スクミリンゴガイ 

〈生態と防除のねらい〉

 アルゼンチン北部、ウルグアイなど熱帯、亜熱帯原産の淡水性巻貝で、用排水路、池、クリークなどの淡水中や河口部の汽水域に生息する。非常に雑食性で、水稲、レンコン、イグサなどの農作物を含むほとんどすべての水生植物を摂食する。えら呼吸と肺呼吸の両方を行う。
 日本産タニシには数種あるが本種とは次の点で異なる。本種は卵生であるが日本産タニシは胎生である。また螺層は本種では5層であるが、日本産タニシでは6〜8層である。なお、螺層はいずれも右巻きである。
 越冬場所は水田内、用排水路、クリークなどであるが、落水すると土中の比較的浅い位置に潜入し、越冬する。産卵は4月中旬頃から始まり、夏期にピークとなる。卵は水面上にある植物、人工物など、ふ化した稚貝が水中に落下しやすい場所に卵塊で産みつけられる。卵は夏期には10日〜2週間でふ化する。ふ化した稚貝は春〜夏期には50〜60日で成貝(殻高約3p)になり、産卵が可能となる。
 水田内で発生する貝は、水田内越冬貝の他、梅雨時の浸冠水により隣接用排水路から侵入してくるものとがある。水稲を食害する場合、腹足で茎葉を抱きかかえ、顎で噛み切ったあと、口器で引き込みながら摂食する。被害が激しい場合は欠株となったり、著しい生育不良を引き起こす。被害は水稲の生育ステージが若いほど激しく、6葉期以降になると欠株を生ずるような被害は少なくなる。
 水田内で貝が越冬している場合は移植直後から被害を受けるので、湛水後に活動を始めた貝を移植期までに捕殺するか、石灰窒素で防除する。移植前に防除を行っても、取水時や梅雨期の浸冠水時に隣接用水路から侵入してくることがあるので、移植後に貝の侵入が予想される場合は、育苗箱施薬や本田期の粒剤散布により食害防止を図る。

〈物理的防除法〉

 1.生具の補殺、卵塊の圧殺
 (1) 卵齢が卵期間の1/2以内の日数であれば、水中に没するだけで殺卵効果がある。
 (2) 当面の被害防止のために生貝の捕殺、侵入防止を行う場合は殻高2p以上の貝を対象とする。
 2.取水口に網を設置し、水田内への貝の侵入防止を図る。

〈耕種的防除法〉

 1.浅水管理(1p)は被害軽減に有効である。
 (1) 除草剤や箱施薬剤による薬害を生じさせないため、田面の均平化に努める。
 (2) 要防除期間は6葉期頃までである。
 2.中〜成苗移植を行い、被害軽減を図る。
 3.厳寒期(1月中〜下旬頃)にほ場を耕起し、土中の越冬貝を寒気にさらす。

〈薬剤防除法〉

 常発地帯では育苗箱施薬や本田期の粒剤散布により食害防止を図る。

〈参考資料〉

 本種の発生と対策について詳細は指導資料参照。

〈写真〉



ほ場内のスクミリンゴガイ

稲に産卵されたピンク色の卵塊

食害されて欠株となったほ場