病害虫発生・防除メールサービス(5月)

(平成27年5月15日発信)


 大阪府内の5月の病害虫発生状況と今後1か月の防除対策についてお知らせします。
 気温も高くなってきました。農作業中の熱中症には気をつけてください。高温時の薬剤散布は薬害がでやすいので注意しましょう。
 今年は、例年より早い時期から台風が発生しています。台風の通過後には病害が広がることが多くあります。しっかりと観察して防除を行いましょう。薬剤散布は風がおさまってから行うようにしてください。
 農薬を使用する前には、農薬のラベル等で登録内容をよく確認してください。また病害虫防除グループホームページに掲載している防除指針もご参照ください。
 病害虫防除グループホームページhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/
 これまでもお知らせしてきたところですが、新たな農薬の評価手法(短期暴露評価※)が導入されることに伴い、次の農薬については、それぞれ使用制限となる登録変更(変更申請中のものを含む)が行われています。
 これらを成分に含む農薬は変更後の内容に従って使用してください。変更内容については、販売店で提供されるチラシ等や病害虫防除グループホームページ「短期暴露評価により変更される農薬の使用方法の周知等について」
http://www.jppn.ne.jp/osaka/H26nd/ARfDtuuti/ARfDH26_top.html で確認してください。
◇短期暴露評価が導入されることにより登録内容が変更になった農薬
 変更登録済みのもの:アセフェート(商品名オルトラン、ジェイエース等)、ジメトエート(商品名ジメトエート等)、フルバリネート(商品名マブリック等)、フェナリモル(商品名ルビゲン等)、NAC(商品名デナポン、ミクロデナポン) 
 変更登録申請中のもの:カルボスルファン(商品名アドバンテージ、ガゼット等)、ベンフラカルブ(商品名オンコル等)、シハロトリン(商品名サイハロン等)
※短期暴露評価:農薬の急性毒性の指標として、24時間又はそれより短い時間に経口摂取した場合に、健康に悪影響を示さないと推定される1日当たりの摂取量(=急性参照用量(ARfD))を用いた評価

1 水稲
【苗腐敗症】(昨年、もみ枯細菌病の発生はやや多かった。)
◇出芽時や育苗期間中の高温(30度を超える)や多湿は発病を助長するので適正に管理する。
◇発病苗は本田に持ち込まない。
【縞葉枯病】(ヒメトビウンカ)(ヒメトビウンカの発生はやや少なかったが、ウイルスを保毒したヒメトビウンカはやや多かった。)
◇縞葉枯病は、ヒメトビウンカにより媒介される。
◇ヒメトビウンカの密度を下げるため、耕起を早めに行うとともに畦畔の除草をする。
◇移植当日にプリンス粒剤やチェス粒剤、ブイゲットアドマイヤー粒剤等を、育苗箱施用する(移植当日までに使用できる農薬もある)。
【いもち病】(昨年、穂いもちの発生がやや多かった。)
◇低温や日照不足で発生しやすい。山間部などで、発生が多い。
◇密植や窒素肥料の多用は、発生を助長するので注意する。
◇補植用の苗が発生源になることが多いので、早めに処分する。
◇発生が予想される場合は、移植当日までにビームプリンス粒剤やオリゼメートプリンス粒剤等の箱施用剤を処理する。
【スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)】
◇水深4cm以下では自由に移動できないので、田植え後の浅水管理が有効である。
◇浅水管理がしやすいように、水田はなるべく均平にならす。
◇ピンク色の卵塊を発見した場合は、水中に掻き落とす。(卵は水中では生存できない。)
◇田植直後にスクミノン等を散布して、食害を防止する。
 スクミノン使用後は7日間湛水状態にし、かけ流しや落水はしない。
 水田以外(用水路等)には使用しない。
◇田植え後20日ほど経過し、葉が硬化すると食害を受けにくくなる。

