病害虫発生・防除メールサービス(3月)

(平成27年3月13日発信)


 大阪府内の3月の病害虫発生状況と今後1ヶ月の防除対策についてお知らせします。
 果樹の萌芽期が近づきました。いまのうちにしっかり手入れをしましょう。
 春は強風の日が多いので、風のある時間帯は散布を避けるなど薬剤散布の際はドリフトに注意しましょう。
 農薬を使用する前には、農薬のラベル等で登録内容をよく確認してください。また病害虫防除グループホームページhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/ に掲載している防除指針もご参照ください。
 先月もお知らせしたところですが、新たな農薬の評価手法(短期暴露評価※)が導入されることに伴い、次の農薬については、それぞれ使用制限となる登録変更(変更申請中のものを含む)が行われています。
 これらを成分に含む農薬は変更後の内容に従って使用してください。変更内容については、販売店で提供されるチラシ等や病害虫防除グループホームページ「短期暴露評価により変更される農薬の使用方法の周知等について」
http://www.jppn.ne.jp/osaka/H26nd/ARfDtuuti/ARfDH26_top.html で確認してください。
◇短期暴露評価が導入されることにより登録内容が変更になった農薬
 変更登録済みのもの:アセフェート(商品名オルトラン、ジェイエース等)、ジメトエート(商品名ジメトエート等)、フルバリネート(商品名マブリック等)フェナリモル(商品名ルビゲン等)、NAC(商品名デナポン、ミクロデナポン) 
 変更登録申請中のもの:カルボスルファン(商品名アドバンテージ、ガゼット等)、ベンフラカルブ(商品名オンコル等)
※短期暴露評価:農薬の急性毒性の指標として、24時間又はそれより短い時間に経口摂取した場合に、健康に悪影響を示さないと推定される1日当たりの摂取量(=急性参照用量(ARfD))を用いた評価

1 水稲
【育苗準備】
◇育苗箱などの資材は使用前にケミクロンG、イチバン等で消毒する。 
【種子消毒】
◇いもち病やもみ枯細菌病などの防除のため、塩水選を行った後に種子消毒を実施する。
◇薬剤を使用する場合の注意
 テクリードCフロアブル、スポルタックスターナSE等で消毒する。
 消毒後は種子を水洗いせずに12〜24時間陰干しする。
 種子消毒後の廃液は、川や池などに流さず、適切に処理する。
◇温湯消毒の場合の注意
・乾燥した種子または塩水選後1時間以内の吸水の進んでいない種子を使用する。
・60度の湯に10分間浸漬する。引き上げ後、直ちに流水中で冷やす。
・処理した種子は、できるだけ速やかに浸種し催芽を行うか、病原菌が付着しない条件下で風乾後、冷暗所に保管する。なお、保管期間はできるだけ短い方が望ましい。
【苗腐敗症】
◇出芽時の高温(30度を超える)や多湿は発病を助長するので適正に管理する。
【縞葉枯病】(ヒメトビウンカ)
     (近年、ウイルスを保毒したヒメトビウンカの発生がやや多い。)
◇縞葉枯病は、ヒメトビウンカにより媒介される。
◇育苗ほにヒメトビウンカが飛来しないように、周辺のイネ科雑草を除草する。

2 ぶどう(加温栽培)
【灰色かび病】
◇開花期〜幼果期に発生すると大きな被害になる。
◇巨峰などでは、花流れの原因となる場合がある。
◇施設を閉め切る時間が長いとハウス内の湿度が高くなり、発生しやすい。換気を適切に行って、湿度を下げるようにする。
◇加温機の送風だけを利用しても、病気の予防効果が期待できる。
◇開花期前後にマルチを設置することで、湿度を下げる。
(萌芽期や果実肥大期には湿度が必要なので、マルチは設置しない。)
◇開花後の花かすが発生源となることが多い。開花後には刷毛やブロワーで花かすを取り除く。
◇発生した場合は、ゲッター水和剤、スイッチ顆粒水和剤等を散布する。
◇暖房機ダクトが設置されている施設では、ボトキラー水和剤のダクト内投入による散布も効果的である。
【ハダニ類】
◇早期加温栽培で発生しやすい。
◇加温機の近く、ダクトの先端部など高温になりやすいところから発生するので、注意して観察する。
◇発生を確認した場合は、マイトコーネフロアブルやバロックフロアブルを散布する。
◇天敵(生物農薬)を放飼して、防除することもできる。
・スパイカルEX(ハダニを食べるミヤコカブリダニ)
【コガネムシ類】
◇萌芽期に食害を受けると被害が大きい。
◇発生を確認したら、ダントツ水溶剤、アディオン水和剤等を散布する。

