斑点米カメムシ類 

〈生態と防除のねらい〉

 現在、県内の水稲で発生量が多く、斑点米発生の原因となっている主な種類は、クモヘリカメムシ、ホソハリカメムシ、シラホシカメムシの3種類である。
 クモヘリカメムシは年間2〜3回発生する。越冬態は成虫で、山林や防風林等のスギ、ヒノキなどの枝葉および下草のシダ類の葉などで越冬する。越冬地からの移動は遅く、ホソハリカメムシやシラホシカメムシが4月頃から雑草地等で生息しているのに対し、本種は7月に入ってからエノコログサ、ヒエ、シバ類などのイネ科雑草の穂に多くの成虫が認められるようになる。クモヘリカメムシはイネに対する依存度の高い種であり、7月下旬〜8月上旬になりイネが出穂すると、水田へ侵入し、穂を吸汁加害するとともにイネの葉や穂に産卵を始める。卵は1週間でふ化し、幼虫も成虫同様にイネの穂を吸汁加害しながら5齢を経過して成虫になる。幼虫期間は比較的短く、第一世代が約16日、第2世代が約20日である。新成虫はイネの穂が成熟してくると、出穂の遅い水田や畦畔のイネ科雑草へ移動する。クモヘリカメムシは、イネが収穫された後もしばらくは畦畔や水田周辺の雑草地に生息しているが、気温の低下とともに越冬地へ移動する。
 ホソハリカメムシはススキ、チガヤの株元等でクモヘリカメムシと同様に成虫で越冬する。越冬成虫は4〜5月に越冬場所を離れ、春の好適な餌植物であるスズメノテッポウ、スズメノカタビラなどの生えた雑草地等へ移動し、これを摂取し、脂質の形でエネルギーを蓄積する。越冬成虫は、6月〜7月中旬までは好適な餌植物が少ないため、蓄えた脂質によって飢餓に耐え、飛翔によってあまり好適でない餌植物を転々と移動する。7月中旬頃からヒエ類、メヒシバ等の好適な餌植物へ移動し、そこで産卵、繁殖する。また、7月中旬〜8月上旬に出穂した水田があると、イネに飛来して穂を加害しそこでも繁殖する。卵は約11日でふ化し幼虫は5齢を経過して成虫になる。越冬後成虫の寿命は長く、産卵も長期間にわたって行われる。9月〜10月にかけてヒエ類やメヒシバが枯死すると、成虫は越冬場所へ移動する。
 シラホシカメムシは日当たりの良い枯死雑草地や休耕田等で越冬する。本種の、卵は春・夏の自然条件では4〜6日でふ化する。幼虫は5齢を経過し、自然条件では30〜35日で成虫になる。成虫の寿命は各世代とも個体間差異が大きく、夏世代で60日前後である。
 斑点米カメムシ類の成虫の飛来は出穂の早い水稲ほど多くなる傾向があるため、早期および早植水稲では特に発生に注意する必要がある。出穂〜乳熟期頃に吸汁加害を受けると胚乳は成長を停止し、不稔粒やしいな粒となる。乳熟期以降の加害では稔実への影響は小さくなるが、吸汁痕の周りが褐変あるいは斑紋となる斑点米が発生する原因となり、著しく品質を低下させる。加害は出穂直後から約1カ月間であるが、出穂後5〜20日の加害により斑点米が高率に発生する。
 カメムシ類の成虫は出穂中のイネを求めて水田を広範囲に移動する習性があるので、作期、品種などを統一して被害分散をはかるのも一つの方法である。また、越冬成虫はイネへ飛来してくるまではイネ科雑草などに依存して生息しているため、水田周辺の雑草管理を徹底して生活環を断ち切ることも重要である。
 薬剤防除の適期は斑点米を高率に発生させる時期であるが、成虫が次々と飛来してくるものと考えられるため、穂揃期とその7〜10日後に薬剤散布を行う。

〈耕種的防除法〉

 1.作期・品種を統一し、加害の集中を防止する。
 2.水稲への侵入源となる畦畔や休耕田などの雑草管理を徹底する。ただし、出穂直前になってから除草すると雑草に生息していたカメムシを水稲へ追いやることになるので除草は出穂前に実施する。

〈薬剤防除法〉

 1.要防除水準
  被害許容水準を斑点米混入率0.1%とすると、穂揃期に見取り調査してクモへリカメムシとホソハリカメムシの合計虫数が100株あたり2〜4頭のとき防除を行う。
  指導資料参照。
 2.防除適期は穂揃期とその7〜10日後である。

〈参考資料〉

 発生生態と防除法については1991年版指導資料(P.44〜46)に詳説した。

〈写真〉


アカスジカスミカメ(成虫)


アカスジカスミカメ(幼虫)


アカヒゲホソミドリカスミカメ(成虫)


シラホシカメムシ(左:幼虫、右:成虫)


クモヘリカメムシ(成虫)


クモヘリカメムシ(幼虫)

ホソハリカメムシ(幼虫)


ホソハリカメムシ(成虫)


斑点米