予報第1号(5月)


                                大 防 第 1007号
                              平成22年4月30日


 関係各位



                             大阪府病害虫防除所長

             病害虫発生予察情報について

 標記について次のとおり発表したので送付します。

             病害虫発生予報第1号(5月)

                             平成22年4月30日
                             大阪府病害虫防除所

農作物名 病害虫名 予想発生量
水稲 いもち病 □~
ばか苗病
もみ枯細菌病
縞葉枯病 □~
ヒメトビウンカ
イネミズゾウムシ
ぶどう(デラウェア) べと病
灰色かび病
クワゴマダラヒトリ
みかん 黒点病
そうか病
コナジラミ類
ミカンハダニ
もも せん孔細菌病
いちじく □~
なす すすかび病
うどんこ病
ミナミキイロアザミウマ
なす
トマト
灰色かび病
トマト
葉かび病
たまねぎ べと病 □~△
白色疫病
ボトリチス葉枯症
灰色腐敗病
軟腐病
ネギアザミウマ
きく 黒斑病・褐斑病
白さび病
野菜類
花き類
アブラムシ類 □~△
ウイルス病 □~△
ミカンキイロアザミウマ □~△
ハモグリバエ類 □~△
コナジラミ類 □~
▲:少ない △:やや少ない □:並 :やや多い :多い

 

5月気象予報(大阪管区気象台4月23日発表)
低い
(少ない)
平年並 高い
(多い)
気温(確率) 50 30 30
降水量 30 40 30
日照時間 30 40 30

A 水稲
【いもち病】
[予報内容]   発生量 :並~やや多い
[予報の根拠]
(1)昨年度のいもち病(葉いもち)の発生は、平年よりやや多かった。
(2)向こう1か月の天候は、降水量、日照時間ともに平年並。
[防除上考慮すべき事項]
(1)塩水選を確実に行い、充実した種もみを選別する。
(2)種子消毒を徹底する。日陰で12~24時間風乾すると効果が高まる。
(3)種もみは薬液中で数回かくはんし、薬液の温度は10度以下にならないようにする。
[メモ]
(1)低温、日照不足の時に発生しやすい。
(2)近年、他府県においてMBI-D剤(メラニン合成阻害剤)耐性菌の発生が報告されている。
  MBI-D剤成分例:カルプロパミド(ウィン)、ジクロシメット(デラウス)、
   フェノキサニル(アチーブ)等

【ばか苗病】
[予報内容]   発生量 :並
[予報の根拠]
(1)前年の発生は、平年並であった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)ばか苗病の発生したほ場で採種した種もみは使用しない。
(2)塩水選、種子消毒を徹底する。
(3)前年発生の多かったところでは、薬液への浸漬は高濃度短時間処理とするか、薬剤の種類を変える。
(4)種もみは薬液中で数回かくはんし、薬液の温度は10度以下にならないようにする。
(5)発病が認められた場合、株が枯死する前に抜き取ってほ場外に持ち出し処分する。
(6)種もみを温湯消毒する場合、処理温度、消毒時間等、適正な処理を心がける。
[メモ]
(1)苗代が高温であると発生が多くなる。

【もみ枯細菌病】(苗腐敗症)
[予報内容]   発生量 :並
[予報の根拠]
(1)前年の巡回調査では、発生はほとんど見られなかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)塩水選、種子消毒を徹底する。
(2)種子消毒後、日陰で12~24時間風乾すると効果が高まる。
(3)出芽時の高温は発病を助長するので、温度を30度以下にする。
(4)深水や冠水状態になると発生が多くなるので、生育初期は浅水管理とする。
[メモ]
(1)近年、オキソリニック酸水和剤(スターナ水和剤)耐性菌が増加している。

【縞葉枯病】
[予報内容]    発生量 :並~やや多い
[予報の根拠]
(1)前年の巡回調査では、平年より多かった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)密植を避けて通風を良好にするとともに窒素質肥料の過用を避ける
(2)ヒメトビウンカの防除薬剤を施用する。
(3)育苗ほへのヒメトビウンカの飛び込みを防ぐため、イネ科雑草地周辺での育苗は避 ける。
(4)刈り株から生じたひこばえは、ヒメトビウンカの保毒虫率を増加させる。
[メモ]
(1)本病はヒメトビウンカによって媒介されるウィルス病である。
(2)近年、西日本で増加傾向にある。

