3.ダニ類

1.生態と被害

 ハダニ類は種によって生活史や越冬形態に多少の差はあるが、いずれも年間10数世代を繰り返し、繁殖は旺盛で特に温室内で著しい。一般に高温乾燥時に繁殖は旺盛になり、卵から成虫になるまでの期問は短い場合は6〜10日くらいで、メス1頭あたりの産卵数も平均100卵に及ぶものがあり、短期問のうちに著しい被害を与えるようになる。
 八ダニ類は汁液を吸収し、葉緑素を破壊するので、被害株は生育が衰える一方、葉や花にカスリ状の小斑点を生じたり、変色したりするので観賞価値を著しく損なう。ホコリダニ類として被害が大きいのはシクラメンホコリダニとチャノホコリダニで、いずれも極めて微少なダニ類である。繁殖はハダニ以上に旺盛で、条件さえ揃うと短期間のうちに激発し、巻葉したり、奇形を呈し、株の生長は阻害される。また、蕾は生長しても変形して開花しないか、開花しても花弁がよじれたり変色し、商晶価値がなくなる。シクラメンなどでは一年中生息が認められ、花弁にしみ状の斑点があらわれ、奇形となる。
 チャノホコリダニの寄主範囲はきわめて広く、国内では露地や施設栽培の野菜、花き、樹木にしばしば発生する。発育に要する日数は20℃で13〜17日、好適発育温度は15〜20℃とされる。
 シクラメンホコリダニの発育期間は卵から成虫まで27℃で約7日と短く、シクラメン、セントポーリア、オルヒュームなどの花き類やイチゴ、ピーマンなどの施設野菜で発生する。また、野外でもカラムシ、センブリ等に寄生する。シクラメンの被害程度はチャノホコリダニによる寄生に比べて大きく、蕾あたり200〜300頭に達することもある。セントポーリアでは若い葉に被害が顕著で、被害葉は毛羽立ちして発育が停止し、芽が枯れる。(以上、日本原色植物ダニ図鑑、全国農村教育協会より)。

2.防除のねらい

 (1)防除のコツは早期発見、早期防除である。ハダニは下葉の葉裏にいることが多く、発見が遅れるため、多発してから防除することが多い。多発時は薬剤の効果が上がりにくい。したがって、常に下葉や目につきにくい部分での発見に努め、早めに十分薬剤かかかるように防除する。
 (2)発生の好条件は高温乾燥であるので、露地栽培での被害は4〜5月に現われはじめ、梅雨中は一旦減少するが、梅雨明け以降多くなる。したがって、防除は4〜5月と梅雨明けを一つの目安とし実施する。
 (3)施設栽培では、高温のため周年多発生するので、冬季も防除を行う。また、施設栽培では資材や野外の雑草などにも発生しているので、同時に防除することが必要である。
 (4)花に寄生した場合、著しく観賞価値をおとすので、開花前の防除が必要である。
 (5)特に、ハダニ類は年間の発生回数が多く、防除回数が多くなるため、薬剤抵抗性がつきやすい。したがって防除にあたっては、抵抗性の程度を熟知するとともに薬剤は同一系統のものを連続使用しないよう、ローテーションを守ることが必要である。

 第1表 ハダニに対する主な防除薬剤の種類特性
系 統 薬 剤 名 効  果 備 考
幼虫 成虫
有機塩素系 ケルセン
アカール
(タンスモレート)
エイカロール
ペンタック
















アカール+DDVP

紫外線で容易に分解。ガラス室専用
有機リン系 エストックス
キルパール
ダイシストン
マラソン
DDVP
トクチオン













残効性が短い
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亜硫酸エステル系 オマイト

有機スズ系 オサダン

抗性物質 (マイトサイジンB)
(トルピラン)
(マイトダウン)
コロマイト













ポリナクチン複合体+バッサ
ポリナクチン複合体+サッピラン
ポリナクチン複合体+オサダン
チアゾリン系 ニッソラン
(ニッソランV)
(プロカーブ)
(ノンマイト)
(ダニデン)
















ニッソラン+DDVP
ニッソラン+マブリック
ニッソラン+ロディー
ニッソラン+ケルセン
カーバメート系 パノコン

キノキサリン系 モレスタン
(モレスタンVPジェット)







モレスタン+DDVP
合成ピレスロイド系 マブリック
(マブリックナック)
ロディー
(ロディーVP)
テルスター
















マブリック+デナポン

ロディー+DDVP

マシン油 機械油
アタックオイル
ハーベストオイル他










その他 ダニカット
サンマイト
ダニトロンフロアブル
ピラニカ
マイトクリーン
テデオン
(ミックサン)
(バイデン)
(ダブル)
(テトラマイト)




































テデオン+DDVP
テデオン+オフナック
テデオン+ケルセン
テデオン+モレスタン

 第2表 植物を加害するダニ類
植 物 名 種  類 寄生部位 備  考
キク
ナミハダニ
ニセナミハダニ
カンザワハダニ
キクビラハダニ
チャノヒメハダニ
チャノホコリダニ
キクモンサビダニ
主に葉






 
寒地に多い。
暖地に多い。
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カーネーション ニセナミハダニ
ナミハダニ
カーネーションサビダニ
主に葉
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葉の基部と茎の間
葉は黄変、生気を失う。

ガーベラ チャノホコリダニ
チャノヒメハダニ
アシノワハダニ
ニセナミハダニ
ナミハダニ
主に葉
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アイリス
ニセナミハダニ
カンザワハダニ
ネダニ
主に葉
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球根

フリージア ニセナミハダニ
ネダニ
主に葉
球根

ストック ニセナミハダニ 葉、新芽 糸を張り吸収加害する。
リンドウ ハダニ(種類不明)
ネダニ


生育不良、草丈低い。葉の枯れ上がりも早い。細根が殆どなくなり根茎部に白色のダニが群生。
ビャクシン類 ビャクシンハダニ
スギノハダニ
フトヒゲヒメハダニ
主に葉
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マツ ミナミケナガハダニ
マツヤドリハダニ
トドマツノハダニ
クロマツの葉


 
夏に被害が多い。
スギ スギノハダニ
チャノヒメハダニ
エゾスギハダニ
主に葉


葉色がさえず、全体に赤っぽく生気がなくなる。越冬は葉上で卵。
被害は少ない。
スギハダニに比べ、背の毛が著しく長い。
ヤナギ ヤナギハダニ 主に葉
サクラ ニセクローバーハダニ
オウトウハダニ
カンザワハダニ
ナミハダニ
主に葉




寒地型のハダニ。


モモ ミカンハダニ
カンザワハダニ
ナミハダニ
主に葉



バラ ナミハダニ
ニセナミハダニ
カンザワハダニ
主に葉



ツゲ チビコブハダニ 主に葉
ツツジ チャノヒメハダニ
チビコブハダニ
チャノホコリダニ
主に葉
夏から秋にかけて葉が白っぽく生気を失う。後に茶褐色になり落葉する。花芽の着生も少なくなる。成虫又は主として葉の表側に多い。
モクセイ ミカンハダニ 主に葉 初夏から秋にかけて発生、成葉に被害が多い。キンモクセイに特に多い。
サンゴジュ ミカンハダニ 主に葉
タケ、ササ タケスゴモリハダニ 糸でクモの巣に似たおおいをつくり、
その中に生息する。6月〜8月多発。
シクラメン シクラメンホコリダニ 主に葉

3.写真

ミカンハダニ 成虫と卵 被害葉

 写真:福岡県園芸・茶病害虫図鑑より