2 ぶどう
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例 アフェット
・QoI剤の例  ストロビー、ホライズン(成分の一つファモキサドンが該当)
【灰色かび病】(巡回では発生は一部のほ場でやや多かったが、全般的には平年並であった。)
◇開花期〜幼果期に発生すると被害が大きい。
◇巨峰などでは、花流れの原因となる場合がある。
◇花かすが発生源となることが多いので、開花後に刷毛やブロワーで花かすを取り除く。
◇換気を適切に行って、湿度を下げるようにする。
◇発生が見られたら、スイッチ顆粒水和剤、ロブラール500アクア等を散布する。
【べと病】
◇気温20〜22度で、雨が多いと発生しやすい。
◇例年、梅雨時期に発生するので、梅雨前の予防が重要である。
◇ICボルドー66DやICボルドー48Q、ストロビードライフロアブル等を散布する。
(注)ジベレリン処理とボルドーの近接散布を避ける。
【クワゴマダラヒトリ】
◇体色は黒色で、長い毛に覆われた毛虫である。
◇萌芽期に食害を受けると、被害が大きいので、発見したら捕殺するとともにデルフィン顆粒水和剤等で防除する。

3 温州みかん
【そうか病】
◇昨年多発した園では、予防的にトップジンM水和剤等を散布する。

4 もも
【せん孔細菌病】(平年より、早くから発病が見られ、発生量もやや多かった。)
◇強風雨で発生が助長される。
◇発生が見込まれる時期にチオノックフロアブルを散布する。
◇発生を確認した場合はマイコシールド、スターナ水和剤等を散布する。
【アブラムシ類】
◇直接の吸汁害の他、ウイルス病を媒介することもあるので、防除が必要である。
◇発生を確認した場合はモスピラン顆粒水溶剤、アドマイヤー顆粒水和剤等で防除する。

5 いちじく
【イチジクヒトリモドキ】
◇葉や果皮を加害する黒い毛虫である。
◇蛹で越冬し、5月下旬〜6月上旬、第一世代の幼虫が現れる。
◇新梢生育期に食害を受けると被害が大きいので注意が必要である。
◇若齢幼虫は集団で加害するので、葉ごと処分する方法が効果的である。
◇発生を確認した場合は、アディオン乳剤、デルフィン顆粒水和剤等を散布する。

6 果樹類
【カメムシ類】(フェロモントラップでの発生量は平年よりやや多かった。)
◇果樹をよく加害するカメムシ類は、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシの3種である。
◇もも、うめ、かきなどを加害する。多発した場合は、みかんやぶどうを加害することもある。
◇果実袋を使用した場合でも、果実の肥大に伴って果実袋と果実が密着すると、袋の上から吸汁されることがある。
◇園全体を目合4mmのネットで覆い、侵入を防ぐ。
◇黄色灯を設置、点灯して園への侵入を防ぐ。(但し、チャバネアオカメムシには効果があるが、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシには効果がない。)
◇発生した場合は、もも、かき、かんきつの場合はアドマイヤー顆粒水和剤、アディオン乳剤、モスピラン顆粒水溶剤等を散布する。
◇作物毎に農薬登録が異なるので注意する。

7 なす(施設栽培)
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例 アフェット、カンタス
【すすかび病】(巡回では、発生はやや少なかった。)
◇下〜中位の葉に発生しやすい。被害葉は早めに除去し、ハウス外で処分する。
◇発生が予測される時期にベルクート水和剤等を予防的に散布する。
◇発生が見られたらトリフミン乳剤、カンタスドライフロアブル等を散布する。
【うどんこ病】(巡回では、発生は平年並であった。)
◇こまめに摘葉、摘芯を行い、過繁茂にならないようにする。
◇草勢が弱ると多発しやすいので、肥切れにならないように管理する。
◇発生初期に、トリフミン乳剤、アフェットフロアブル等をしっかり散布する。
【アザミウマ類】(巡回ではミナミキイロアザミウマの発生は平年並であった。)
◇発生が見られたらアファーム乳剤、モベントフロアブル、プレオフロアブル(対象:ミナミキイロアザミウマ)、ダントツ水溶剤(対象:ミナミキイロアザミウマ)等を散布する。
◇アグリメックはアファーム乳剤と同じ系統の薬剤であるため、続けての使用は避ける。

8 なす(露地栽培)
【アブラムシ類】
◇定植時に使用した粒剤の効果が切れる頃から増加し始める。
◇テントウムシや寄生蜂などの天敵による防除効果が期待できるので、天敵に影響が大きい薬剤の使用は控える。
◇発生量が多い場合は、モスピラン顆粒水溶剤やウララDF等を散布する。
【ハダニ類】
◇ピレスロイド系の薬剤を多用すると、天敵が減少し、ハダニ類が増えやすい。
◇発生が見られたらマイトコーネフロアブルやピラニカEW等を散布する。
◇使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。
◇購入苗の場合は、育苗期の農薬使用履歴もしっかり確認する。
【チャノホコリダニ】
◇微小な害虫で、被害が大きくなるまで発生に気づきにくい。
◇発生を認めたらコロマイト乳剤、ピラニカEW等を散布する。
【ソルゴ囲い込み栽培の注意点】
◇この時期はソルゴが小さく防風効果がないので、風が強い畑では防風網を設置する。
◇天敵類に影響が強いピレスロイド系薬剤を使用しない。

