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発生確認の経過

(1)平成15年4月上旬に有家町の施設栽培きゅうりで葉、茎及び果実がすすで汚れる症状が認められた。すす発生部位および周辺にコナカイガラムシ類の一種が認められた。
(2)本虫の同定を東京農業大学名誉教授河合省三博士に依頼したところ、本県で未発生のナスコナカイガラムシであると同定された(図1)。国内では高知県(平成12年初確認)に次いで2例目(病害虫発生予察特殊報による)の報告である。
(3)鉢植きゅうりに本虫の成虫および幼虫を接種したところ、同様の症状が再現され、成虫からは次世代の幼虫および成虫の、幼虫からは成虫の発生が確認された(図2)。
(4)本種によるきゅうりの被害は国内で初めてである。

形態及び生態

(1)雌成虫は楕円形で体長3〜5mm。体色は灰色で、白色粉状のロウ物質で覆われる。体周縁の白色ロウ物質分泌物の突起は18対あるが、短く目立たない。
(2)雌成虫は卵のうを形成せず、直接産仔する。1雌の産仔数は約200である。雌は1齢、2齢、3齢幼虫を経て成虫となる。雄は見つかっておらず単為生殖をおこなう。

分布及び被害状況
(1)本種は海外では中・南米(メキシコ〜ブラジル)、ハワイ、ミクロネシア、南アフリカなどに分布している。
(2)寄主植物は海外では、アブラナ科、ナス科、キク科、ミカン科、トウダイグサ科などが記載されている。高知県では施設栽培のピーマン、ししとう、なすで被害が発生している。県内では、施設栽培のきゅうりのみで発生が確認されている。
(3)発生地域は現在のところ有家町のみで、初発生確認以降、被害は拡大していない。発生はハウス周囲に多く、局部的に多発する傾向にある。主に葉、茎に寄生するが、発生が多くなると果実にも寄生し、排泄物にすすが発生して商品価値を低下させる。

防除対策
(1)きゅうりでは本種に登録のある薬剤はない。ただし、アザミウマ類、アブラムシ類、コナジラミ類などと同時防除できる薬剤がある。
(2)発生はまず、圃場内の一部に発生し、その後拡大していくので、早期発見に努め、見つけ次第捕殺する(つぶす)。
(3)本種は寄主範囲が広く、観葉植物や雑草などにも寄生する可能性が高いので、それら植物の施設内への持ち込みを控えるとともに、施設内外の除草に努める。
(4)本種は高知県では天敵導入などによる減農薬栽培のピーマンなどで広く発生しており、本県でも減農薬栽培の施設野菜での発生に注意する必要がある。

       
   
図1 ナスコナカイガラムシ雌成虫   図2 キュウリ葉上のナスコナカイガラムシ
(成虫接種後に増殖した幼成虫)