農薬取締法の改正要点について
 
 近年全国で問題となった無登録農薬の販売・使用を受け、農薬取締法の一部が改正され、平成15
年3月10日より施行されました。主な改正点は次のとおりです。

    現在登録のある農薬に関する最新情報などについては、農林水産省
   ホームページの
「農薬コーナー」をご覧下さい。また、農薬登録情報
   御覧になれます。。


○規制と罰則の強化

1.無登録農薬の製造および輸入の禁止
 日本で登録を受けていない無登録農薬は、その製造が禁止されるとともに、たとえ有効成分が同じ登
録農薬が日本にあっても輸入が禁止されます。これは個人で海外旅行をした際に外国の農薬を持ち帰
る場合にも適用されます。

2.処罰対象者の拡大
 元来、農薬取締法は不正・粗悪な農薬の出回りを防止し、農薬の品質の保持・向上を図るために制定
されたものですから、これまでは農薬製造業者、輸入業者、販売業者への取締が中心でした。しかし、
今回の改正では、これら業者以外の者についても規制が拡大されるとともに、使用者への規制が強化さ
れます。無登録農薬や使用禁止農薬を使用したり、農薬使用基準に違反して農薬を使用すると罰則対象
となります。

3.法律違反に対する罰則の強化
 これまでは、1年以下の懲役若しくは5万円以下の罰金でしたが、改正後は3年以下の懲役若しくは
100万円(法人は1億円)以下の罰金となります。


○農薬使用基準の強化・設定

1.無登録農薬の使用禁止
 登録農薬、特定農薬(後述)以外の農薬は使用できません。また、安全性に問題のある販売禁止農薬
(表1参照)が21種類に拡大されました。これらはいかなる使用方法でも使用できません。

表1 禁止農薬リスト

殺菌剤

ダイホルタン、PCNB、水銀剤、ヘキサクロロベンゼン

殺虫剤

 

プリクトラン、パラチオン、ガンマBHC、DDT、エンドリン、
ディルドリン、アルドリン、クロルデン、ヘプタクロル、ひ酸鉛、
メチルパラチオン、TEPP、マイレックス、トキサフェン

除草剤 

CNP、2,4,5‐T、PCP 

2.農薬使用基準の遵守
 農薬には環境や人畜、作物への安全性等の試験を通して得られた知見から安全に使用できる基準が
設けられています(表2参照)。登録農薬であっても農薬使用者が遵守すべき基準に違反して農薬を使
用することは禁止されます。

表2 農薬使用基準の考え方

農薬使用者の責務
 1.農作物等に害を及ぼさないようにする。
 2.人畜に危害を及ぼさないようにする。
 3.農作物等の汚染が原因となって人畜に被害が生じないようにする。
 4.農地等の土壌汚染が原因となって人畜に被害が生じないようにする。
 5.水産動植物に被害が発生し、その被害が著しいものにならないようにする。
 6.公共用水域の水質汚濁が原因となって人畜に被害が生じないようにする。

罰則を科す基準
 1.食用作物及び飼料作物に農薬を使用する場合
   農薬登録時に定められた(1)適用作物、(2)使用量、希釈倍率、(3)使用時期、
   (4)使用総回数 を遵守しない場合
 2.食用作物に適用がない農薬を食用作物に使用した場合

農薬使用者が努力すべき基準
 1.最終有効期限を超えて農薬を使用しないようにする。
 2.航空防除を行う者は対象区域外への農薬の飛散防止をする。
 3.住宅地や住宅近接地域で農薬を使用する者は、農薬の飛散防止をする。
 4.(1)農薬の使用年月日、(2)使用場所、(3)対象農作物、(4)農薬の種類、
   (5)使用量及び希釈倍率を記帳する。
 5.水田で止水を要する農薬を使用する場合は、流出を防止する。
 6.被覆を要する農薬を使用する場合は、揮散を防止する。
 
 


○法改正に伴う国の対応措置


1.登録農薬の少ない農産物への登録拡大 
 登録農薬が少ない農作物は適用作物をグループ化(作物群分類)して、安全性を考慮しながら登録
拡大が進められています。詳しくは農薬販売店や指導機関に問い合わせてください。

2.特定農薬
 今回、無登録農薬の使用を禁止したため、過剰規制を回避するため、その原材料に照らし人畜や農
作物に害を及ぼす恐れがないものを特定農薬として農林水産大臣及び環境大臣が指定し、登録から
除外します。今回、重曹、食酢、地域に生息する天敵の3種類が指定されました。


 農薬は最新の情報を確認のうえ、適用作物、希釈倍数(量)、使用時期、
使用回数を遵守して使用してください。