病害虫発生・防除メールサービス(9月)

(平成27年9月15日発信)


 大阪府内の9月の病害虫発生状況と今後1か月の防除対策についてお知らせします。
 台風の季節になりました。また8月12日頃から気温が低く日照時間の少ない状態が続いています(大阪管区気象台発表http://www.jma.go.jp/jp/kishojoho/331_05_772_20150914061033.html)。台風による風雨だけでなく、低温や日照不足、長雨によっても農作物に病害が発生することがあります。農作物の栽培管理には十分注意し、必要に応じて薬剤散布等の防除を行いましょう。薬剤散布の際は、周辺へ薬剤が飛散することがないよう十分注意してください。
 農薬使用の際は、病害虫防除グループホームページに掲載している防除指針もご参照ください。(病害虫防除グループホームページhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/)
 これまでもお知らせしてきたところですが、新たな農薬の評価手法(短期暴露評価※)が導入されることに伴い、次の農薬は、使用制限となる登録変更(変更申請中のものを含む)が行われています。
 これらを成分に含む農薬は変更後の内容に従って使用してください。変更内容については、販売店で提供されるチラシ等や病害虫防除グループホームページ「短期暴露評価により変更される農薬の使用方法の周知等について」
http://www.jppn.ne.jp/osaka/H27nd/ARfDtuuti/ARfDH27_top.html で確認してください。
◇短期暴露評価が導入されることにより登録内容が変更済み、もしくは変更予定の農薬
 変更登録済みのもの:アセフェート(商品名オルトラン、ジェイエース等)、ジメトエート(商品名ジメトエート等)、フルバリネート(商品名マブリック等)、フェナリモル(商品名ルビゲン等)、NAC(商品名デナポン、ミクロデナポン)、カルボスルファン(商品名アドバンテージ、ガゼット等)、ベンフラカルブ(商品名オンコル等) 
 変更登録申請中のもの:シハロトリン(商品名サイハロン等)、メタフルミゾン(商品名アクセル)、ピリダベン(商品名サンマイト)
※短期暴露評価:農薬の急性毒性の指標として、24時間又はそれより短い時間に経口摂取した場合に、健康に悪影響を示さないと推定される1日当たりの摂取量(=急性参照用量(ARfD))を用いた評価

1 水稲
【いもち病(穂いもち)】(巡回では中山間部と平坦部の一部において穂いもちの発生が見られ、発生量はやや多かった。大阪府では8月中旬以降気温が低く、曇りや雨の日が多く、いもち病の発生しやすい気象条件が続いている。8月20日防除情報発表。)
◇低温や日照不足で発生しやすい。中山間部で発生しやすいが、近年平坦部での発生も見られる。
◇密植や窒素肥料が多い水田では、発生しやすい。
◇発生が見られたら、ブラシンフロアブル(収穫7日前まで)等で防除を徹底する。
◇近隣府県においてQoI剤耐性菌の発生が報告されている。QoI剤の使用は1作1回に留める。
 QoI剤の例 アミスター、イモチエース、オリブライト、嵐
【もみ枯細菌病】
◇今年もみ枯細菌病が発生した水田からの採種は避ける。
◇発病ほ場の稲わらやもみ殻は直接水田に還元せず、堆肥化など病原菌密度を減らしてから利用する。
【内えい褐変病】(巡回では発生はやや多かった。)
◇発病ほ場の稲わらや不稔もみは、堆肥化してから利用する。
【ウンカ類】(ヒメトビウンカ、セジロウンカの発生は巡回ではやや少なかった。)
◇発生を確認した場合は、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤(収穫7日前まで)等で防除する。
(注)スタークルとアルバリンは、同一成分を含むため、本田での使用は合計3回まで。
【斑点米カメムシ類】(予察灯への飛来量は平年並。ホソハリカメムシ、アカスジカスミカメ、イネホソミドリカスミカメ等が見られた。)
◇出穂後の畦畔の除草は、カメムシ類を水田に追い込むため実施しない。
◇発生を確認した場合は、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤(収穫7日前まで)等で防除する。
(注)スタークルとアルバリンを含む剤は、同一成分を含むため、本田での散布は合計3回まで。
◇カメムシ類は、日中はあまり活動しないため、薬剤散布は夕方か早朝に行う。
【コブノメイガ】(発生は平年並であった。)
◇発生を確認した場合は、トレボン乳剤(収穫14日前まで)等で防除する。
◇羽化後2週間程度すると被害が目立つようになる。
【ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)】
◇次年度の発生を減らすため、ピンク色の卵塊を発見した場合は、水中に掻き落とす。
(卵は水中では生存できない)

