農薬散布時の飛散(ドリフト)防止対策について

 奈良県病害虫防除所

農薬が飛散(ドリフト)するとどのような問題が生じるか?

 農薬散布時に散布対象の作物以外に農薬が飛散することをドリフトといいます。

 ドリフトにより以下のような問題が生じるおそれがあるので、これを防止する対策に取り組む必要があります。

近接作物に農薬がドリフトした場合

 ・残留に関する基準値オーバー
  (流通禁止、産地のイメージ悪化)
  参考:農産物の農薬残留規制が大きく変わります!

 ・薬害の発生    等
近接する住居や道路等に農薬がドリフトした場合

 ・近隣住民・通行人に対する迷惑や健康被害

 ・洗濯物や干した布団に付着する

 ・乗用車等が汚れる    等



農薬散布時の飛散(ドリフト)によるリスクを低減する対策

                        ◎すぐに誰にでも取り組めて効果の高いもの
散布技術に関すること 風向きに注意し、風の強い時には散布しない

(できるだけ風のない時に散布し、原則として風速3m/秒(木の葉が揺れる、顔に風を感じる、風見が動き出す程度の風)以上では散布しない)
できるだけ作物に近い位置から、散布圧力を抑えて、作物だけにかかるよう散布する

(飛散少←ハンドスプレー<肩掛け式噴霧機手散布<動力噴霧機手散布<ブームスプレーヤ<パイプダスタ<スピードスプレーヤ→飛散多)
圃場の端での散布の向き等に十分注意する
細かすぎる散布粒子のノズルは使わない 

(ドリフト低減型ノズル等を利用する)
・適期防除を行い、耕種的防除や物理的防除等も組み合わせ、散布量や散布回数の低減を図る
周辺への配慮に関すること 近接作物の栽培者や住民農薬散布を行うことを事前に知らせて、連携・協力を図る

(散布圃場に近いほど飛散量は多くなる。通常風下20m付近、SSでは風下50m付近までは要注意)
近接作物の収穫直前や、通勤・通学等の時間帯を避けて散布する

(近接作物については、収穫1週間以内、食用部分に農薬が直接かかる等の場合は特に要注意)
・近接作物や住居等との境界に、遮蔽シートやネット、障壁となる作物を導入する

(近接作物の種類や面積によっては、農薬散布時に一時的にシートで覆うのも効果が高い)
農薬の選択に関すること 飛散しにくい剤型を選択する

(飛散少←粒剤・育苗箱処理剤・樹幹塗布剤<液剤<DL(ドリフトレス)粉剤<粉剤→飛散多)
近接作物にも農薬登録のある薬剤を選択し、散布する

(収穫前使用期間や希釈倍数等も考慮する)
リスクの低い農薬を選択する

(有効成分濃度が低いもの、残留に関する基準値が高いもの、人畜毒性や魚毒性が低いもの 等)
・作物によっては、生物農薬や性フェロモン剤、天然物由来の農薬などの利用も検討する


 農薬のドリフト対策については、農林水産省農薬コーナーのドリフト対策に関するホームページ社団法人日本植物防疫協会のホームページ(JPP−NET)の「農薬散布技術情報」も参考にしてください。


 農薬の使用にあたっては、これまでと同様に、ラベルの記載事項をよく読み、適用作物、希釈倍数(使用量)、使用時期、使用回数等を遵守して使用してください。