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 平成21年度病害虫発生予察特殊報第2号
                      
1.病害虫名 イチジクヒトリモドキ Lapides ficus(Fabricius)
2.発生を認めた作物名 イチジク
3.特殊報の内容 本県におけるイチジクへの初被害を確認
4.発生地域 県北部
5.発生経過
 (1)平成21年1月にJA奈良県斑鳩支店よりイチジク葉を暴食する被害報告があっ
    た。7月に県下のイチジク産地を調査した所、大和郡山市と斑鳩町でイチジクヒ
    トリモドキによると思われる被害葉と幼虫の寄生を確認した。8月下旬にも被害
    葉、幼虫を確認している。
 (2)大和郡山市で発生した幼虫個体について、滋賀県農業振興センター寺本憲之氏に
    同定を依頼した所、イチジクヒトリモドキであることが判明した。
 (3)国内では平成11年に愛媛県で初めて確認され、その後、西日本を中心に11府県
    で発生が確認されている。
6.形態
 (1)卵は淡黄色、直径0.8mm程のやや扁平な球形で、葉裏に卵塊として産み付けら
   れる。
 (2)若齢〜中齢幼虫は、胴部背面が全体に白っぽく、頭部は黒色、体の側面は橙色で
   ある(図1)。終齢幼虫は体長4cm程で、頭部がつやのある黒色、背面や側面は
   黒化する(図2)。
 (3)成虫は淡褐色を基調にし、基部付近が橙黄色で黒色、白色の斑点がある前翅を有
   する蛾である(図3)。
7.発生生態及び被害
 (1)被害植物は、クワ科イチジク属のイチジク、イヌビワ、オオイタビが報告されている。
 (2)卵塊が葉裏に産卵され、若齢〜中齢幼虫は群集する習性があり、葉脈と表皮を残
   して食害するため葉脈間に白い膜が残る。生育が進むにつれて分散し、太い葉脈だ
   けを残して葉をほとんど食い尽くす(図4)。葉が少なくなると果皮も食害する。
 (3)老熟幼虫になると地表面に降り、土中の浅い所で土繭を作って蛹化する。蛹から
   羽化した成虫は、昼間は葉裏に生息し夜間行動する。本種は年間4世代を経過し、
   蛹で越冬するとされている。
8.防除対策
 (1)若齢幼虫の発生時期は、愛媛県では5月下旬、7月中旬、8月上旬、9月中旬と
   推測されている。これを参考にして、発生初期に群生して加害する被害葉を取り除
   いて処分する。
 (2)発生初期に以下の防除薬剤を散布する。



 
 薬 剤 名 希釈倍数 使用時期 使用回数
アディオン乳剤
モスピラン水溶剤
 
3000倍
2000倍
 
収穫前日まで
収穫前日まで
 
2回以内
3回以内
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
図1 イチジクヒトリモドキ若齢幼虫    図2 イチジクヒトリモドキ終齢幼虫
                    (寺本氏原図)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
図3イチジクヒトリモドキ成虫       図4 被害葉の圃場写真 
      (寺本氏原図)