病害虫発生・防除メールサービス(7月前半)

(平成24年7月4日発信)


 大阪府内の7月前半の病害虫発生状況と防除対策についてお知らせします。
 例年、梅雨明けからハダニ類などの害虫が増加しますので注意しましょう。
 高温時の薬剤散布は薬害を起こしやすいので、散布は涼しい時間帯に行ってください。
 
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注意報第1号「果樹カメムシ類注意報」発表(6月13日)
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1 水稲
【いもち病】
◇低温や日照不足で発生しやすい。山間部などで、発生が多い。
◇密植や窒素肥料の多用は、発生を助長するので注意する。
◇補植用の苗が発生源になることが多いので、処分する。
◇発病を認めたら直ちに、オリゼメート粒剤等で防除を徹底する。
◇ストロビルリン系の薬剤は、耐性菌が発生しやすいため、使用は1作1回に留める。
 ・ストロビルリン系薬剤の例
  アミスター(アゾキシストロビン)、嵐(オリサストロビン)
  オリブライト(メトミノストロビン)、イモチエース(メトミノストロビン)

【縞葉枯病】(ヒメトビウンカ)
◇縞葉枯病はヒメトビウンカによって媒介されるウイルス病で、6月下旬〜7月上旬の
 感染が多い。
◇近年、西日本で増加傾向にある。
◇生育初期に発病すると葉が「こより状」に巻いて垂れ下がり、その後枯れる。
◇トレボン粒剤やスタークル顆粒水溶剤等でヒメトビウンカの防除を徹底する。

【ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)】
◇近年、府内全域に発生が拡大している。
◇昨年度、府内での発生は平年並であった。
◇田植え後20日ほど経過し、葉が硬化すると食害を受けにくくなる。
◇水深4センチ以下では自由に移動できないので、田植後の浅水管理が有効である。
◇ピンク色の卵塊を発見した場合は、水中に掻き落とす。
(卵は水中では生存できない)
◇田植直後にスクミノンを散布する。
 スクミノンの使用時期は「収穫90日前まで」となっているので注意する。
 スクミノン使用後は7日間湛水状態にし、かけ流しや落水はしない。
 スクミノンは水田以外(用水路等)には使用しない。

【イネアオムシ(フタオビコヤガ)】
◇昨年度、予察ほ場での発生はやや多かった。
◇発生初期の防除を徹底する。
◇プリンス粒剤の効果はやや低い。
◇発生が多い場合には、エルサン乳剤、MR.ジョーカーEW等で防除する。

2 なす
【すすかび病】
◇多湿条件や草勢が低下したときに発生しやすい。
◇下位〜中位の葉に発生しやすい。被害葉は早めに除去し、ほ場外で処分する。
◇発生が見られたらトリフミン乳剤、カンタスドライフロアブル、シグナムWDG等を散
 布する。

【うどんこ病】
◇うどんこ病は、日照不足、乾燥条件下で多発する。
◇こまめに摘葉、摘芯を行い、過繁茂にならないようにする。
◇草勢が弱ると多発しやすいので、肥切れにならないように管理する。
◇発生初期に、パンチョTF顆粒水和剤、モレスタン水和剤等をしっかり散布する。
 モレスタン水和剤は、高温時には薬害が発生しやすいので注意する。

【アザミウマ類】
◇ミナミキイロアザミウマが増加している。
◇発生が見られたら、アファーム乳剤、プレオフロアブル(ミナミキイロアザミウマのみ)、
 ディアナSC等を散布する。
◇施設栽培では、天敵や寄生菌を使った生物農薬も利用できる。
・スワルスキー、スワルスキープラス(アザミウマ類を食べるスワルスキーカブリダニ)
 適温:15〜35度
・ボタニガードES(アザミウマ等に寄生するカビ)(散布後、施設内を保湿する)
 適温:18〜28度
◇薬剤散布にあたっては、使用履歴を確認し、使用回数制限に気をつける。
◇系統の異なる薬剤を組み合わせて、ローテーション散布する。

【ハダニ類】
◇合成ピレスロイド系の薬剤を多用すると、天敵が減少し、ハダニ類が増えやすい。
◇発生初期の方が防除効果が高いので、発見後早めにマイトコーネフロアブル、ダニサラ
 バフロアブル、ピラニカEW等を散布する。
◇薬剤は、使用回数が1回のものが多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳する。
◇購入苗の場合は、育苗期の農薬使用履歴もしっかり確認する。

