19.ハモグリバエ類

 ハモグリバエは種々の作物の葉に潜る害虫であるが、その中でも特にLiriomyza属の種は寄主植物の範囲が広いことから農業上重要害虫として扱われることが多い。とりわけ、欧米では野菜や花き類の害虫として問題となっているマメハモグリバエは薬剤抵抗性の発達が非常に早いこと、またその寄主植物の範囲が極端に広いことから難防除害虫として欧米で大きな問題となってきた。本種は平成4年の5月に福岡県でもガーベラほ場で発生が確認され、今後の被害および分布の拡大が懸念されている。

1.生態と被害

 ハモグリバエ類は葉に潜行するが、マメハモグリバエの幼虫は葉の表側を、その他のハモグリは葉の表裏への潜行に顕著な傾向はない。また、マメハモグリバエでは茎や果実等への加害はないが、他の種類ではこれらの部位を加害する例もある。
 現在明らかになっているマメハモグリバエの寄主植物としてはガーベラ、キク、マリーゴールド、アスター、宿根カスミソウやトルコギキョウ等が上げられる。また、バラ科では報告はない。
 幼虫の食害痕のみならず成虫の摂食・産卵痕により、農作物の外観を損ねることになり、その商品価値を著しく低下させる。特に、発生密度が高い場合には収量減や収穫期遅延の原因ともなり、苗が枯死する場合も考えられる。さらに、欧米では、成虫がキクの斑点細菌病菌(Pseudomonas cichorii)を媒介し、成虫による摂食・産卵痕がこの菌の感染源になる例も報告されている。
 卵から成虫になるまでの一世代の期間は短く、25℃で約16日、30℃で約14日である。施設内では年間を通して発生し、卵、幼虫、蛹および成虫のすべての発育期が混在する。また、露地では蛹で冬を越す。寄主植物の種類によっても異なるが、発育が停止する発育零点は卵期で10℃〜13℃、幼虫期で6℃〜8.5℃、蛹期で8℃〜10℃である。

2.防除のねらい

(1)被害が葉の表に集中している場合や、従来の薬剤等による防除効果がほ場で求められ
  ない場合は、マメハモグリバエによる被害が考えられる。
(2)成虫は植物の葉の表面から滲出する汁液を摂取するため、収穫の終わったほ場ではハ
  ウスを密閉し、高温条件下で作物を速やかに乾燥・枯死させる方法が有効である。
(3)収穫前または収穫中に発生を認めた場合には、被害葉を放置せず、焼却するかまたはビ
  ニル袋等に包み込み、完全に死滅させる。
(4)成虫は黄色に強く誘引されるので、黄色の粘着板や粘着リボン等のトラップを用いて発生
  状況や防除効果を把握する。黄色粘着トラップにより、ある程度成虫の捕殺も可能である
  が、捕殺される成虫は雄がほとんとであるため、防除手段としての効果は期待できない。

3.防除法

 ヨーロッパでは市販の寄生蜂が広く用いられているが、わが国ではまだ試験事例はない。

 参考文献
 Parrella M.P (1987)Biologyofl,iriomyza Ann.Rev.Entomol. 32:201−224
 西東 力(1992)マメハモグリバエのわが国における発生と防除 46:103−106植物防疫
 福岡県病害虫防除所(1992) 野菜・花き類の害虫マメハモグリバエ 
                                平成4年度病害虫発生予察特殊報第1号  

4.写真

 
マメハモグリバエ 成虫 被害と食入幼虫
被害葉 キク

 写真:福岡県園芸・茶病害虫図鑑より