灰色かび病  Botrytis cinerea

1.生  態

 病原菌は被害残渣中の菌糸や土壌中の菌核で越年するが、施設栽培では罹病植物体の菌糸、分生胞子などでも容易に越年する。
 病原菌の発育適温は22℃付近にあり、分生胞子は空気湿度が80〜90%と高い時に多量に形成され、風やわずかな振動で飛散し、空気伝染する。分生胞子は開花後しおれた花弁にとりつきやすく、花梗や葉身、葉柄にも発病する。一旦発病すると病斑上には極めて多量の分生胞子を形成し、その後の蔓延が著しくなる。
気温が20℃前後で湿度が高い場合に発病しやすく、施設栽培で発生が多い。とくに暖房施設がなく、保温のために密閉した多湿ハウスなどで被害が著しい。また、軟弱なものや過繁茂の場合は発病しやすく、朝夕の急激な冷え込みは発生を著しく助長する。
 本病菌はトマト、キュウリ、イチゴ、レタスなどにも寄生し、極めて多犯性である。本病においては、ベンズイミダゾール系剤(トップジンM、ベンレート)及びジカルボキシイミド系剤(ロブラール、スミレックス)に対する薬剤耐性菌が問題になっていたが、ベンズイミダゾール系剤と負相関交差耐性があるといわれたジエトフェンカルブ剤にも耐性を示す複合耐性菌の発生が認められている。

2.防除のねらい

 (1)比較的低温で多湿の場合に発病が多いので、ハウスでは換気をはかり、また加温機や除湿機を運転するなどして多湿を避けることが最も重要である。
 (2)発病後、菌密度が高くなると防除が難しいので、発病茎葉などを取り除くとともに発病初期のうちに防除を徹底する。
 (3)ベンズイミダゾール系剤(トップジンM、ベンレート)、ジカルボキシイミド系剤(ロブラール、スミレックス)あるいはジエトフェンカルブを含有する薬剤(スミブレンド、ゲッター)は、いずれも連続使用すると薬剤耐性菌を生じやすく、交差耐性を生じるので、他剤との交互散布などにより散布回数を少なくして、できるだけ3〜4回にとどめる。

3.防 除 法

○ 耕種的防除
 (1) ハウスやトンネルでは換気をはかり、多湿を避ける。
 (2) 被害果、被害茎葉や不用な花弁は早めに除去する。
 (3) プラスチックフィルムでマルチを行い、マルチ下潅水を行ってハウス内湿度を 高めないようにする。

4.写真

  
   
写真:福岡県園芸・茶病害図鑑より