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1.病害虫名 ハコベハナバエ
  学名   Delia echinata (Seguy)
 
2.発生を認めた作物名 ホウレンソウ
 
3.特殊報の内容 本県におけるホウレンソウへの初被害を確認
 
4.発生地域 県東部地域
 
5.発生経過
1)平成21年4月下旬の巡回調査中に、御杖村の離れた2地域のホウレンソウ栽培施設各1〜2棟で、葉肉内に袋状に潜るハエ類幼虫による被害を確認した。いずれも収穫直前で、被害は施設内全体に散見された(被害株率2%以下)。その数日後、農業総合センター普及技術課職員が大和高原の他の1地域で同様の被害を確認した。
2)採集した幼虫を飼育し、羽化した成虫について農林水産省神戸植物防疫所に同定を依頼したところ、いずれもハコベハナバエと同定された。
3)その後、5月下旬以降は発生を確認していない。
 
6.分布と加害作物
1)本種はハナバエ科の一種で、九州以北の日本各地および、朝鮮半島、ヨーロッパ、北アメリカに分布することが確認されている。
2)寄主植物はカーネーション、ハコベ、オランダミミナグサ等ナデシコ科植物、ホウレンソウ等とされているが、本県でホウレンソウへの寄生を確認したのは初めてである。
 
7.形態および生態
1)成虫は体長6〜7mmで、胸・腹部は灰黄色粉で覆われた黒色。老熟幼虫は体長6mm内外で淡黄緑色、蛹は体長5mmで赤褐色俵状である。成虫の複眼は、雄では頭頂部でほぼ接しているが、雌では離れている。種の同定には雄交尾器等の形態観察が必要である。
2)詳細な生態は未解明であるが、近縁のタネバエと同様の経過を辿っているものと推定される。老熟幼虫は加害部から脱出して土中で蛹化、約2週間で成虫が羽化する。年3世代以上を繰り返すものと考えられる。
 
8.被害
1)先端近くの葉裏に点々と産卵し、幼虫はハモグリバエのように葉肉部に食入して潜孔を形成する。ふ化直後は細い線状だが、その後発育するにしたがって広く葉肉を食害し、袋状の潜孔痕となる。さらに葉柄に食入したり、近くの葉へ移動して食害を続けることもある。本県のホウレンソウで時折発生するナスハモグリバエの場合は、幼虫の発育が進んでも潜孔が線状であり、1頭の幼虫は1枚の葉のみを食害することから、ハコベハナバエの被害と区別できる。
2)神奈川県、東京都では、10〜11月播種のホウレンソウで、被害多発圃場や本葉1葉期からの被害を認めている。
 
9.防除対策
1)現在のところ本種に対する適用薬剤はない。
2)施設開口部等への防虫ネット被覆は有効と考えられる。
3)圃場周辺のハコベ、オランダミミナグサ等の寄主植物となる雑草の除去に努める。