【ヒメトビウンカ】
[予報内容]   発生量 :並
[予報の根拠]
(1)前年の巡回調査では、平年並であった。
(2)耕起前の水田での捕虫網によるすくい取り調査では、発生は見られなかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)密植を避けて通風を良好にするとともに窒素質肥料の過用を避ける。
(2)育苗箱に箱粒剤等を施用する。
(3)イネ科雑草で越冬するため、まだ耕起していない水田では早めに耕起して、密度低 下を図る。
[メモ]
(1)縞葉枯病を媒介する。
(2)近年、西日本で増加傾向にある。

【イネミズゾウムシ】
[予報内容]   発生量 :並
[予報の根拠]
(1)前年の発生は、やや少なかった。
(2)1~2月の気温は平年並だった。越冬虫数は平年並と予想される。
[防除上考慮すべき事項]
(1)極端な早植は越冬世代成虫が集中し、被害が増大する。
(2)発生の多い所では、育苗箱に粒剤等を施用する。
(3)手植田では、苗の活着後に粒剤を施用する。
(4)移植後は浅水に管理し、健全な発根を促す。
[メモ]
(1)幼虫は根を食害し、成虫は葉をかすり状に食害する。
(2)中山間の水田で発生しやすい。

B 果樹
1 ぶどう(デラウェア) 
【べと病】
[予報内容] 発生量:並
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、平年と同様に発生は見られなかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)発病を認めたら、被害葉を速やかに取り除くとともに、初期防除を徹底する。
[メモ]
(1)5月~10月にかけて、降雨が続き、気温が低めに経過すると発生が多い。

【灰色かび病】
[予報内容]発生量:やや多い
[予報の根拠]
(1)3月~4月下旬の巡回調査では、発生はやや多かった。
(2)4月下旬は雨が多く、5月上旬も多いと予報されている。
[メモ]
(1)ハウス栽培では換気やマルチを行い、湿度を下げる。
(2)灌水や薬剤散布は午前中に行い、夜間の湿度が上がらないようにする。

【クワゴマダラヒトリ】
[予報内容]発生量:やや多い
[予報の根拠]
(1)産地の一部から発生が多いと情報があった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)萌芽期に食害を受けると被害が大きくなる。
(2)春の低温で生育が遅れている園では、被害を受けやすい期間も長い。

2 みかん
【黒点病】
[予報内容]発生量 :並
【予報の根拠】
(1)4月の巡回調査では、平年と同様に発生は見られなかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)枯枝が多く残っているところでは、伝染が始まる5月下旬までに伝染源となる枯枝 の除去に努める。
(2)伝染初期(5月下旬)の防除に重点を置く。
[メモ]
(1)この病気は、枯枝上から雨滴によって広がっていく。

【そうか病】
[予報内容]発生量:並
[予報の根拠]
(1)4月の巡回調査では、平年と同様に発生は見られなかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)伝染源となる越冬病斑は除去する。
(2)防除時期は落弁期である。

【コナジラミ類】
[予報内容]発生量:並
[予報の根拠]
(1)4月の巡回調査では、発生は見られなかった。

【ミカンハダニ】
[予報内容]発生量:やや少ない
[予報の根拠]
(1)4月の巡回調査では、発生量は少なかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)同一薬剤の連用を避ける。

3 もも
【せん孔細菌病】
[予報内容]発生量:並
[予報の根拠]
(1)4月の巡回調査では、平年どおり発生は見られなかった。
(2)5月の降水量は平年並と予想されている。
[防除上考慮すべき事項]
(1)多発すると防除が困難となるので、早期防除を心掛ける。
(2)強い風雨後の発生に十分注意する。

4 いちじく
【イチジクヒトリモドキ】
[予報内容]発生量:並~やや多い
[予報の根拠]
(1)昨年度の調査で府内で広く発生が確認された。
[防除上考慮すべき事項]
(1)新梢生育期に食害を受けると、被害が大きい。
(2)春の低温で新梢の生育が遅れており、食害が大きな被害につながりやすい。
(3)本種は蛹で越冬し、5月下旬頃、第1世代の幼虫が発生する。年5世代程度発生す る。

