく、5月20日頃から侵入量が多くなるので施用時期が早くなりすぎないように注意する。
 (3) かけ流しや降雨によるオーバーフローがあると効果が不十分になりやすい。

〈参考資料〉

 発生生態と防除法については1991年版指導資料(P.28〜35)に詳説した。

〈写真〉


イネミズゾウムシの成虫

イネミズゾウムシ成虫の食害葉

幼虫(背中に6個の突起を持つ)



根に作られた土まゆ