病害虫発生・防除メールサービス(7月)

(平成27年7月14日発信)


 大阪府内の7月の病害虫発生状況と今後1か月の防除対策についてお知らせします。
 蒸し暑い日が続く時期です。作業時に熱中症にならないよう十分ご注意下さい。
 例年、梅雨明け後からハダニ類などの害虫が増加しますので注意しましょう。
 高温時の薬剤散布は薬害を起こしやすいので、散布は涼しい時間帯に行ってください。
 夏休みに入るとほ場周辺で遊ぶ子供も増えますので、農薬(薬剤)のドリフトには、いつも以上に気をつけましょう。
 農薬使用の際は、病害虫防除グループホームページに掲載している防除指針もご参照ください。(病害虫防除グループホームページhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/)
 これまでもお知らせしてきたところですが、新たな農薬の評価手法(短期暴露評価※)が導入されることに伴い、次の農薬については、それぞれ使用制限となる登録変更(変更申請中のものを含む)が行われています。
 これらを成分に含む農薬は変更後の内容に従って使用してください。変更内容については、販売店で提供されるチラシ等や病害虫防除グループホームページ「短期暴露評価により変更される農薬の使用方法の周知等について」
http://www.jppn.ne.jp/osaka/H27nd/ARfDtuuti/ARfDH27_top.html で確認してください。
◇短期暴露評価が導入されることにより登録内容が変更済み、もしくは変更予定の農薬
 変更登録済みのもの:アセフェート(商品名オルトラン、ジェイエース等)、ジメトエート(商品名ジメトエート等)、フルバリネート(商品名マブリック等)、フェナリモル(商品名ルビゲン等)、NAC(商品名デナポン、ミクロデナポン)、カルボスルファン(商品名アドバンテージ、ガゼット等)、ベンフラカルブ(商品名オンコル等) 
 変更登録申請中のもの:シハロトリン(商品名サイハロン等)
※短期暴露評価:農薬の急性毒性の指標として、24時間又はそれより短い時間に経口摂取した場合に、健康に悪影響を示さないと推定される1日当たりの摂取量(=急性参照用量(ARfD))を用いた評価

1 水稲
【いもち病】(昨年、穂いもちの発生がやや多かった。また、今年は山間部等で葉いもちの発生が見られており、平坦部の置き苗でも発生を確認した。)
◇低温や日照不足で発生しやすい。山間部等で、発生が多い。
◇密植や窒素肥料の多用は、発生を助長するので注意する。
◇平坦部でも補植用の置き苗でいもち病の発生が確認されているので、早めに処分する。
◇発生が見られたら、ブラシンフロアブル等を散布する。
◇近隣府県においてQoI剤耐性菌の発生が報告されている。QoI剤(アミスター、イモチエース、オリブライト、嵐等)の使用は1作1回に留める。
【縞葉枯病】(ヒメトビウンカ)(ヒメトビウンカの発生は平年並であった。ウイルスを保毒したヒメトビウンカが確認された(保毒虫率6.4%)。)
◇ヒメトビウンカによって媒介されるウイルス病である。
◇生育初期に発病すると、葉がこより状に巻いて垂れ下がり(ゆうれい症状)、その後枯死する。
◇生育後期の発病では、新葉の葉脈に沿って、健全部との境界がぼんやりとした黄緑色または黄白色の縞が現れる。分げつ数も少なく、穂が出すくんだり、稔りが悪くなる。
◇ヒメトビウンカの防除を徹底する(【ウンカ類】を参照)。
【もみ枯細菌病】
◇出穂時に高温多湿になると発生しやすい。
◇出穂直前〜穂ぞろい期にブラシンフロアブル等を散布する。
◇前年に発生した水田では、オリゼメート粒剤(出穂3〜4週間前)等を予防散布する。
【内えい褐変病】(昨年、発生はやや多かった。)
◇出穂時に高温多湿になると発生しやすい。特に台風に注意する。
◇前年に発生した水田では、穂ばらみ期にブラシンフロアブル等を散布する。
◇出穂前と出穂後の1回ずつ薬剤散布する方が効果が高い。
【イネアオムシ(フタオビコヤガ)】
◇体色が葉色に似ているため発見しにくいが、注意深く観察し、発生初期の防除を徹底する。
◇発生が多い場合には、パダン粒剤4、エルサン乳剤等で防除する。
【斑点米カメムシ類】
◇畦畔にイネ科雑草が多いと発生しやすい。
◇畦畔や休耕田などの除草を徹底し、生息場所を減らす。
◇除草は出穂2週間前までに行い、出穂前後の除草はカメムシ類を水田に追い込むことになるので実施しない。
◇薬剤防除は、出穂期にスタークル粒剤、アルバリン粒剤、キラップ粒剤等を散布する。
(注)スタークルとアルバリンを含む剤は、同一成分を含むため、本田での散布は合計3回まで。
【ウンカ類】(巡回では発生は平年並であった。)
◇発生を確認した場合はスタークル粒剤、アルバリン粒剤、キラップ粒剤等で防除する。
(注)スタークルとアルバリンを含む剤は、同一成分を含むため、本田での散布は合計3回まで。
【コブノメイガ】(巡回では一部のほ場で平年より早くから発生が見られた。)
◇上位葉を中心に密植や葉色の濃い株に発生が見られる。
◇多発生が予想される場合はパダン粒剤4、トレボン粉剤DL等で防除する。

