農薬の剤型とその特徴
 
剤  型 特     徴
粉  剤 農薬原体を担体(農薬原体を付着あるいは吸着させるために用いる粉粒体:クレーなど)に混合した粉末状(粒径が40ミクロン以下)の剤。散布中の漂流飛散が多いので、微粉部分を除き漂流飛散(ドリフト)を少なくしたDL(drift less)粉剤(粒径20〜30ミクロン)が普及している。
粒  剤 農薬原体をタルクなどの固体希釈剤に混合造粒したもの、または芯剤(固体希釈剤)に有効成分を吸着あるいは含浸させ製造される粒状の固形剤で、粒径は300〜1,700ミクロンである。ドリフトが少ない。
水 和 剤 水和性を有し、水に希釈、懸濁して液剤散布に用いる微粉状の製剤をいう。
農薬原体(固体)を4〜5ミクロン程度に微粉砕し、補助剤(湿潤剤、分散剤などの界面活性剤)および増量剤:微粉クレー(5ミクロン以下)などと混合したもの。農薬原体が液体の場合は、高級油性担体に吸着させる。
顆粒水和剤
(ドライフロアブル)
水和剤を粒状にした製剤で、水中に投入すると容易に崩壊、分散する。
特徴としては
@粉立ちがなく、粉塵の暴露が著しく軽減され、作業者への安全性が高い。
A流動性が良く、容器への付着が少ない上に、紙袋など種々の包装容器が使用できるので使用後の容器の処理が容易であり、環境安全性が高い。
B有機溶媒を使用しないので、作業者及び環境に対して安全である。
  などがあげられる。
フロアブル剤
(懸濁剤)
農薬原体(水不溶性固体)を湿式微粉砕し、補助剤(湿潤剤、分散剤、凍結防止剤など)を加え、水に分散させた製剤であり、有機溶剤を含んでいないので気化した有機溶剤を作業者が吸引する危険性がない。また、水和剤を現場で水に混ぜる際の、微粉の飛散を避けられる。欠点としては、長期保存すると粒子の沈降による分離や有効成分の結晶成長などがあげられる。。
乳  剤 水に溶けにくい農薬原体を有機溶剤に溶かし、乳化剤を加えた製剤で、水で希釈して使用する。。水に加えると白濁、不透明な乳化液となり、2〜3時間は安定である。欠点としては、有機溶剤を使用しているため、作業者が有機溶剤を吸入したり接触する危険性がある。また、有機溶媒に由来する薬害についても注意が必要である。
E W 剤
(エマルション)
農薬原体(水不溶性または溶液)に補助剤(乳化剤、凍結防止剤、増粘剤など)を加えて、水中に微粒子として分散させる。EW剤では、製剤の調整に水を使用するため、乳剤で問題となる有機溶剤に起因する引火性、毒性などの問題は発生しない。
マイクロカプセル剤 農薬原体を高分子の薄膜で覆った微粒子(マイクロカプセル:粒径は数ミクロン〜数百ミクロン)を水に懸濁させた剤で、使用するときに水で希釈して散布する。光による分解や揮散による有効成分の消失を抑えて持続性を高めるとともに、膜の性質や厚さを変えることにより有効成分の放出を制御できる。
くん煙剤 有効成分を加熱して煙霧化し、くん煙に用いられるようにした剤。発熱剤、助煙剤を含んだ自燃式の剤(くん煙筒など)と外部熱源で加熱する方式の剤(錠剤、顆粒剤など)とがある。
 
 
 
<参考文献>
・「植物防疫講座 第3版」編集委員会(2001)  植物防疫講座 第3版 雑草・農薬・行政編  社団法人 日本植物防疫協会
・宍戸 孝ら(1994)  農薬化学用語辞典    社団法人 日本植物防疫協会
・辻  孝三(1999)  農薬製剤技術と環境調和       今月の農業 10月号  
・米村 伸二(1998)  注目される農薬製剤 顆粒水和剤  今月の農業 11月号
・農薬工業会       農薬ニューズレター 1999年7月 No.20