平成22年度 農作物病害虫情報(第2号)
作 物 名 ホウレンソウ
病害虫名 べと病(レース1〜7抵抗性品種での発生)
1.対象地域 県下全域
2.発生時期 3月中旬以降
3.発生の経過
本年3月中旬、葛城市の雨よけホウレンソウで葉に不整形の黄斑、葉裏には灰紫色の
かびが発生した。また、4月には、宇陀市及び山添村の雨よけホウレンソウにおいて、
同様の症状が発生した。発病葉の菌そうを光学顕微鏡で観察したところ、いずれもべと
病菌と思われる糸状菌が観察された。
そこで、高原農業振興センタ−及び病害虫防除所において複数のR(レース)1〜7抵
抗性品種に対する接種試験を実施した結果、いずれも発病が確認され、R1〜7抵抗性
品種で発病する新たなレースが発生している可能性が示唆された。
県内では、平成18〜19年にかけてR1〜5抵抗性品種で本病が多発し、その後、R1〜
7抵抗性品種が導入されて以来、初めて同品種において本病の発生を確認した。これま
でに現地圃場において、R1〜7抵抗性品種の7品種で発生を確認している。
4.病徴及び被害
葉の表面に初め淡黄色のぼんやりした病斑が現れ、その後不整形の明確な黄斑紋の
病斑となる。病斑部葉裏には灰紫色のやや盛り上がった菌そう(カビ)が認められ、多数
の分生子が形成される。後に菌そう部は紫色を呈し、表面が粉状に見える様になる。
圃場の一部で初発し、放置すると圃場全体に蔓延し、被害が拡大する。
5.防除上の注意事項
(1)R1〜7の抵抗性品種であっても、本病に対する抵抗性がなく発病する可能性がある
ため、十分注意して早期発見に努める。
(2)平均気温18℃以下の低温で曇雨天が続くと発生しやすいため、中山間地域では、今
後も気象情報を参考にして、生育初期の薬剤による予防を徹底する(表1)。
(3)R1〜7の抵抗性品種で本病の発生を確認した場合は、病害虫防除所又は農業総合セ
ンターに連絡すると共に、発病株は速やかに除去処分する。また、収穫残さはハウス周
辺には放置せず、袋詰めするなどして確実に処分する。
(4)前作で、べと病が発生したほ場では、他作物との輪作又は畝立て後に短期の太陽熱に
よる土壌消毒を行う。やむを得ず連作する場合には、上記の耕種的防除を徹底した上で、
密植は避け、は種時にリドミル粒剤2を全面土壌混和処理し、その後も生育初期の薬剤
による予防に努める(表1)。
(5)薬剤防除にあたっては、農薬のラベルを確認して、安全・適正に使用する。特に、ビ
スダイセン水和剤は、収穫までの日数が45日に満たない場合は、使用できないので注
意する。
表1 ホウレンソウのべと病に登録があり、春期以降も使用可能な薬剤
(平成22年5月20日現在)
農 薬 名 希釈倍数・使用量 使用方法 使用時期 総使用回数
リドミル粒剤2 9kg/10a 全面土壌混和 は種時 1回以内
コサイドボルドー 1,000倍 散 布 − −
アリエッティ水和剤 1,500倍 散 布 収穫前日まで 2回以内
ランマンフロアブル 2,000倍 散 布 収穫3日前まで 3回以内
レーバスフロアブル 2,000倍 散 布 収穫7日前まで 2回以内
ヨネポン水和剤 500倍 散 布 収穫14日前まで 4回以内
注)薬剤耐性菌の発生を防ぐため,同一薬剤の連用は避ける。