ミナミキイロアザミウマ(Thrips palmi Karny)の生態について
<生態>
ミナミキイロアザミウマは両性生殖と単為生殖を行います。雄がいなく、未交尾雌が産卵した場合、孵化してくるアザミウマはすべて雄となります。
成虫と幼虫は寄主植物体上で摂食加害し、卵を植物の組織内に産み付け、蛹化は主に土中で行います。
成虫の寿命は、雌雄で大差はなく、15℃で約45日、20℃で約37日、25℃で約27日、30℃で約18日とかなり長い(寺本ら,1982)。(表1参照)
卵は成虫生存のほぼ全期間にわたって不規則に産卵され、20℃〜25℃では約82粒〜94粒が植物の組織内に1粒ずつ産み付けられます(寺本ら,1982)。
産卵部位は花梗、がく、葉脈、葉柄、葉肉であり、特にピーマン及びトウガラシでは、花梗と葉脈、ナス、キュウリ及びメロンなどでは葉肉に多い。
幼虫は作物を加害しながら成長し、成熟すると地面に落下し、土中や落葉などの下で脱皮して蛹になります。蛹の間は歩行は可能ですが作物を加害はしません。蛹化場所で羽化して成虫になると地上にでて植物体に寄生し、摂食加害するとともに生殖行動を行います。果菜類での寄生部位は若葉や展開葉の葉裏が主であるが、ナス科の作物では、満開花の子房部分や果実がく内側の果皮にも好んで寄生します(永井・山本,1981;山本ら,1982)。
ミナミキイロアザミウマの発育はかなり早く、本県では野外自然条件下で約11世代となり、施設をあわせると20世代以上を経過すると推定されます。(表2参照)
<薬剤散布の留意点>
定植時の苗にキュウリ、ピーマン、ナス、メロン等の作物では、ベストガード粒剤、アドマイヤー1粒剤等を株元に散布します。薬剤の残効期間は3週間程度期待できますが、過信しすぎて液剤散布を怠ると、あとになって多発生する危険があるので注意が必要です。
水和剤や乳剤等、液剤散布の場合は、十分な薬量を確保し、蛹の生息する地表面にも薬剤がかかるように散布するとより効果的です。
残効の短い殺虫剤を使用する場合には、卵や蛹の発育期間を考慮して、すべての虫に殺虫剤がかかるように繰り返し散布することが重要です。(表2参照)
表1 ミナミキイロアザミウマ成虫の生存期間(寺本ら,1982)
温度(℃) |
性別 |
供試虫数 |
最長(日) |
最短(日) |
平均(日) |
15
|
♀
♂
♀♂平均 |
10
12
− |
56
63
59.5 |
28
24
26.0 |
45.8±10.6
43.7±10.8
44.6±10.8 |
20
|
♀
♂
♀♂平均 |
13
13
− |
48
52
50.0 |
27
21
24.0 |
36.3± 8.7
37.0±11.7
36.8±10.6 |
25
|
♀
♂
♀♂平均 |
11
12
− |
39
42
40.5 |
17
18
17.5 |
25.5± 8.7
28.3±10.2
27.2± 9.6 |
30
|
♀
♂
♀♂平均 |
6
8
− |
25
31
28.0 |
11
12
11.5 |
16.1± 5.5
19.2± 7.0
17.9± 6.7 |
表2 ミナミキイロアザミウマの温度別発育期間(野中ら,1982)
態 別 |
15℃ |
20℃ |
25℃ |
30℃ |
卵
幼虫
第1蛹・第1蛹
卵〜羽化 |
17.4± 1.3
12.1± 0.7
13.9± 1.4
44.9± 1.2 |
9.0± 1.4
7.2± 0.9
7.2± 0.7
24.5± 0.7 |
5.8± 0.4
4.3± 0.1
4.3± 0.9
14.3± 0.8 |
4.8± 0.6
2.7± 0.8
3.7± 0.9
10.8± 0.8 |
単位;日。10℃では各態とも発育せず
(引用文献)
1.農作物のアザミウマ 分類から防除まで
2.ミナミキイロアザミウマ おもしろ生態とかしこい防ぎ方
