ニカメイガ(ニカメイチュウ)

〈生態と防除のねらい〉

 年2回発生する。主として稲わらまたは刈株内で幼虫態で越冬する。越冬成虫は4月中旬頃から蛹になる。一般に、平坦地における発生は越冬世代が5月下旬〜7月中旬(最盛期6月中・下旬)、第1世代が8月上旬〜9月中旬(最盛期8月第4、5半旬)頃である。
 稚苗機繊移植、コンバイン、ハーベスターの普及などにより1972年頃から発生が急激に減少した。しかし、1989年頃から早期栽培と普通期栽培とが混在する園芸地帯で増加傾向にある。発生の可能性のある地域ではフェロモントラップを利用して発生を確認する。
 本虫の被害は幼虫の食害による。幼虫は淡褐色の地に暗褐色の縦縞が5本あり、老熟すると体長は約20oになる。
 第1世代のふ化幼虫は集団で葉耳付近から葉鞘裏面に侵入して食害するため葉鞘が褐変し、さらに葉身が枯れて流れ葉となる。その後分散した幼虫が茎下部から茎内に食入して内部を食害する結果、心葉が初期には黄色、後期には汚白色の「心枯れ」となる。心枯れとなった茎を割ると内部に虫糞と幼虫が見つかることがある。幼虫は次々と株を移動して食害を繰り返すため被害が大きくなる。
 第2世代幼虫も第1世代と同様にまず葉鞘の裏面を食害するため、葉鞘が褐色に変色する。次いで心部に食入するため出穂前の食害では「出すくみ」、出穂直後の食害では「白穂」となる。このような茎の下部を見ると幼虫の侵入した穴がある。穴の周囲は変色し、虫糞が出かかっている。被害が激しくなると食害箇所から茎が折れて穂は水面に垂れ込み田面全体が汚白色化する。
 本種による被害はイネヨトウによる被害と類似しているが、イネヨトウではふ化幼虫が食入した葉鞘の外に糞を出すので本種と区別できる。

〈薬剤防除法〉

 発生地帯ではフェロモントラップにより発蛾最盛期を把握し、適期防除を行う。防除は第1世代を対象に重点的に行う。第2世代は被害が大きくなりやすい。
 1.第1世代幼虫防除
 (1) 普通期栽培では発蛾最盛期の15〜20日後で葉鞘の褐変が見え始めた頃に防除を行う。フェロモントラップには雄成虫のみが誘引されるので、防除時期は予察灯の発蛾最盛期に基づく従来の時期に比べてやや遅くなる。
 (2) 早期、早植栽培では第1世代幼虫期にはイネが生育して大きくなっており、ふ化幼虫の食入が早く起こるので発蛾最盛期7日後に散布する。
 2.第2世代幼虫防除
 (1) 第2世代幼虫期には早期〜普通期水稲のいずれもイネが大きく、ふ化幼虫の食入が早く起こるので発蛾最盛期7日後に散布する。
 (2) 散布後も成虫の発生が多い場合には第1回散布7日後に再度散布する。

〈参考資料〉

 発生経過と増加の要因については1993年版指導資料(P.30〜31)参照。

〈写真〉


被害株(茎が枯れている)


茎の中を食害している幼虫


幼虫(暗褐色の背線、亜背線、気門上線がある)

成虫

成虫