3 みかん
【せん定作業】
◇せん定は3月下旬まで(萌芽期まで)に終了させる。極端な強せん定は樹勢を低下させるので、行わない。(せん定の際には、せん定前の70%以上の葉が残るようにする。)
◇大きな切り口には、トップジンMペースト等を塗布して保護する。
◇樹勢が著しく低下した樹は病害虫の発生源になりやすいので、伐採する。
◇枯死した枝も病害虫の発生源になりやすいので、切除する。
◇樹高を低くし、農薬散布等の管理をしやすくする。
◇樹と樹の間隔を広げ、日当たりと風通しをよくする。
◇樹の間隔は、人が楽に通行できる距離を目安にする。
【休眠期防除】
◇カイガラムシ類、ミカンサビダニ、ミカンハダニの越冬を減らす効果がある。
◇12月にマシン油剤を散布しなかった園では3月に97%製剤のマシン油剤を散布する。マシン油剤散布後、ボルドーを散布する場合は1ヶ月あける。

4 もも
【縮葉病】・【せん孔細菌病】(昨年はせん孔細菌病の発生がやや多かった。)
◇萌芽期前にICボルドー412を散布して、予防する。
◇開花期頃にチオノックフロアブル等を散布する。
◇開花後は薬害が発生するので、ICボルドー412は散布しない。

5 いちじく
【ネコブセンチュウ】
◇3月下旬にネマトリンエース粒剤を樹冠下処理する。
【霜対策】
◇霜害に遭い樹勢が低下すると、カミキリムシ類など病害虫の被害を受けやすい。
◇一文字整枝の場合、主枝が霜害を受けやすい。
◇霜除けは4月まで(晩霜が終わるまで)残しておく。

6 なす(施設栽培)
◇保温のため閉め切ることが多いが、施設内の湿度が高くなると病害が発生しやすい。適度に換気を行い、湿度を下げる。
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例
 アフェット(ペンチオピラド)、カンタス(ボスカリド)
【すすかび病】(巡回では平年同様、発生は見られなかった。)
◇発病した葉はできるだけ取り除き、ハウス外へ持ち出し処分する。
◇発生が予測される時期にベルクート水和剤、ダコニール1000を予防的に散布する。
◇発生が見られたらトリフミン乳剤、アフェットフロアブル等を散布する。
【灰色かび病】(巡回では発生は平年並であった。)
◇発病した葉や果実はできるだけ取り除き、ハウス外へ持ち出し処分する。
◇発生が予測される時期にボトキラー水和剤を予防的に散布する。
◇暖房機ダクトが設置されている施設では、ボトキラー水和剤のダクト内投入による散布も効果的である。
◇発生が見られたらセイビアーフロアブル20、カンタスドライフロアブル等を散布する。
【菌核病】
◇保温のため閉め切ることが多いが、適度に換気を行い、湿度を下げる。
◇発生が見られたらスミレックス水和剤等を散布する。
【アザミウマ類】(巡回では一部のハウスでやや多く見られたが、全般的には平年並の発生であった。)
◇一部でミナミキイロアザミウマなどの発生が確認されている。
◇気温が上がるにつれ、発生が増える。
◇発生が見られたら、アファーム乳剤、モベントフロアブル、プレオフロアブル(ミナミキイロアザミウマ)等を散布する。
◇アグリメックはアファーム乳剤と同じ系統の薬剤である。
◇施設栽培では、天敵(生物農薬)の利用も効果がある。
・スワルスキー、スワルスキープラス(アザミウマを食べるスワルスキーカブリダニ)
 活動可能温度:摂氏15〜35度
・パイレーツ粒剤(アザミウマ等に寄生するカビ)
 適温:摂氏20〜30度(生育温度 摂氏15〜35度)
・ボタニガードES(アザミウマ等に寄生するカビ)
 適温:摂氏18〜28度
【チャノホコリダニ】
◇定植時に苗と一緒に持ち込まれる場合があるので注意する。
◇体長0.2ミリと非常に微細なダニなので、肉眼による発見は難しい。
◇新梢の先端付近が集中的に被害をうけ、灰褐色に変色する。
◇多発すると果実に大きな被害が出るので注意が必要になる。
◇発生が見込まれる時期にカネマイトフロアブルやコテツフロアブル(劇)を散布する。
◇天敵(生物農薬)の利用も効果がある。
・スワルスキー、スワルスキープラス(スワルスキーカブリダニ)
 活動可能温度:摂氏15〜35度

7 なす(露地栽培)
【育苗期の管理】
◇育苗ハウス内で病害虫の発生がないか注意して観察し、初期防除を徹底する。
◇アザミウマ類、ハダニ類、チャノホコリダニなどの微小な害虫に特に注意する。
◇施肥、かん水を適切に行い、徒長苗にならないよう注意する。
【ほ場準備】
◇なす、トマト、じゃがいもなどのナス科野菜の連作は避ける。
◇青枯病、半身萎ちょう病などが発生したほ場への植え付けを避ける。
◇なす畑の周囲に牧草のソルゴーを植え付けることで、風の害を防ぐとともに、アブラムシ類やアザミウマ類の被害を軽減することができるので、ほ場面積に余裕がある場合は、ソルゴーを植えるスペース(ほ場周囲に幅1〜2m)を確保する。