【チャノホコリダニ】
◇微小な害虫で、被害が大きくなるまで発生に気づきにくい。
◇がく片が褐変するなどの被害が発生したら、コロマイト乳剤、ピラニカEW等を散布す
 る。
◇薬剤は、使用回数が1回のものが多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳し確認する。
◇購入苗の場合は、育苗期の農薬使用履歴もしっかり確認する。

【ソルゴ囲い込み栽培】
◇アザミウマ類の天敵であるハナカメムシ類が発生する。
 害虫防除には、天敵に影響の少ない薬剤(プレオフロアブル、BT剤等)を利用する。
◇オサダン水和剤25等は、ハダニ類等の天敵であるカブリダニ類に影響が少ない。
◇天敵類に影響が強い合成ピレスロイド系薬剤を使用しない。

3 トマト・ミニトマト(施設栽培)
(トマトとミニトマトで登録内容が異なる場合があるので薬剤使用にあたっては注意する)
【葉かび病】
◇発生が増加している。
◇草勢の低下や、過湿条件で多発しやすいので注意が必要。
◇下位〜中位葉で発生が多い。被害葉は早めに除去し、ハウス外に持ち出して処分する。
◇発生した場合は、ポリオキシンAL乳剤(トマトのみ)、トリフミン乳剤(トマトのみ)、
 トリフミン水和剤(トマト、ミニトマト)、カンタスドライフロアブル(トマト、ミニ
 トマト)等を散布する。

【ウイルス病】
◇府内でトマト黄化葉巻病やトマト黄化えそ病等の発生が確認されている。
◇ウイルスに感染してからでは対策がないので、予防に努める。
◇アブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類などがウイルス病を媒介する。
◇罹病が疑われる苗は株元から切り取り、ビニル袋等に入れて完全に枯死させる。
◇媒介昆虫の防除を徹底する。
◇ほ場周辺に、こぼれ種から発芽した苗があれば処分する。
◇開口部に設置した寒冷紗なども、破れ等がないか点検する。

【コナジラミ類】
◇開口部に防虫網(目合0.4mm)を設置して侵入をふせぐ。
◇発生を確認した場合は、コルト顆粒水和剤、コロマイト乳剤等を散布する。
(2剤ともトマト、ミニトマト双方に適用あり)

4 ぶどう
【べと病】
◇気温20〜22度で、雨が多いと発生しやすい。
◇梅雨明けが遅れると蔓延しやすい。今後の天候に注意する。
◇多発して落葉すると樹勢が低下し次年度にも影響するので、収穫が終わった園もしっか
 り防除する。
◇発生が予想される時期に、ICボルドー66DやICボルドー48Q等を散布し予防す
 る。
◇発生を確認した場合は、ランマンフロアブル(14日前まで)を散布する。
◇収穫前日数に注意し、収穫期間近の場合は、収穫終了後に散布する。

【ハダニ類】
◇施設栽培で発生しやすい。
◇多発し早期落葉につながると、着色障害など果実品質に影響する。
◇除草を行うと、雑草にいたハダニ類がぶどうに移動して、急に被害が増えることがある。
◇発生を確認した場合は、バロックフロアブル(7日前まで)、コロマイト水和剤(7日前
 まで)等を散布する。収穫前日数に注意すること。

【アメリカシロヒトリ】
◇ぶどう以外にも多種の果樹類、街路樹等を食害する。
◇収穫終了後の園も定期的に見回って、発生状況を確認する。
◇発生を確認した場合は、デルフィン顆粒水和剤(果樹類・ケムシ類)、アディオン水和
 剤(7日前まで)等を散布する。
◇アディオン水和剤など合成ピレスロイド系の薬剤を散布すると、天敵が減ってハダニ類
 が増加することがある。ハダニ類が発生しやすい園では、デルフィン顆粒水和剤を使用
 する。

5 温州みかん
【そうか病】
◇6月下旬の巡回調査では、少発生であった。
◇長雨が続くと発生しやすい。
◇発生を確認した場合は、トップジンM水和剤等で防除する。

【ハダニ類】
◇例年、梅雨明け後に多発する。
◇発生を確認した場合は、ハーベストオイル、バロックフロアブル等を散布する。
◇同一の薬剤を連用すると抵抗性が発達しやすい。
◇ダニトロン、ピラニカ、サンマイト、マイトクリーンは交差抵抗性があるため、特にこ
 れらの薬剤の連用を避ける。
◇使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳する。
◇薬害発生の恐れがあるので、高温時の散布は避ける。