2 ぶどう
◇農薬の使用にあたっては、SDHI剤、QoI剤、CAA系薬剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例 アフェット
・QoI剤の例  ストロビー、ファンタジスタ、ホライズン(成分の一つファモキサドンが該当)
・CAA系薬剤  レーバス、ベトファイター(成分の一つベンチアバリカルブイソプロピルが該当)
【べと病】(巡回では発生が多かった。)
◇気温20〜22度とやや低温で、雨が多いと発生しやすい。
◇例年、梅雨時期に発生するので、梅雨の晴れ間にしっかり防除する。
◇梅雨明けが遅れるとまん延しやすい。今後の天候に注意する。
◇多発して落葉すると樹勢が低下し次年度にも影響するので、収穫が終わった園もしっかり防除する。
◇ICボルドー66DやICボルドー48Q等を予防的に散布する。
◇発生が見込まれる時期に、ランマンフロアブル等を散布する。
◇発生を確認した場合は、ストロビードライフロアブル、レーバスフロアブル等を散布する。
◇収穫前日数に注意し、収穫期間近の場合は、収穫終了後に散布する。
【褐斑病】 (巡回では発生は一部のほ場で多かったが、全般的には平年並であった。)
◇秋期落葉期まで発生し、落葉を早めるので注意する。
◇多発して落葉すると樹勢が低下し、次年度にも影響する。
◇発生を確認した場合は、ストロビードライフロアブル、オンリーワンフロアブル等を散布する。また、収穫終了後もジマンダイセン水和剤等でしっかり防除する。
【晩腐病】
◇収穫期が近づき、糖度が高くなった果実で発生しやすい。
◇収穫期に雨が続くと、多発する。
◇気温20〜25度で、雨が多いと発生しやすい。
◇鳥獣害や裂果等で傷ついた果房から発生することが多い。
◇被害果房は園外に持ち出して処分する。
【ハダニ類】(巡回では施設栽培での発生がやや多かった。)
◇施設栽培で発生しやすい。
◇合成ピレスロイド系の薬剤を多用すると発生が多い。
◇多発し早期に落葉すると、着色障害など果実品質に影響する。
◇除草を行うと、雑草にいたハダニ類がぶどうに移動して、急に被害が増えることがある。
◇収穫が終わった園も定期的に見回って、発生を確認したら防除する。
◇発生を確認した場合は、バロックフロアブル(7日前まで)、コロマイト水和剤(7日前まで)等を散布する。収穫前日数に注意すること。

3 温州みかん
【そうか病】(巡回では発生はやや少なかった。)
◇長雨が続くと発生しやすい。
◇発生を確認した場合は、トップジンM水和剤、デランフロアブル等で防除する。
【黒点病】(巡回では発生は平年並であった。)
◇雨によって広がるので、注意が必要である。
◇発生を確認した場合は、ジマンダイセン水和剤(30日前まで)等で防除する。
(注意)ジマンダイセン水和剤は、かんきつ(みかんを除く)では収穫90日前まで
【ミカンハダニ】(巡回では、発生は一部のほ場でやや多かったが、全般的には平年並であった。)
◇例年、梅雨明け後に多発する。
◇発生を確認した場合は、コロマイト水和剤、マイトコーネフロアブル等を散布する。
◇同一系統薬剤を連用すると抵抗性が発達しやすい。
◇ダニトロンフロアブル、ピラニカ水和剤、サンマイト水和剤、マイトクリーンは同一系統薬剤で交差抵抗性があるため、これらの薬剤の連用を避ける。
◇使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。
◇薬害発生の恐れがあるので、高温時の散布は避ける。

