20.モグラ

1.生態と被害

 本種は食虫目のモグラ科に属する哺乳類である。食虫目はその名のように昆虫を主食とする動物で、植物質はほとんど食べない。主たる食物は、ミミズ、その他土中に生息しているコガネムシやカブトムシの幼虫、ケラ、クモ、ムカデ、カエル、カタツムリなどである。
 モグラ科にはヒミズ類と真性モグラ類がいるが、普通モグラという場合は後者のグループをさす。わが国では真性モグラ類として、ミズラモグラ、アズマモグラ、サドモグラ、コウベモグラの4種類が知られている。このうち、前2種は本州の中北部および山岳地帯、サドモグラは新潟県にしか分布していない。したがって、本県に分布するモグラは、コウベモグラがほとんどである。
 モグラは地下生活をするように進化した動物で、土を掘るための手およびそれを動かすための腕や胸部の筋肉が強大に発達している。そのため、踏み固められたところでも数10秒以内に自分の体を土中に隠す事が出来、軟らかい土であれば瞬く間に体を土中に没することが出来る。このように強い掘さく力をもっているがモグラは通常硬い土壌を好まず、湿潤で柔らかく土壌層の深い沖積土などを好む。したがって河川地域の堤防や、農耕地、牧草地などでは生息数が多い。また、このようなところではミミズや土壌昆虫などモグラの餌が豊富であることも重要な要素になっているものと思われる。
 モグラのトンネルには1日に何回となく通る幹線トンネルと、稀にしか通らないか1度掘ったあとはほとんど使われないようなトンネルがある。幹線トンネルは、巣から採食場へ行く通路で、頻繁に使われるためその内壁はよく固めて滑らかとなっており、土塊などが入っていることはほとんどない。トンネルの深さは地下1mかそれ以上深いこともあるが、通常は餌動物が多い30cm以下のことが多い。巣は川岸や畑地周辺のブッシュの下、盛り土、堆肥置場などの地下に広葉樹の枯葉や枯草などで作る。
 モグラの目は退化し、視力はほとんどない。しかし、聴覚は鋭く、かすかな音や振動を敏感に感知して餌動物を捕まえたり、外敵から逃れたりする。たた、臭覚は特に敏感とはいえず、土中では5cm以上も離れるとほとんど感知できない。
 モグラの被害として、畑にトンネルを作ることによって植物の根を傷めるはかりでなく、根の下に空間を作って乾燥による枯死をまねくこと、河川の堤防や水田の畦にトンネルを掘ることによって堤防を決壊させたり、漏水を起こすこと、トンネルがネズミの通路となって畑地に誘導することにより、農作物の害が発生することなどがある。

2.防除のねらい

 モグラの害を防ぐ方法としては、侵入阻止法と捕獲法とが考えられる。このうち、侵入阻止法として、現在行なわれているのは、モグラが聴覚に敏感であることを利用した防除用の風車による方法である。なお、忌避剤などの薬剤を使用する方法も検討されたが、現在効果的なものは見つかっていない。風車を利用した方法は第2図のように、風車に直結したロータリーを回転させ、これにより鉄板を上下し発音止め金に当てることによって音を出させ、この音と風車自体が回転する音を支柱のパイプの音響効果で土中に伝える装置である。この装置はほぼ5〜10mの範囲にわたって効果があるとされている。
 また、捕獲器としては第3図のような鋏式のものが一般的であるが、その他に第4図のような手製のパイプを利用した伏せ込み式の退治器も考案されている。これらの装置をモグラが頻繁に通る通路に仕掛けておいて捕獲する。