イネクロカメムシ 

〈生態と防除のねらい〉

 年1世代でイネ単食性である。山地に近い平坦地や中山間地に発生が多い。
 成虫態でマツや雑木の落葉下で越冬し、越冬成虫は6〜7月に本田に飛来する。飛来は群をなして行われることもある。飛来の最盛期は6月下旬〜7月上旬である。越冬地から飛来した成虫はいったん畦畔に降下し、その後畦畔部に近いイネから次第に水田全体へと分布を広げる。飛来後イネを吸汁し8月下旬頃まで産卵する。第1世代幼虫は7月下旬頃から、新成虫は8月中旬頃から現れる。新成虫は10月下旬まで穂を加害した後、越冬地へ移動する。
 イネは全期間にわたって加害されるが、越冬成虫によるイネの生育前期の被害が大きい。越冬成虫が加害すると葉に黄白色の斑点が生じたり、葉先が黄変稔転したりする。また発生量が多い場合は株が矮小となり、株張りが抑制される。激しい加害を受けるとニカメイガ幼虫による加害に似た心枯茎となり有効茎数が減少する。若齢幼虫が加害すると下位の葉や葉鞘に斑点を作り、葉や遅発分げつを枯死させる。老齢幼虫は茎の上部に群生して加害するため、穂が「出すくみ」や白穂となる。また籾は変色籾となる。新成虫は主に穂を加害するため不稔籾や屑米が発生し、1穂中の完全米粒数が著しく減少する。斑点米の発生は少ない。
 防除は第1世代の老齢幼虫や新成虫は薬剤感受性が低いこと、越冬成虫の加害が水稲の栄養成長期に与える影響が大きいことなどの理由から越冬成虫や老齢幼虫をねらって行う。防除適期は越冬成虫の本田出現期に当たる6月下旬〜7月上旬である。

〈耕種的防除法〉

 越冬成虫の飛来は早植田や多肥施用田、密植田で多いので施肥基準、栽培基準を守り、できるだけ飛来量を少なくする。

〈薬剤防除法〉

 1.本田期防除
  防除適期は越冬成虫の本田への飛来最盛期に当たる6月下旬〜7月上旬である。

〈写真〉


茎にとまる成虫


交尾中の成虫