C 野菜
1 なす
【すすかび病】
[予報内容]   発生量 :やや少ない
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、発生はやや少なかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)施設栽培においては換気に努め、マルチを行う等、湿度を低く保つ。
(2)下~中位葉に発生しやすいので、発病を認めたら早めに摘葉し、病葉はハウス外に持ち出し処分する。
(3)初期防除が重要となるので、発病を認めた場合には直ちに防除を行う。
(4)同一薬剤の連用を避け、薬剤のローテーション散布を行う。

【うどんこ病】
[予報内容]   発生量 :少ない
[予報の根拠]
(1)ハウスなすの4月下旬の巡回調査では、発生は少なかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)密植を避け、過繁茂にならないよう摘心・摘葉をこまめに行う。
(2)発生初期の防除を徹底する。
(3)同一薬剤の連用を避け、ローテーション散布を行う。
(4)苗床からの病害の持ち込みを防ぐため、育苗中に発病を認めた場合は防除を行う。
[メモ]
(1)うどんこ病は、日照不足、乾燥条件下で多発する。

【ミナミキイロアザミウマ】
[予報内容]   発生量 :やや少ない
[予報の根拠]
(1)ハウスなすの4月下旬の巡回調査では、発生は少なかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)定植時には粒剤を施用する。
(2)同一薬剤の連用を避けロ-テ-ション散布を行う。
(3)葉の被害に注意し、少発生時の防除を徹底する。
2 なす・トマト
【灰色かび病】 
[予報内容]   発生量 :やや少ない(なす)、やや少ない(トマト)
[予報の根拠]
(1)ハウスなす、ハウストマトの4月下旬の巡回調査では、発生はやや少なかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)多湿条件下で発生が多くなるので施設の換気を十分行うとともに、茎葉が過繁茂にならないよう摘心・摘葉をこまめに行う。
(2)果実に付着した花弁からの感染が多いので花弁の除去に努める。
(3)同一薬剤の連用を避け、薬剤のローテーション散布を行う。
[メモ]
(1)灰色かび病は、多湿、日照不足で発生が多くなる。

3 トマト 
【葉かび病】  
[予報内容]   発生量 :やや多い
[予報の根拠]
(1)ハウストマトの4月下旬の巡回調査では、発生はやや多かった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)施設栽培においては換気に努め、マルチを行う等、湿度を低く保つ。
(2)下~中位葉に発生しやすいので、発病を認めたら早めに摘葉し、病葉はハウス外に持ち出し処分する。
(3)初期防除が重要となるので、発病を認めた場合には直ちに防除を行う。
(4)同一薬剤の連用を避け、薬剤のローテーション散布を行う。

4 たまねぎ
【べと病】 
[予報内容]   発生量 :並~やや少ない
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、発生はやや少なかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)ほ場の排水を良くする。
(2)すでに発生を認めているほ場では、直ちに薬剤散布を行う。
(3)発病した株は翌年の感染源になるので、ほ場外に持ち出して処分する。
[メモ]
(1)べと病は多湿、日照不足で多発する。




【白色疫病】 
[予報内容]   発生量 :多い
[予報の根拠]
(1)4月上、下旬の巡回調査では、発生は多かった。
(4月14日 病害虫発生予察注意報第1号発表)
[防除上考慮すべき事項]
(1)すでに発生を認めているほ場では、直ちに薬剤散布を行う。
(2)現在、発生のないほ場でも、予防的に薬剤散布を行う。
[メモ]
(1)白色疫病は多湿、日照不足で多発する。

【ボトリチス葉枯症】 
[予報内容]   発生量 :やや多い
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、発生はやや多かった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)高畝にするなど、ほ場の排水に努める。
(2)収穫後の残さはすみやかに処分する。

【灰色腐敗病】 
[予報内容]   発生量 :並
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、平年と同様に発生は見られなかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)発病ほ場では早期に薬剤散布を行い、二次感染防止に努める。
(2)発病した株は、すみやかにほ場外に持ち出し、処分する。
(3)収穫後の残さはすみやかに処分する。
[メモ]
(1)灰色腐敗病は多湿、日照不足で多発する。
(2)発病ほ場では、収穫後貯蔵中にも発生する恐れがある。