8 トマト・ミニトマト(施設栽培)
◇施設内の湿度が高くなると病害が発生しやすい。適度に換気を行い、湿度を下げる。また、病害による被害葉は早めに除去し、ハウス外に持ち出して処分する。
◇トマトとミニトマトで農薬の登録内容が異なる場合があるので、農薬の使用時には注意する。
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例
 アフェット(ペンチオピラド)、カンタス(ボスカリド)、シグナム(成分の一つボスカリド)
・QoI剤の例
 シグナム(成分の一つピラクロストロビン)
【葉かび病】(巡回では発生は平年よりやや多かった。)
◇例年、この時期から発生が増える。
◇発生した場合は、トリフミン水和剤、カンタスドライフロアブル、アフェットフロアブル等を散布する。
◇多発する場合は、次作から葉かび病抵抗性品種を用いる。ただし、抵抗性品種でも葉かび病の系統によっては発病することがあるので注意する。
【すすかび病】
◇例年、この時期から発生が増える。
◇発生した場合は、トリフミン水和剤、シグナムWDG等を散布する。
◇ファンベル顆粒水和剤はトマトのみに適用があり、ミニトマトでは使用できない。
【灰色かび病】(巡回では発生は平年よりやや多かった。)
◇例年この時期から発生が増える。
◇葉の先端、開花後の花がら、ガク周辺から発生することが多いので、こまめに取り除く。
◇被害葉や果実は早めに除去し、ハウス外に持ち出して処分する。
◇発生した場合は、ゲッター水和剤、カンタスドライフロアブル等を散布する。
【トマト黄化葉巻病(TYLCV)】
◇感染してからは対策がないので、コナジラミ類の防除を徹底する。
◇感染株はすぐに処分する。感染株をビニル袋等に入れて口を縛り、完全に枯死させてから処分する。
【コナジラミ類】
◇タバココナジラミは、吸汁による直接被害のほかに、トマト黄化葉巻病(TYLCV)を媒介する。
◇施設では、開口部を寒冷紗(目合0.4ミリ)で被覆し、成虫の侵入を阻止する。
◇作業者が、コナジラミ類を付着させたまま、複数のハウスを移動しないよう注意する。
◇発生を確認した場合は、コルト顆粒水和剤、コロマイト乳剤、ベストガード水溶剤等を散布する。

9 たまねぎ
【べと病】・【白色疫病】
◇例年3〜5月に発生する。
◇温暖で雨が続くと発生しやすい。排水不良の畑で発生が多い。
◇発生が見込まれる時期にジマンダイセン水和剤かランマンフロアブルを予防的に散布する。
◇発生を認めたら、リドミルゴールドMZかホライズンドライフロアブルを散布する。
(注)リドミルゴールドMZ(3回)とジマンダイセン(5回)は、同一成分(マンゼブ)を含むため合計5回まで

10 あぶらな科野菜(かぶ、こまつな、しろな等)
【白さび病】
◇春期に雨が多いと発生が多い。
◇かぶ、しろな、こまつなでは、発生が見込まれる時期にランマンフロアブル等を散布する。
◇あぶらな科野菜は、農薬の適用作物名での分類(「かぶ」「こまつな」「だいこん」「キャベツ」「ブロッコリー」等)と大ぐくりなグループとしての分類(「非結球あぶらな科葉菜類」「なばな類」等)があり、それぞれの作物で農薬の登録内容が異なるので注意する。(農薬登録における適用作物名http://www.acis.famic.go.jp/shinsei/3986/3986beppyou1.pdf)
◇特に、「非結球あぶらな科葉菜類」「なばな類」などは、そのグループに含まれる作物名、品種名等が決まっており、類似の作物でも含まれない場合があるので注意が必要である。

8 その他(農薬の散布に適切な時間帯について)
【温度の注意点】
◇農薬散布は、風のない時間帯に行う。(薬液の乾く時間を考慮にいれる。)
◇高温条件での散布は薬害が発生することが多い。
◇防除衣(カッパ)を着て暑く感じない程度の気温がよい。
◇3月でも施設内は高温になることが多いので注意する。
【湿度の注意点】
◇基本的には夕方より朝方に散布する。
◇薬液が一晩中残ると薬害の原因にもなる。
◇灰色かび病やすすかび病など多くの病害は高湿度条件で発生しやすい。
◇午前中に散布すると、ハウスを閉める夕方には充分に薬液が乾くため、夜間の湿度上昇を抑えることができる。
【生菌を使った農薬】
◇微生物等の生菌を使った農薬は、散布後一定時間湿度が高い方が効果が高い。
◇下記の薬剤は、夕方に散布する方がよい  
・ボタニガードES、マイコタール、バータレック、バイオキーパー水和剤、ボトキラー水和剤

次の情報は、4月15日頃にお知らせします。

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