イグサ八月苗生育障害

1.生態と防除のねらい

  八月苗生育障害は昭和50年頃から毎年発生がみられ、苗質の低下及び苗不足を生じ育苗面で大きな問題になっている。八月苗床へ植付け後、一見活着したように見えるが、落水後の10月上旬頃になり、生育が著しく遅れたり苗が枯れる症状がみられる。障害株の根や地下茎は黒色腐敗しており、新しい根の発生はほとんどみられない。3年以上連作している畑苗床の畑苗を八月苗床に植付けした場合に発生し、新規の畑苗床の畑苗を植付けた場合には発生しないことから、原因は畑苗の連作にあるものと考えられる。
 八月苗生育障害の株の根と地下茎からピシウム属及びフザリウム属の糸状菌が分離され、病原性が確認された。これらの菌はいぐさの根や地下茎を黒色腐敗させ、新根の発生を阻害する。両菌の病徴にはほとんど差はないが、わずかにフザリウム属の菌によるものの方が病徴が赤く腐敗が進んでいる。いぐさに対する病原性はそれほど強くないが、8月の高温による植え傷みが被害を助長する。したがって、8月苗の植付け時期を気温がやや低下する8月下旬とすることが重要である。
 なお、ピシウム属の菌は15〜38℃で生育し、最適温度は30〜35℃である。また、フザリウム属の菌は15〜35℃で生育し、最適温度は28〜30℃である。
 

2.防除法

(1) 耕種的防除

 ア.畑苗の連作を避ける。
 イ.畑苗床の客土を行う。
 ウ.原苗(畑苗)を更新する。
 エ.畑苗は堀り取り後、直ちに八月苗床に植付ける。
 オ.八月苗の植付けは盛夏の高温時を避け、8月下旬に行う。