4 もも
【せん孔細菌病】(巡回では発生は平年並であった。)
◇強風雨で発生が助長される。
◇発病した枝、葉、果実は伝染源となるので、直ちにほ場外へ持ち出して処分する。
◇発生初期にはチオノックフロアブル(7日前)、スターナ水和剤(7日前)を散布する。
◇収穫前日数に注意し、収穫期間近の場合は、収穫終了後に防除する。
◇風当たりの強いほ場では、防風ネット等の設置を行う。
【吸汁ヤガ類】
◇夜になると果樹園に飛来して、果実を吸汁するガの総称である。
◇果実袋の上から吸汁することもあるので注意が必要である。
◇収穫間際に飛来する害虫なので、薬剤による防除は難しい。
◇黄色灯を終夜点灯することで成虫の飛来を抑制できる。(文末「11 黄色灯によるヤガ類、チャバネアオカメムシの防除」参照)

5 いちじく
【疫病】
◇雨が続くと発生しやすい。
◇雨水の跳ね上がりなどで伝染するので、敷きわらやマルチを行う。
◇腐敗果は早めに園外に持ち出して、処分する。
◇ランマンフロアブル等を散布して防除する。
【アザミウマ類】(発生は平年並であった。)
◇果実開口部から内部へ侵入し加害する。果実が腐敗するなどの被害を受ける。
◇発生を確認した場合はスピノエース顆粒水和剤、アディオン乳剤等で防除する。なお、収穫期が近づいており、一部の薬剤は使えないので注意する。

6 果樹類
【果樹カメムシ類】(フェロモントラップの誘殺数は一部の地域でやや多かった。)
◇果樹をよく加害するカメムシ類は、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシの3種である。
◇もも、かきなどの果樹類を加害する。多発生した場合は、みかんやぶどうを加害することもある。
◇果実袋を使用した場合でも、果実の肥大に伴って果実袋と果実が密着すると、袋の上から吸汁されることもある。
◇発生した場合は、もも、かき、かんきつの場合はスタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤、アディオン乳剤等を散布する。
(注)スタークルとアルバリンは、同一成分を含むため散布は合計3回まで(もも、かき、かんきつ)。
◇成虫の移動能力は高く、次々と飛来するため、こまめな防除が必要となる。
◇収穫期近くでも防除が必要となるため、薬剤散布に当たっては、収穫前日数や使用回数に十分注意する。
◇園全体を目合4mmのネットで覆い、侵入を防ぐ。
◇チャバネアオカメムシは黄色灯を終夜点灯することで成虫の飛来を抑制できる。(但し、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシには効果がない。)。(文末「11 黄色灯によるヤガ類、チャバネアオカメムシの防除」参照)

7 なす(露地栽培)
◇農薬の使用にあたっては、QoI剤、SDHI剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避け、1作1回程度の使用に留める。
・QoI剤の例 アミスター、ストロビー、シグナム(成分の一つピラクロストロビンが該当)
・SDHI剤の例 アフェット、カンタス、シグナム(成分の一つボスカリドが該当)
【うどんこ病】(巡回では発生は、施設栽培の一部でやや多かった。)
◇うどんこ病は、日照不足、乾燥条件下で多発する。
◇こまめに摘葉、摘芯を行い、過繁茂にならないようにする。
◇草勢が弱ると多発しやすいので、肥切れにならないように管理する。
◇発生初期に、パンチョTF顆粒水和剤、モレスタン水和剤等を丁寧に散布する。
(注)モレスタン水和剤は、高温時には薬害が発生しやすいので注意する。
【褐紋病】(巡回では発生は平年並であった。)
◇発病した葉や果実、枝は直ちにほ場外へ持ち出して処分する。
◇種子伝染するので、自家採種を行う場合は健全果から採種する。
【ハダニ類】
◇発生初期の防除効果が高いので、発見後早めにコロマイト乳剤やピラニカEW等を散布する。
◇使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。
【チャノホコリダニ】
◇微小な害虫で、被害が大きくなるまで発生に気づきにくい。
◇がく片が褐変するなどの被害が発生したら、コロマイト乳剤、ピラニカEW等を散布する。
◇使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。
【アザミウマ類】(巡回ではミナミキイロアザミウマの発生は平年並であった。)
◇巡回調査ではミナミキイロアザミウマの他、ミカンキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマが見られる。
◇発生が見られたら、アファーム乳剤、モベントフロアブル、プレオフロアブル(ミナミキイロアザミウマのみ)等を散布する。
◇薬剤散布にあたっては、使用履歴を確認し、使用回数制限に気をつける。
【ソルゴー囲い込み栽培の注意点】
◇アザミウマ類の天敵であるハナカメムシ類が発生する。
 害虫防除には、天敵に影響の少ない薬剤(プレオフロアブル、BT剤等)を利用する。
◇サンクリスタル乳剤等は、ハダニ類等の天敵であるカブリダニ類に影響が少ない。
◇天敵類に影響が強いピレスロイド系薬剤、ネオニコチノイド系薬剤を使用しない。

