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      平成9年度病害虫発生予察特殊報(第1号)


1.病害虫名  ルイスハダニ(仮称) Eotetranychus lewisi (McGregor)

2.発生確認の経過
 1)本種は北米,中米,ハワイ,アフリカなどでポインセチアの害虫として知られていたが,
  日本では今回初めて確認された。海外から侵入したと考えられるが,経路は不明である。
 2)平成9年9月に県西部の施設栽培のポインセチアで,葉の退色が観察され,地域農業改
  良普及センターから病害虫防除所に診断依頼があった。退色した葉裏には多数のハダニ
  が寄生しており,茨城大学を通じて美作女子大学の江原昭三博士に同定依頼した結果,
  本邦未発生のルイスハダニであると判明した。
 3)現在までのところ,発生は一部の施設に限られている。発生施設でも既に薬剤による防
  除が実施され被害には至らなかった。

3.形態
 本種は一見,ナミハダニ黄緑型に似るがやや小さい。
  雌成虫:体長470μm程度,体幅240μm程度,体色は黄緑色から淡黄色。
  雄成虫:体長340μm程度,体幅170μm程度,体色は雌と同様。挿入器により他種との
     区別が可能である。

4.生態及び被害
 1)本種は卵から幼虫,第1若虫,第2若虫を経て,成虫になる。
 2)卵は葉裏に1卵ずつ産みつけられる。1日の産卵数は2−5卵程度。
 3)幼虫,若虫,成虫は主に葉裏に寄生し,吸汁加害する。
 4)1世代に要する期間は雌で平均14.5日,雄が12日とされる。雌成虫の寿命は30日以上
  と長い。
 5)本種による被害は吸汁によるもので,他のハダニの加害による症状と同様である。加害
  された葉は退色し,やがて黄化する。加害が進むと落葉に至る。

5.寄主植物
 海外で報告されている寄主植物はポインセチアのほかに,カンキツ類,ユーホルビア,モモ,
 イチジク,パパイア,オリーブ,クローバー,ハイドランジアなどである。
   
6.防除対策
 1)苗による発生の拡大を防ぐため,購入苗も含めて苗による持ち込みに注意する。
 2)ナミハダニよりも小さく,栽培者がハダニを確認することにより早期発見するのは困難
  と思われる。そのため,生育期の葉の退色による発見に努める。なお,コナジラミ類に
  よる加害や生理的な原因でも葉色に異変が生じる可能性もあるので,誤認のないよう栽
  培者に対する十分な情報の提供を行う。
 3)既発生施設では,放置株の処理を徹底する。自家採苗する場合は,次年度の親株の防除
  を徹底する。
 4)本種に有効な薬剤は以下のとおりである(表1)。薬剤に対する感受性は高いので,発
  生確認後に薬剤による防除を実施する。葉裏での散布むらのないようにていねいに散布
  する。未発生施設での本種対象の防除は不要である。


        表1  本種に有効な同時防除薬剤
薬 剤 名 作 物 名 使用濃度 使用基準 備  考
サンマイトフロアブル ポインセチア 1000 −/2回   
モレスタン水和剤 ポインセチア 1000 −/− 高温時薬害注意