農産物の農薬残留規制が大きく変わります!

 奈良県病害虫防除所

農産物の農薬残留について

 農薬は、農薬取締法の規定による農薬登録制度に基づき、登録申請時に薬効・薬害に関する試験以外に、毒性に関する試験、残留性に関する試験、環境中での影響をみる試験等の数多くの安全性評価が行われています。これらの結果に基づき、適用作物、希釈倍数(使用量)、使用時期、使用回数等の農薬使用基準や使用上の注意事項が設定されています。従って、これらを遵守して適正に農薬を使用していれば、収穫された農産物に残留農薬基準値を超える農薬は検出されず、安全です(詳しくは農林水産省のホームページ「農薬コーナー」を参照してください)。

 また、最近流通している農薬は紫外線や微生物等による分解が早く、散布された農薬が長期間そのままの状態で農産物に残留するということはありません。さらに、これまでにも農薬散布対象以外の近接作物への農薬の飛散(ドリフト)防止に関係者、生産者共々努めてきたところです。

 厚生労働省では、これまでに残留農薬基準の設定範囲を次々と拡大し、農産物の安全性向上を図ってきました。また、公的機関の残留農薬検査結果をまとめ公表しています。それによると、日本で流通している農産物における農薬の残留レベルは極めて低いものと判断されています(詳しくは厚生労働省の「食品中の残留農薬検査結果公表について」のホームページを参照してください)。

平成18年5月から導入されるポジティブリスト制度について

 このように、これまでにも食品衛生法や農薬取締法によって農産物の安全性の確保が図られてきたわけですが、この度食品衛生法の一部が改正され、さらに厳しく残留に関する基準値が追加設定されることになりました。これにより、さらに食の安全・安心施策が充実することになります。

ポジティブリスト制度とは?

基準値が設定されていない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度

  「食品衛生法等の一部を改正する法律」(平成15年法律第55号,平成15年5月30日公布)
  平成18年5月末より導入予定

本制度の導入によりあらゆる農産物(食用)に対して、すべての農薬の残留に関する基準値が設定されます。

 これまで残留基準値のなかったもののうち、暫定基準(国際基準や諸外国の設定基準等)があるものはそれを、残留基準値も暫定基準もないものは一律基準の0.01ppm(※)を採用して規制されます。

 ただし、人の健康を損なうおそれのないことが明らかであるものとして厚生労働大臣が定める物質(例:オレイン酸(オレイン酸塩:殺虫剤)、レシチン(大豆レシチン:殺虫剤)などの食品添加物や重曹などの特定農薬)は一律基準の対象とならず、規制対象外となります。

 ※人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めたもの

ポジティブリスト制度導入後の基準値イメージ

現行制度

空欄部分は残留基準値がなかったため、規制の対象外であった
ポジティブリスト制度導入後

すべての農産物・農薬に基準が設定され、規制の対象となる(一律基準の採用でより厳しくなる)
  農薬A 農薬B
0.3ppm 1.0ppm
小麦 0.5ppm  
みかん   5.0ppm
   
トマト   0.8ppm
  農薬A 農薬B
0.3ppm 1.0ppm
小麦 0.5ppm 一律基準
(0.01ppm)
みかん 暫定基準
(国際基準)
5.0ppm
一律基準
(0.01ppm)
暫定基準
(オーストラリアの基準)
トマト 暫定基準
(イギリスの基準)
0.8ppm



農薬の飛散(ドリフト)について、より一層注意する必要があります!


 これまでにも、農薬散布対象以外の近接作物への農薬の飛散(ドリフト)防止に取り組んできましたが、ポジティブリスト制度導入後は、ドリフトを受けた農産物から残留に関する基準値以上の農薬が検出されるリスクが高くなります(特に一律基準しかないもの)。
 
 そのため、ドリフト防止対策に、より一層取り組む必要があります。

 詳しくは「農薬散布時の飛散(ドリフト)防止対策について」のページや、農林水産省農薬コーナーのポジティブリスト制度とドリフト対策に関するホームページをご覧ください。



 農薬の使用にあたっては、これまでと同様に、ラベルの記載事項をよく読み、適用作物、希釈倍数(使用量)、使用時期、使用回数等を遵守して使用してください。