8 キャベツ等あぶらな科野菜
(作物によって農薬の登録内容が異なるので、注意する。)
【根こぶ病】
◇根こぶ病の発生したほ場での育苗・栽培を避ける。
◇土壌pHを6.5〜7.0に調整する。
【ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイ)】
◇8月に発生が急激に増加することがある。
◇キャベツのは種・育苗期に当たるが、セル成型苗では発生すると欠株を生じるので、発生初期に防除を徹底する。
◇被覆資材によるべたがけ、トンネルがけの防除効果は高い。
◇セル成型育苗トレイにプレバソンフロアブル5(キャベツ、はくさい)、ジュリボフロアブル(キャベツ、はくさい、ブロッコリー)等をかん注するか、プリンス粒剤(キャベツ、ブロッコリー)等を施用する。
◇発生初期にスピノエース顆粒水和剤(キャベツ、はくさい等)等を散布する。

9 きく
【黒斑病、褐斑病】(巡回では発生はやや少なかった。)
◇品種により発生に差があるので、注意が必要である。
◇被害葉は取り除いて処分する。
◇雨滴によって感染が拡大するので、降雨前にしっかり防除する。
◇ダコニール1000等を散布して予防する。
【白さび病】(巡回では発生は平年並であった。)
◇品種により発生に差があるので、注意が必要である。
◇被害葉は取り除いて処分する。
◇ストロビーフロアブル、ステンレス等を散布し、予防に努める
◇ストロビーフロアブルは他剤との混用は薬害を生じる場合があるので注意する。
【ハモグリバエ類】
◇被害葉は取り除いて処分する。
◇発生がみられたら、トリガード液剤(マメハモグリバエ)、スピノエース顆粒水和剤等を散布する。
【アザミウマ類】
◇品種により、被害の現れ方に差がある。
◇発生源となる周辺の除草を行う。
◇発生を確認したらディアナSC、ハチハチ乳剤等を散布する。
【アブラムシ類】(巡回では発生は平年並であった。)
◇吸汁による直接被害の他、ウイルス病を媒介することもある。
◇発生を確認したらアドマイヤーフロアブル、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤等を散布する。
(注)スタークルとアルバリンは、同一成分を含むため使用は合計5回まで。

10 野菜類・花き類
【オオタバコガ】(フェロモントラップの誘殺虫数はやや多かった。)
◇1頭の幼虫が数個の果実や蕾、新芽を食害するので、1頭あたりの被害が大きい。
◇被害を受けた果実は、果実内に幼虫が入っている可能性が高いので、被害果はほ場外へ持ち出し処分する。
◇老齢幼虫は薬剤が効きにくく、また果実内にいるため薬剤もかかりにくい。
◇発生を確認した場合は、スピノエース顆粒水和剤(なす、トマト、きく)、プレオフロアブル(なす、トマト、花き類)等で防除する。
◇園全体を防除網(目合い4mm)を設置して侵入を防ぐ。
◇黄色灯を終夜点灯することで成虫の飛来を抑制できる。(文末「11 黄色灯によるヤガ類、チャバネアオカメムシの防除」参照)

11 黄色灯によるヤガ類、チャバネアオカメムシの防除
[対象害虫]
◇もも、みかんの果実を吸汁するアカエグリバ等の吸汁ヤガ類、チャバネアオカメムシ。
◇野菜・花き類を食害するハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、オオタバコガ等。
◇成虫の飛来を抑制するもので、幼虫に対して防除効果はない。
◇もも、みかんの果実を吸汁するクサギカメムシ、ツヤアオカメムシに対して防除効果はない。
[設置方法]
◇ほ場内の照度が1ルクス以上になるように、設置する。
◇ほ場の上方や外側にも光が行き届く方が効果が高い。
◇日没1時間前から、日の出1時間後まで点灯すると効果が高い。
◇水稲やきくは夜間に強い光を受けると開花しない。周辺にこのような作物がある場合は黄色灯の設置方向に注意すること。

 次の情報は、8月17日頃にお知らせします。

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