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         平成7年度病害虫発生予察特殊報(第1号)
                              平成7年6月15日
                              奈良県病害虫防除所
1.病害虫:アルファルファタコゾウムシ (学名:Hypera postica Gyllenhal)
2.発生経過
 (1) 本種はヨーロッパ原産で、北アフリカ、北アメリカに分布しており、マメ科牧草
  の重要害虫である。
   わが国では昭和57年に福岡県、沖縄県で最初に発生し、九州、四国、中国の多く
  の県で発生が確認されている。
   また近畿では和歌山県、大阪府、兵庫県で発生確認されている。
 (2) 平成7年5月上旬の巡回調査でレンゲ畑を調査したところ、本種による加害食痕
  と幼虫が発見された。発見地域は、県中南部の五條市、御所市と橿原市である。
3.形態
  成虫:体長4.0〜6.5mmで、体表は灰色かかった鱗片で覆われ、背面中央部が濃色に
    なっている。
  幼虫:ふ化直後は透明色であるが、しだいに緑色を帯びてくる。成熟すると体長10
    mmになり、背面中央部に縦に1本の白線がある。脚はないが、コブ状の突起が
    ある。
4.生態及び被害
  年1回発生する。5〜6月に現れた新成虫は、樹皮下や枯れ草下に移動して10月ま
 で夏眠する。11月頃から成虫は圃場に飛来し、寄主植物のマメ科植物(レンゲ)を摂
 食し、交尾する。雌成虫は茎や葉柄に穴を開けて産卵室をつくり、約10個の卵を産む。
 1匹の雌は条件が良ければ12月から5月まで産み続け、一生に約千個の卵を産む。
  3月上旬にふ化した幼虫は、レンゲの新芽や葉を摂食する。成熟するにしたがって
 摂食量は増加し、4月には花を摂食するものも見られる。4月下旬になると、茎葉を
 綴って繭をつくる。
  羽化は5月上旬から始まり、5月中旬から6月下旬にかけてピークとなる。成虫は
 羽化後しばらく寄主植物で摂食するが夏眠地に移動する。
5.寄主植物
  本種の寄主植物は外国で多くの報告事例があり、主としてマメ科のウマゴヤシ属と
 シナガワハギ属の牧草や雑草に寄生することが知られている。わが国の野外での加害
 植物はアルファルファ、ウマゴヤシ、コメツブウマゴヤシ、レンゲ、シロツメグサ、
 ムラサキツメクサ、カラスノエンドウ、シナガワハギ、ソラマメ、ダイズ、インゲン
 マメ、キュウル、メロン、ジャガイモ、エンドウ、アザミが知られている。(網掛け
 は成虫のみ加害する。)
  野菜栽培ではマメ類やキュウリに成虫が摂食するが、被害は少ない。
6.防除対策
 (1) 新成虫が出る前の4月下旬に水田を耕起し、湛水する。

 (2) マメ科牧草にはスミチオン乳剤、ディプテレックス乳剤、レンゲ(緑肥作物)に
 はトクチオン細粒剤が登録されているので防除出来るが、養蜂用のレンゲ畑では蜜蜂
 に影響が考えられるので、危害防止に努める。

参考資料

成虫 幼虫 蛹(繭の中)
アルファルファタコゾウムシ

         

 類似種との見分け方

 日本には数種のタコゾウムシ属が見つかっており、その中でマメ科に加害するものは
下の四種である。その四種のタコゾウムシの見分け方は成虫の上翅の鱗毛を顕微鏡で見
ると、鱗毛の形が種によって異なる。

和     名 学   名 分 布 地 域 鱗毛の形
アルファルファタコゾウムシ Hypera paslica 九州、四国、中国、近畿、中部等
オオタコゾウムシ H.punctatus 神奈川
ツメクサタコゾウムシ H.nigrirostris 北海道、東北
ペッチタコゾウムシ H.viciae 北海道