灰色かび病 Botrytis cinerea Persoon

1.発生生態

 病原菌は極めて多犯性であり、野菜、花きなど広範囲の植物を侵す。本病菌は、22〜23℃でよく発育し、多湿な条件を好む。土壌中の菌核で越年する他、施設栽培では罹病植物体の菌糸、分生胞子などでも容易に越年する。周年的に発病するが、春〜夏にかけての発生が多い。分生胞子は空気中の湿度が高い時に極めて多量に形成され、風やわずかな振動で飛散し、空気伝染する。とくに暖房設備がなく、保温のために密閉した多湿ハウスやトンネル等で被害が著しい。腐生性が強く、開花中の花弁にとりつきやすいが、葉柄や花梗、葉身にも発病する。
 花木類では、罹病した花弁が健全な葉、茎等に付着しで淡褐色病斑を作ることがあり、樹種としてハナミズキ(5月頃)、キンモクセイ、ナツツバキ、ビョウヤナギ、キョウチクトウ(6月頃から)などがあげられる。また、花弁が罹病する樹種として、アベリア、才トメツバキ、サザンカ類、ハナミズキ、レンギョウ、ムクゲ、ビョウヤナギ、カルミア、ヤマブキ、サルスベリ、エゾヤナギ、キョウチクトウ、ザクロ、サツキ、ヒラドツツジ、ハマナスなどがある。

2.防除のねらい

 比較的低温で多湿の場合に発生が多いので施設栽培では換気をはかり、多湿を避けることが最も重要である。一旦発病すると発病部位には極めて多量の分生胞子を形成し、その後まん延が甚だしくなる。従って、発病茎葉などは発生次第取り除き、ほ場内に残さないように心がける。また、多発後の薬剤防除は困難であるので予防散布を重点に行い、発病初期の防除を徹底する。
 ベンズイミダゾール系剤、ジカルポキシイミド系剤及ぴジエトフェンカルブ剤は連続使用すると薬剤耐性菌を生じ易い。また、交差耐性を生じ、この3剤のいずれにも耐性を示す菌も認められているので、同一系統の薬剤の連続使用を避ける。

3.防除法

 ・耕種的防除
 (1)ハウスやトンネルでは換気をはかり、多湿を避ける。
 (2)被害茎葉は早めに除去焼却し、伝染源を残さない。    

4.写真

ハナミズキの病葉 ホオノキの病葉

 写真:福岡県園芸・茶病害虫図鑑より