9 トマト・ミニトマト(施設栽培)
◇トマトとミニトマトで農薬の登録内容が異なる場合がある。農薬の使用時には、よく確認する。
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例 アフェット、カンタス、シグナム(成分の一つボスカリドが該当)
・QoI剤の例  アミスター、シグナム(成分の一つピラクロストロビンが該当)
【葉かび病】(巡回では発生は平年並であった)
◇発生が見られたら、トリフミン水和剤、シグナムWDG、アフェットフロアブル等を散布する。
◇トリフミン乳剤はトマトのみに適用があり、ミニトマトでは使用できない。
【ウイルス病】
◇府内でトマト黄化葉巻病(TYLCV)やトマト黄化えそ病(TSWV)等の発生が確認されている。
◇アブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類などがウイルスを媒介する。
◇罹病してからでは対策がないので、予防に努める。
◇媒介昆虫の防除を徹底する。
◇開口部に設置した寒冷紗なども、破れ等がないか点検する。
◇感染株は見つけ次第、株元から切り取り、ビニル袋等に入れて完全に枯死させる。
【コナジラミ類】
◇開口部に防虫網(目合0.4mm)を設置して侵入を防ぐ。
◇発生を確認した場合は、コルト顆粒水和剤、コロマイト乳剤、ベストガード水溶剤等を散布する。

10 きく
◇農薬の使用にあたっては、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・QoI剤の例  ストロビー
【黒斑病、褐斑病】
◇ダコニール1000、ストロビーフロアブル等を散布して予防する。
◇雨滴によって感染が拡大するので、晴れ間にしっかり防除する。
【白さび病】
◇ストロビーフロアブル、ステンレス等を散布し、予防に努める。
【ハモグリバエ類】
◇発生がみられたら、トリガード液剤(マメハモグリバエのみ)、スピノエース顆粒水和剤等を散布する。
【アザミウマ類】
◇発生源となる周辺の除草を行う。
◇発生を確認したらディアナSC、ハチハチ乳剤等を散布する。
【アブラムシ類】
◇吸汁による直接被害の他、ウイルスを媒介することもある。
◇発生を確認したらアドマイヤーフロアブル、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤等を散布する。
(注)スタークルとアルバリンは、同一成分を含むため合計の使用回数は5回まで。

11 野菜類・花き類
【オオタバコガ】(フェロモントラップの誘殺虫数は、例年より早くやや多かった。)
◇1頭の幼虫が数個の果実を食害するので、1頭あたりの被害が大きい。
◇被害を受けた果実は、果実内に幼虫が入っている可能性が高いので、早めに処分する。
◇老齢幼虫は薬剤が効きにくく、また果実内にいるため薬剤もかかりにくい。
◇発生を確認した場合は、スピノエース顆粒水和剤(なす、トマト、きく)、プレオフロアブル(なす、トマト、花き類)等で防除する。
◇黄色灯を終夜点灯することで成虫の飛来を抑制できる。(文末参照)

12 黄色灯によるヤガ類、チャバネアオカメムシの防除
[対象害虫]
◇もも、みかんの果実を吸汁するアカエグリバ等の吸汁ヤガ類、チャバネアオカメムシ。
◇野菜・花き類を食害するハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、オオタバコガ等。
◇成虫の飛来を抑制するもので、幼虫に対して防除効果はない。
◇もも、みかんの果実を吸汁するクサギカメムシ、ツヤアオカメムシに対して防除効果はない。
[設置方法]
◇ほ場内の照度が1ルクス以上になるように、設置する。
◇ほ場の上方や外側にも光が行き届く方が効果が高い。
◇日没1時間前から、日の出1時間後まで点灯すると効果が高い。
◇水稲やきくは夜間に強い光を受けると開花しない。周辺にこのような作物がある場合は黄色灯の設置方向に注意すること。

 次の情報は、6月16日頃にお知らせします。

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