【軟腐病】 
[予報内容]   発生量 :並
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、発生は平年並であった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)発病した株は早めに除去し、薬剤を散布する。
[メモ]
(1)軟腐病は高温多雨で多発する。

【ネギアザミウマ】 
[予報内容]   発生量 :並
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、発生は平年並であった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)発生初期の防除に努める。
(2)同一薬剤の連用を避け、ローテーション散布を行う。

D 花き
1 きく 
【黒斑病・褐斑病】
[予報内容] 発生量 :並
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、発生量は平年並であった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)発病を認めたら、被害葉を速やかに取り除くとともに、初期防除を徹底する。
[メモ]
(1)降雨が多いと発生が多い。

【白さび病】
[予報内容]発生量 :並
[予報の根拠]
(1)4月の巡回調査では、平年と同様に発生は見られなかった。

E 野菜・花き類
【アブラムシ類】 
[予報内容]   発生量 :並~やや少ない
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、ほ場での発生はやや少なかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)少発生時の防除を徹底する。
(2)施設栽培では、開口部に寒冷しゃを被覆し、成虫の飛来を防止する。
(3)同一薬剤の連用を避け、ローテーション散布を行う。
[メモ]
(1)アブラムシ類は多種類のウイルス病を媒介する。

【ウイルス病】 
[予報内容]   発生量 :並~やや少ない
[予報の根拠]
(1)アブラムシ類の発生量予報は並~やや少ない。
[防除上考慮すべき事項]
(1)無病苗を確保する。
(2)防虫ネットの展張等によりアブラムシ類の飛来防止に努め、防除を徹底する。
(3)ほ場周辺の除草に努める。
(4)発病した株は、蔓延防止のため、抜き取りまたは株元から切り取って、
 ほ場外に持ち出し処分する。

【ミカンキイロアザミウマ】 
[予報内容]   発生量 :並~やや少ない
[予報の根拠]
(1)ハウスなすの4月下旬の巡回調査では、発生は少なかった。
(2)平成13年以降毎年、5月後半~6月の粘着板トラップ(露地きく)および花たたき調査(露地なす)での誘殺虫数が多い。
[防除上考慮すべき事項]
(1)5月から発生が増えるので、少発生時の防除を徹底する。
(2)同一薬剤の連用を避け、ローテーション散布を行う。
(3)被害葉や残さは、ほ場より持ち出し、ビニール袋に入れたり、穴を掘って埋めるなどして処分する。
(4)ほ場周辺の除草に努める。
[メモ]
(1)ミカンキイロアザミウマやヒラズハナアザミウマは、作物を加害するだけでなく、ウイルス病(TSWV)を媒介する。

【ハモグリバエ類】 
[予報内容]   発生量 :並~やや少ない
[予報の根拠]
(1)4月下旬の巡回調査では、発生はやや少なかった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)発生初期の防除に努める。
(2)被害葉や残さは、ほ場より持ち出し、穴を掘って埋めるなどして処分する。
(3)施設では、開口部を寒冷しゃで被覆し、成虫の侵入を阻止する。
(4)しゅんぎくや大阪しろな等では、収穫後に地表面をビニール被覆し、
 1日間太陽熱により土中の蛹を殺すこと(晴れの日1日ビニール1枚敷き)で、
  次作の被害を軽減できる。
  (4~10月の間可能。但し4、10月は効果がやや低い。)
(5)同一薬剤の連用を避け、ローテーション散布を行う。
(6)ほ場周辺の除草にも努める。



【コナジラミ類】 
[予報内容]   発生量 :並~やや多い
[予報の根拠]
(1)なすの4月下旬の巡回調査では、平年よりやや多かった。
[防除上考慮すべき事項]
(1)発生初期の防除に努める。
(2)被害葉や残さは、ほ場より持ち出し、穴を掘って埋めるなどして処分する。
(3)施設では、開口部を寒冷しゃで被覆し、成虫の侵入を阻止する。
(4)同一薬剤の連用を避け、ローテーション散布を行う。
(5)ほ場周辺の除草にも努める。

                        

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