苦腐病  Greeneria uvicola

1.生態と防除のねらい

 病原菌は結果母枝や罹病果で越冬し、翌春以降、降雨等によって果房や新梢及び葉に伝染する。罹病果では初め小黒点が形成され、その後黒色でつやのある胞子塊が形成される。罹病果粒の多くは果軸にとどまってミイラ化し、房内感染の原因となる。また新梢では、初め基部付近の葉に萎凋、枯死症状を発現するのが特徴で、その後病斑部は褐変〜白変する。病徴が進行すると、これらの病斑部に黒色の胞子堆が形成され、最終的には新梢全体が萎凋、枯死する。新梢に形成されたこれらの胞子堆は、翌年以降の重要な伝染源となる。
 病原菌の生育適温は25〜30℃で、胞子堆の形成は15〜35℃の広い温度域で行われる。また、病原菌には新梢に強い病原性を示す菌と弱い病原性しか示さない菌の2種類が存在し、両者は培養性状や遺伝子診断で容易に区別できる。このことから、本菌には分化型もしくは種の異なる菌が存在している可能性がある。
 本菌による新梢枯死の発生を防止するには、登熟枝ばかりでなく緑枝状態の罹病枝も見つけ次第せん徐し、伝染源を極力少なくすることが重要である。また、果実での発病を防止するには、落花直後と小豆粒大期に薬剤防除を実施後、袋かけを早めに行うことが有効である。なお、罹病果は房内での二次感染防止のため、見つけ次第除去する。また、本病は分生胞子の付着した摘果鋏の使用により、健全な緑枝 や果梗に伝染する可能性があるので注意する。

2.防除法(耕種的防除)

  (1) 罹病枝や罹病果は極力園外に持ち出し、焼却又は埋没する。
  (2) 袋かけは早めに行う。
  (3) 病原菌の付着した鋏は使用しない。 

3.写真 


新梢基部の発病

果実での発病