軟腐病 Erwinia carotovora subsp.carotovora (Jones 1901) Bergey.Harrison,Breed. Hammer et Huntoon 1923

1.発生生態

 病原菌は極めて多犯性の細菌で、アプラナ科、ナス科などの野菜類のほか、キク、ヒマワリ、ベニバナ、イリス類、ユリ類、チューリップ、ヒアシンス、スイセン、シクラメン、カラー、サクラソウ、カトレア、シンビジウム、テンドロビウム、ファレノプシスなどキク科、ユリ科、ラン科、セリ科など多くの花き類を侵す。
 各種植物の茎、葉、葉柄、バルブ、花梗、根などの部分を侵す。おもに基部の方から水浸状となって病斑が拡大し、高温多湿条件下では数日で軟化腐敗する。また、腐敗部分は独特の臭気を発する。病原細菌は土壌中の生存能力が高く、土壌中の被害残渣やノゲシ、アカザ、スベリヒユ、ヒメジョオンなどの雑草の根圏土壌でも生存し、土壌伝染する。乾燥条件下では短時間で死滅するが、通常の畑状態では3年以上生存する。特に、土壌湿度が高く、地温が20℃以下の場合は土中に長く生存する。病原菌の発育適温は32〜33℃であり、30℃前後の高温、多湿条件で発病が多い。細菌類の植物体への侵入口は水孔などの自然開口部と傷口に限られるが、本病菌は傷口から感染しやすく、管理作業による傷のほか、害虫類の食害痕なども感染の門戸となる。
 花き類での第一次伝染源は用土(水苔、軽石、バークなども含む)、鉢、ベンチ、被害残渣であるが、発病株との接触や摘心、移植、株分け、採花あるいは潅水などの管理作業によって二次伝染する。多湿条件や多肥栽培では発病が助長される。

2.防除のねらい

 第一次伝染源は土壌や鉢用土、鉢、棚などであるので、発病ほ場では、できるたけ連作や資材の再利用を避けるか、消毒を行って使用する。また、発病株で増殖した病原細菌は、各種の管理作業によって生じた傷口や害虫の食害痕から二次感染するので、発病株は見つけ次第、躊躇する事なく処分することが重要である。また、植物体にはできるだけ傷を付けないようにするとともに、過度の多湿や高温を避けるための日常管理に努めることも大切である。
 薬剤防除は、発病後では効果が期待できないので、予防散布を中心とし、特に、高温、多湿時期の防除を徹底する。

3.防除法

 ・耕種的防除
  (1)土壌伝染するので、健全なほ場、用土を用いる。
  (2)連作は発病を助長するので、連作を避け、イネ科やマメ科作物との輪作を行う。
  (3)汚染した鉢や棚、ベンチも伝染源となるので、健全なものを使用する。再利用する
     場合は、よく洗浄して乾燥するか消毒したあとに使用する。
  (4)病原菌は傷口から侵入するので、いたずらに傷を生じないよう適切な管理を行う。
  (5)はさみ、ピンセットなどの作業器具はこまめに消毒して使用する。また、汚染の恐れが
     ある作業後は手指をよく洗って作業を継続する。