病害虫発生予察特殊報第1号


                                大 防 第 1025号
                              平成22年7月23日

 関係各位


大阪府病害虫防除所長

病害虫発生予察情報について


 標記について次のとおり発表したので送付します。

病害虫発生予察特殊報第1号

病害虫名 ウメ輪紋ウイルス

          ※英名「plum pox virus(PPV):プラムポックスウイルス」

1 発生作物  ウメ

2 発生地域  吹田市

3 発見と対応の経緯
(1)ウメ輪紋ウイルス(PPV)は、植物防疫法(昭和25年法律第151号)に基づき、平成22年2月から緊急防除が行われており、東京都青梅市などが防除区域に指定されている。
 平成22年5月28日、東京都青梅市の業者から購入したウメ苗が緊急防除の開始前に、大阪府吹田市の観光梅園に持ち込まれていたことが判明したため、農林水産省神戸植物防疫所、大阪府環境農林水産総合研究所とともに該当する梅園および苗圃※を調査し、サンプル(ウメの葉)を採取した。(※補植用の苗を育成している場所。一般客の立入禁止)
(2)5月31日、農林水産省神戸植物防疫所が、イムノクロマト法およびLAMP法で検定した結果、3樹のウメでPPVの感染が確認された。
(3)6月8日及び6月24日、当該園地の全樹について調査を行い、輪紋等の症状が見られた樹からサンプルを採取、周辺の宿主植物を調査した。
(4)6月9日及び6月25日、イムノクロマト法およびLAMP法による検定の結果、苗圃で43樹のPPVの感染が確認された。
(5)6月24日、周辺1km圏内にある宿主植物を調査したが、当該苗圃以外では感染は確認されなかった。
(6)7月20日、ウイルスに感染が確認された樹は、梅園管理者により全て処分された。
 なお、ウメ以外の植物のウイルス感染は確認されなかった。

4 ウメ輪紋ウイルスの特徴
(1)宿主植物
 バラ科Prunus属の植物(ウメ、アンズ、スモモ、モモなど)に感染する。
 なお、農林水産省が実施したこれまでの青梅市等の調査では、サクラへの感染は確認されていない。
(2) 伝搬方法
 アブラムシ類によって媒介される。感染した植物を吸汁してウイルスを獲得したアブラムシ類が、健全な植物を吸汁することにより伝搬する。アブラムシ類によって獲得されたウイルスは短時間のうちに活性が失われるため、媒介は非永続性である。また、感染した苗や穂木の移動によっても伝搬される。花粉伝染および生果実からの自然感染は知られていない。
(3)その他
 PPVは、植物に感染するものであり、ヒトには感染しないので、果実を食べても健康に影響はない。

5 生態及び被害
  病徴と被害:ウメでは葉に退緑斑点や輪紋を生じる(写真)。また、花弁に薄赤色の斑入り症状を呈することがある。海外の報告によると、モモやスモモ等で、果実に斑紋が生じたり、早期落果するなどの被害が報告されている。なお、宿主の種類や品種によって症状の様態、程度が異なることが考えられるため、注意が必要である。

6 発生状況
 日本国内では、平成21年4月に東京都で最初に発生が確認された。東京都青梅市の感染園から苗や穂木を導入した神奈川県、茨城県でも発生が確認された。大阪府における発生も、東京都内の感染園から購入した苗によるものである。

7 防除対策
 本病はウイルス病であるため、感染した樹の療法はない。感染樹は、伐採、抜根し感染の拡大を防止する。モモアカアブラムシ他、複数種アブラムシ類により媒介されるため、アブラムシを防除することが、ウイルス感染の予防になる。アブラムシ類の発生を確認した場合は下記の薬剤で防除する。

【うめの場合】
・モスピラン水溶剤
・アクタラ顆粒水溶剤
・スミチオン乳剤
・アディオン乳剤
【ももの場合】
・モスピラン水溶剤
・アドマイヤー顆粒水和剤
・アディオン乳剤
・ダイアジノン水和剤34
 詳しくは大阪府病害虫防除所ホームページ(http://www.jppn.ne.jp/osaka/)掲載の「web版病害虫防除指針」を参照。

8 参考資料
 農林水産省ホームページ「ウメ輪紋ウイルス(プラムポックスウイルス)による植物の病気の発生調査の結果と対応状況について」(平成22年7月23日付け報道発表資料)

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