ウイルス病

 西南暖地の巨峰等では、夏季の高温等の気象要因により果実の着色不良や遅延が起こると言われている。しかし、最近の知見により、着色不良や遅延さらには糖度低下には、ウイルス病が大きく関与していることが明らかになった。
 その対策としては、現在進行しているウイルスフリー苗木への更新が必要である。本県では、ぶどうウイルス検査事業としてリーフロール病およびファンリーフ病について、抗体による検定を果樹苗木分場で行っている。抗体検査のためのサンプル採取方法や申請等については、関係機関へ問い合わせる。

1 リーフロール病 Grapevine leafroll virus

(1) 生態

 世界中のブドウ産地に広く分布しており、ブドウの病害の中で最も被害が大き いものの一つである。欧州系ブドウでは、葉巻症状や早期紅葉が発生するが、県 内で栽培されている品種では葉に症状が発生しない。
 しかし、果実の糖含量の低下、熟期の遅延、着色不良、果房の発育不良といっ た症状は、程度の差はあるがどの品種でも現れる。病気を保毒している樹では、 農薬での防除は不可能である。 伝染は、接ぎ木によって行われる。

(2) 防除法(耕種的防除)

 更新する際は、ウイルスフリー苗木を栽植する。また、苗木を育成する場合は、 検定済みのウイルスフリー樹から採穂する。
  

(3) 写真 


ウイルス保毒樹の着色不良果実

ウイルスフリー樹の健全果実
  

2 えそ果病 Grapevine berry inner necrosis virus

(1) 生態

 1984年、茨城県の巨峰に初めて発生し、その後、青森、秋田、栃木、山梨 の各県で発生が確認されている。現在の所、幸いに本県では未発生であるが、今 後、注意を要する病害である。病徴は、巨峰では葉が小さくなり、退緑黄色〜白 色のモザイク斑を葉の一部または全体に生じる。また、果実は幼果の果面に果肉 内部まで達する濃緑色のえ死斑が入る。果実糖度は低く、品質が悪くなり収量も低下する。
 リーフロール病と同様に保毒している樹は、農薬での防除は不可能である。
 伝染は、接ぎ木によるほか汁液伝染によって行われる。

(2) 防除法(耕種的防除)

 更新する際は、ウイルスフリー苗木を栽植する。また、苗木を育成する場合は、検定済みのウイルスフリー樹から採穂する。

(3) 写真 


果房の外観症状

果肉内部に達する壊死斑

保毒樹新梢のモザイク葉