6 もも
【せん孔細菌病】
◇発生を確認した場合はチオノックフロアブルを散布する。
◇収穫期が近づいているので、使用前制限に気をつける。
◇収穫前に散布できない場合は、収穫終了後に防除する。

【吸汁ヤガ類】
◇夜になると果樹園に飛来して、果実を吸汁するガの総称である。
◇果実袋の上から吸汁することもあるので注意が必要である。
◇収穫間際に飛来する害虫なので、薬剤による防除は難しい。
◇夜間に黄色灯を点灯することで、飛来を防止できる。
【黄色灯によるヤガ類の防除】参照

7 いちじく
【アザミウマ類】
◇果実開口部から内部へ侵入し加害する。果実は腐敗するなどの被害を受ける。
◇発生を確認した場合はスピノエース顆粒水和剤、アディオン乳剤等で防除する。
 なお、収穫期が近づいており、一部の薬剤は使えないので注意する。

【イチジクヒトリモドキ】
◇葉や果皮を加害する黒い毛虫である。
◇6月の巡回調査で発生が確認された。
◇5月下旬〜6月上旬に第1世代の幼虫が現れる。
◇年に5世代程度発生する。
◇大阪府内では、平成19年度に初めて発生を確認した害虫である。
◇高槻市、柏原市、羽曳野市、堺市など府内各地で発生が確認されている。
◇新梢生育期に食害を受けると被害が大きいので注意が必要である。
◇若齢幼虫は集団で加害するので、葉ごと処分する方法が効果的である。
◇発生を確認した場合は、アディオン乳剤、デルフィン顆粒水和剤等を散布する。

8 果樹類
【果樹カメムシ類】
★注意報第1号「果樹カメムシ類 注意報」発表(6月13日)
◇本年は全国的にカメムシ類の越冬量が多く、園への飛来が増加している。
◇果樹をよく加害するカメムシ類は、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギ
 カメムシの3種である。
◇もも、うめ、かきなどの果樹類を加害する。多発生した場合は、みかんやぶどうを加害
 することもある。
◇果実袋を使用した場合でも、果実の肥大に伴って果実袋と果実が密着すると、袋の上か
 ら吸汁されることもある。
◇発生した場合は、ももの場合はアドマイヤー顆粒水和剤、アディオン乳剤、モスピラン
 顆粒水溶剤等を散布する。
◇成虫の移動能力は高く、次々と飛来するため、こまめな防除が必要となる。
◇収穫期近くでも防除が必要となるため、薬剤散布に当たっては、収穫前日数や使用回数
 に十分注意する。
◇園全体を目合4mmのネットで覆い、侵入を防ぐ。
◇黄色灯を設置、点灯して園への侵入を防ぐ。

9 きく
【黒斑病、褐斑病】
◇品種により、発生に差があるので、注意が必要である。
◇雨滴によって感染が拡大する。
◇被害葉は取り除いて処分する。
◇ダコニール1000、ストロビーフロアブル等を散布して予防する。

【白さび病】
◇品種により、発生に差があるので、注意が必要である。
◇被害葉は取り除いて処分する。
◇ストロビーフロアブル、ステンレス等を散布し、予防に努める。

【ハモグリバエ類】
◇被害葉は取り除いて処分する。
◇発生がみられたら、トリガード液剤(マメハモグリバエ)、スピノエース顆粒水和剤等
 を散布する。

【アザミウマ類】
◇品種により、被害の現れ方に差がある。
◇発生源となる周辺の除草を行う。
◇発生を確認したらディアナSC、ハチハチ乳剤等を散布する。

【アブラムシ類】
◇吸汁による直接被害の他、ウイルス病を媒介することがある。
◇発生を確認したらアドマイヤーフロアブル、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水
 溶剤等を散布する。
(注)スタークルとアルバリンは、同一成分を含むため定植後の使用は合計4回まで。

◎黄色灯によるヤガ類の防除
[対象害虫]
◇もも、みかんの果実を吸汁するアカエグリバ等の吸汁ヤガ類。
◇野菜・花き類を食害するハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、オオタバコガ等。
◇成虫の飛来を抑制するもので、幼虫に対して防除効果はない。

[設置方法]
◇ほ場内の照度が1ルクス以上になるように、設置する。
◇ほ場の上方や外側にも光が行き届く方が効果が高い。
◇日没1時間前から、日の出1時間後まで点灯すると効果が高い。
◇水稲やきくは夜間に強い光を受けると開花しない。周辺にこのような作物がある場合は
 黄色灯の設置方向に注意すること。

 次の情報は、7月17日頃にお知らせします。

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