2 ぶどう
◇農薬の使用にあたっては、SDHI剤、QoI剤、CAA系薬剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例 アフェット
・QoI剤の例  ストロビー、ファンタジスタ、ホライズン(成分の一つファモキサドンが該当)
・CAA系薬剤  レーバス、ベトファイター(成分の一つベンチアバリカルブイソプロピルが該当)
【べと病】(巡回では発生はやや多かった。7月15日病害虫発生予察注意報第1号発表)
◇秋口になって気温が下がり、雨が多いと再び発生する。
◇多発して落葉すると樹勢が低下し、次年度にも影響するので、収穫が終わった園もしっかり防除する。
◇発生が予測される時期に、ボルドー液などを散布し予防する。
◇収穫前日数に注意し、収穫期間近の場合は、収穫終了後に散布する。
【褐斑病】 (巡回では発生はやや多かった。)
◇秋期落葉期まで発生し、落葉を早めるので注意する。
◇多発して落葉すると樹勢が低下し、次年度にも影響する。
◇発生を確認した場合は、収穫終了後にジマンダイセン水和剤等でしっかり防除する。
【ブドウトラカミキリ】
◇成虫発生時期は8月中旬〜10月上旬である。
◇収穫終了後秋期に、モスピラン顆粒水溶剤等を散布して防除する。

3 温州みかん
【そうか病】(巡回では発生は平年並であった。)
◇長雨が続くと発生しやすい。
◇発生を確認した場合は、ゲッター水和剤(収穫7日前まで)等で防除する。
(注意)ゲッター水和剤は、かんきつ(みかんを除く)では収穫21日前まで
【黒点病】
◇雨によって広がるので、注意が必要である。
◇発生を確認した場合は、ジマンダイセン水和剤(30日前まで)等で防除する。
(注意)ジマンダイセン水和剤は、かんきつ(みかんを除く)では収穫90日前まで
【ミカンハダニ】(巡回では発生は平年並であった。)
◇秋に温暖で雨が少ないと発生が多くなる。
◇発生を確認した場合は、ダニエモンフロアブル、コロマイト水和剤、マイトコーネフロアブル等で防除する。
◇同一系統の薬剤を連用すると、抵抗性が発達する恐れがある。
◇ダニトロンフロアブル、ピラニカ水和剤、サンマイト水和剤、マイトクリーンは交差抵抗性があるため、これらの薬剤の連用を避ける。
◇農薬使用基準の使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳し、確認する。
【ミカンサビダニ】(巡回では、発生は平年並であった。)
◇被害果(通称:ちゃんぶくろ)が数多く確認されてからの防除では充分な効果が得にくい。
◇マイトコーネフロアブル、コロマイト水和剤、ダニエモンフロアブル等で防除する。

4 いちじく
【疫病】
◇雨が続くと発生しやすい。
◇雨水の跳ね上がりなどで伝染するので、敷きわらやマルチを行う。
◇腐敗果は早めに園外に持ち出して、処分する。
◇ランマンフロアブル等を散布して防除する。

5 もも
【せん孔細菌病】(今年はせん孔細菌病の発生がやや多かった。)
◇病原菌は葉、枝の開口部(気孔、水孔等)や傷口から侵入する。台風などの強風雨では感染が多くなる。
◇防風ネット等の対策を行うとともに、近年発生の多い園では越冬伝染源量を減らすため、秋の薬剤防除を必ず行う。
◇9〜10月にICボルドー412等で防除を行う。

