トマト黄化葉巻病の病徴
 
シルバーリーフコナジラミ
    
平成15年1月
鹿児島県病害虫防除所
 
                
 トマト黄化葉巻病は(病原ウイルス:Tomato yellow leaf curl virus :TYLCV)を病原体とするウイルス病でシルバーリーフコナジラミによって媒介されます。鹿児島県では平成14年10月に発生が確認されました。今後県内の蔓延が危惧されます。
 このウイルス病の感染を防ぐ重要なポイントは,ウイルスを媒介するシルバーリーフコナジラミをきちんと防除することです。

 
 発病初期は,新葉が葉縁から退緑しながら葉巻症状となり,後に葉脈間が黄化し縮葉となる。病勢が進行すると,頂部が叢生し株全体が萎縮する。なお,発病前に着果した果実は正常に発育するが,発病後は開花しても結実しないことが多い。
 
 
 このウイルスの宿主範囲は比較的狭いようですが,現在,以下の植物で感染が確認されていますので注意してください。
科名 植物名
ナス科
マメ科
キク科
リンドウ科
(雑草)
キク科
トウダイグサ科
ナデシコ科 
トマト,ミニトマト,ピーマン,タバコ
インゲンマメ
ヒャクニチソウ
トルコギキョウ

ノゲシ
エノキグサ
ウシハコベ
          
 左:エノキグサ  右:ウシハコベ

本ウイルスの伝染方法
 本ウイルスは,シルバ−リ−フコナジラミ(タバココナジラミ)によって媒介される。成虫と幼虫がウイルスを獲得し,約1日の潜伏期間を経た後,死亡するまで伝搬能力を持つ。なお,TYLCVは経卵伝染する可能性が指摘されている。汁液伝染,種子伝染,土壌伝染はしない。
 また,オンシツコナジラミ等他の害虫による虫媒伝染はしない。
 
 寄生範囲が広く,野菜類のほか,花き類,観葉植物や雑草に寄生する。
 葉裏に寄生し吸汁加害するが,被害は作物によって異なり,トマトでは多発するとすす病を併発するほか,果実の着色異常を生じる。繁殖力が旺盛で短期間で高密度になるので,発生を認めたらただちに防除を行う。外観は同属のオンシツコナジラミと似ているが,薬剤に対する感受性は低いので注意する。
 
 
シルバーリーフコナジラミ 成虫の特徴 オンシツコナジラミ

 静止時に葉面に対して45度以上の角度でたたまれ,翅の先が重ならない。 

 静止時に葉面に対して平行にたたまれ,翅の先が重なる。  
体の中央部が隆起し,周辺部は薄い。 蛹殻の形
体全体に厚みがあり,体側面は垂直 な壁のようになる。
全体が黄色 幼虫の特徴



断面図
全体が白色
          
 
防除対策
  1.  発病株は二次伝染源となるので見つけしだい抜き取り,
    土中に埋める等適正に処分する。絶対に圃場周辺に放置しない。
  2.  シルバ−リ−フコナジラミの防除を育苗期から徹底する。
  3.  圃場周辺の放置トマト,雑草はシルバ−リ−フコナジラミの
    寄主植物となり,TYLCVの伝染源となる可能性があるため除去する。
  4.  前作や圃場周辺のその他作物に,シルバ−リ−フコナジラミが
    寄生している場合は,シルバーリーフコナジラミの増殖源となるので防除を行う。
  5.  施設栽培では,シルバ−リ−フコナジラミの侵入を防止するために,
    施設開口部に防虫網(1mm目以下)を張る。
  6.  施設栽培では,栽培終了後に蒸し込み等を行い,トマトを枯死させて,
    シルバーリーフコナジラミを死滅させることによって,施設外への分散を防ぐ。
  7.  疑わしい症状が発生している場合は,病害虫防除所,専門技術員,
    農業試験場病虫部に連絡する。
問い合わせ先
鹿児島県病害虫防除所
〒891−0116 鹿児島市上福元町5500
рO99−268−4049

鹿児島県農業試験場病虫部
〒891−0116 鹿児島市上福元町5500
рO99−268−3231

又は最寄りの農業改良普及センター,市町村役場,農協にご相談ください。