イネゾウムシ 

〈生態と防除のねらい〉

 一般に広範囲に大発生することはなく、発生は局地的である。また平坦部より山間・山麓部の水田に多く、窒素過多で葉色が濃く軟弱なイネを好んで加害する。
 年1回の発生で幼虫または成虫で越冬する。成虫は畦畔や土手などで越冬し、幼虫はイネ刈株下の地表7〜8p以内の比較的浅い部分で越冬する。越冬幼虫は5月上〜中旬頃に蛹化し5月中〜下旬頃から成虫となる。
 成虫は株元の葉鞘部に産卵する。ふ化幼虫は土中に潜りイネ株元で腐植などを摂食するがイネの根を食害することはほとんどない。越冬態は土壌の水分条件によって異なる。早期に乾燥する水田ではふ化後約1カ月で地表下の比較的浅い位置に「土か」を作って蛹化し、約1〜2週間で成虫となる。後期まで土壌含水率の高い水田では蛹化せず幼虫態のまま越冬に入る。
 イネ株に寄生した成虫は葉鞘部に口吻を差し込んで心葉を食害するため新葉展開後葉身部にミシン目状の穴が一列にあき、風などで切損しやすくなる。このため初期生育が阻害される。また生長点が加害されると心止まりとなり、激しい場合は株が枯死する。
 本種による被害としては越冬世代成虫による本田初期の茎葉食害と第1世代成虫による籾の加害があるが、籾の被害はまれである。

〈耕種的防除法〉

 1.葉色が濃く軟弱なイネに多発するので窒素過多にならないように施肥基準を守る。
 2.冬期に深耕し、越冬幼虫を寒気にあて密度低下を図る。

〈薬剤防除法〉

 1.代かき時、幼虫や成虫が多数認められる場合は防除を行う。
 2.イネ活着後水際付近の茎に成虫が認められる場合にはツマグロヨコバイ、ヒメトビウンカなどの防除もかねて薬剤散布を行う。

〈写真〉


食害葉

成虫

食害により葉がちぎれた株