1.病害虫名 バラハオレタマバエ
学名:Contarinia sp.
2.発生を認めた作物名 バラ
3.特殊報の内容 本県における初被害を確認
4.発生地域 県南部
5.発生経過
1)平成16年10月21日に県南部のバラ施設栽培圃場において、新葉の奇形症状が発生した。南部農林振興事務所を通じて持ち込まれた標本を検鏡したところ、新葉が中肋部で折り畳まれて奇形化していた。内部には双翅目と思われる幼虫が寄生しており、双翅目昆虫によって形成された虫こぶと思われた。標本を独立行政法人産業技術総合研究所生物機能工学研究部門の徳田誠博士に同定依頼したところ、バラハオレタマバエContarinia sp.と同定された。
2)本種は1998年から2003年にかけて青森、岩手、宮城、静岡、広島、山口、香川、福岡、佐賀、大分の各県で土耕栽培のバラで発生が確認されている。
3)今のところ本県における本種の発生は県南部の土耕栽培のバラ生産施設圃場の一部のみで確認されている。
4)徳田と湯川(2004)によると、本種の分類学的位置づけは確定されておらず、侵入種か、土着種が害虫化したのかは不明である。我が国の野生のバラ科植物に寄生する既知のタマバエ2種とは上族レベルで異なっており、米国の栽培バラで発生したことのある Contarinia sp.とも形態的に異なっている。
6.生態と被害ならびに防除対策
本種の生態と防除対策については河村ら(2004)によって山口県で調査された詳細な報告があり、以下に概略を記す。
1)本種の被害は、バラの
新葉が中肋部で折れ曲がって奇形化し、商品価値がなくなる。蕾が加害された場合は変形して奇形花となる。折れ曲がった葉を開くと、内部に体長数mmの白色〜黄色ウジ状の幼虫が見られる。
2)1枚の葉に数十頭程度の幼虫が寄生し、老熟幼虫は土中に落下して蛹化する。
3)山口県の調査では、5〜8月上旬にかけて4〜7回、9月中旬〜10月にかけて2〜3回の発生がある。盛夏期には高温、乾燥により発生が認められなくなるが、夏が冷涼多雨の年には発生が途切れない場合もある。
4)1世代の所要日数は25℃で17.5日、20℃で29.0日、15℃で47.5日である。
5)現在、バラにおける本種に対する登録薬剤はない。幼虫の虫体浸漬による薬剤感受性検定では、スミチオン乳剤、アディオン乳剤、アドマイヤー水和剤、モスピラン水溶剤、ベストガード水溶剤、ダントツ水溶剤の効果が高い。また、エチルチオメトン粒剤10g/株処理で約4ヶ月、ベストガード粒剤2g/株処理で約2ヶ月間被害が抑制される。
7.謝辞
本種を同定して頂いた、独立行政法人産業技術総合研究所生物機能工学研究部門の徳田誠博士に厚く御礼申し上げる。
8.参考資料
河村ら(2004)植物防疫.58(9):394-396.
徳田と湯川(2004)九病虫研会報.50:77-81.