6 なす
◇農薬の使用にあたっては、QoI剤、SDHI剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避け、1作1回程度の使用に留める。
・QoI剤の例 アミスター、ストロビー、シグナム(成分の一つピラクロストロビンが該当)
・SDHI剤の例 アフェット、カンタス、シグナム(成分の一つボスカリドが該当)
【うどんこ病】(巡回では発生は平年並からやや多かった。)
◇日照不足、乾燥条件下で多発する。
◇こまめに摘葉、摘芯を行い、過繁茂にならないようにする。
◇草勢が弱ると多発しやすいので、肥切れにならないように管理する。
◇発生初期に、トリフミン乳剤、ラリー水和剤等を丁寧に散布する。
【褐紋病】(巡回では水なすほ場で発生はやや多かった。)
◇発病した葉や果実、枝は直ちにほ場外へ持ち出して処分する。
◇種子伝染するので、自家採種を行う場合は健全果から採種する。
【褐色腐敗病】
◇発病した枝や果実は、直ちにほ場外へ持ち出して処分する。
◇初期防除が重要なので、発病を認めた場合にはすぐに防除を行う。
◇降雨による泥のはね上がりを防止するために、マルチや敷きわらを行う。
◇発生が見込まれる時期に、ランマンフロアブル等で予防する。
◇発生した場合は、ホライズンドライフロアブル等で防除する。
◇輸送中にも発病するので、選果・箱詰めは病果に注意して行う。
【アザミウマ類】(巡回ではミナミキイロアザミウマの発生はやや少なかった。)
◇巡回調査ではミナミキイロアザミウマの他、ミカンキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマが見られる。
◇発生が見られたら、アファーム乳剤、モベントフロアブル、プレオフロアブル(ミナミキイロアザミウマのみ)等を散布する。
◇薬剤散布にあたっては、使用履歴を確認し、使用回数制限に気をつける。
【ハダニ類】
◇発生初期の防除効果が高いので、発見後早めにコロマイト乳剤やスターマイトフロアブル等を散布する。
◇使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。
【チャノホコリダニ】
◇微小な害虫で、被害が大きくなるまで発生に気づきにくい。
◇がく片が褐変するなどの被害が発生したら、コロマイト乳剤、スターマイトフロアブル等を散布する。
◇使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。

7 トマト・ミニトマト(施設栽培)
◇トマトとミニトマトで登録内容が異なる場合があるので、農薬の使用時には注意する。
【トマト黄化葉巻病(TYLCV)】
◇感染してからは対策がないので、ウイルスを媒介するコナジラミ類の防除を徹底する。
◇ほ場周辺に、こぼれ種から発芽したり、残さから再生したトマトがあれば、処分する。
◇開口部に防虫網(目合0.4mm)を設置し、日頃から破れ等がないか点検する。
◇感染株は、直ちにビニル袋等に入れて口を縛り、完全に枯死させてから処分する。
【コナジラミ類】
◇タバココナジラミは、吸汁による直接被害のほかに、トマト黄化葉巻病(TYLCV)を媒介する。
◇開口部に防虫網(目合0.4mm)を設置して侵入を防ぐ。
◇発生を確認した場合は、コルト顆粒水和剤(トマト、ミニトマト)、コロマイト乳剤(トマト、ミニトマト)等を散布する。

8 きゅうり
◇農薬の使用にあたっては、QoI剤、SDHI剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避け、1作1回程度の使用に留める。
・QoI剤の例 アミスター、ストロビー、フリント、ホライズン(成分の一つファモキサドンが該当)
・SDHI剤の例 アフェット
【うどんこ病】(巡回では発生は平年よりやや多かった。)
◇草勢が弱ると多発しやすいので、肥切れにならないように管理する。
◇日照不足、乾燥条件下で多発する。
◇こまめに摘葉を行い、過繁茂にならないようにする。
◇発生が見込まれる時期にベルクート水和剤、フルピカフロアブル等を予防散布する。
◇発生した場合は、トリフミン乳剤、ガッテン乳剤等で防除する。
【べと病】(巡回では発生は平年よりやや多かった。)
◇台風のあと発生することが多い。
◇ハウス内が多湿になると発生しやすいので、排水、換気に注意する。
◇肥切れになると発生しやすいので、追肥をこまめに行う。
◇発生が見込まれる時期にジマンダイセン水和剤やランマンフロアブル等で予防する。
◇発生を確認した場合は、リドミルゴールドMZやホライズンドライフロアブル等を散布する。
※ジマンダイセン水和剤、リドミルゴールドMZは同一成分を含むため合計3回まで。
【褐斑病】(巡回では平年により発生はやや多かった。)
◇過湿条件で発生しやすいので、ハウス内の過湿を避ける。
◇窒素過多は発生を助長するので、窒素肥料のやりすぎに注意する。
◇べと病や炭そ病に似た病斑を形成するので、正確に診断し、薬剤を選択する。
◇発生が見込まれる時期にジマンダイセン水和剤やベルクート水和剤で予防する。
【ワタヘリクロノメイガ(ウリノメイガ)】
◇ハウス抑制栽培の生育初期に発生が認められることが多い。
◇ハウスの開口部を寒冷紗(目合2mm)等で被覆し、成虫の侵入を防止する。
◇生長点および脇芽の先端を食害するので、幼虫を捕殺する。
◇発生初期にゼンターリ顆粒水和剤、アファーム乳剤等を散布して防除する。

9 キャベツ等あぶらな科野菜
(作物によって農薬の登録内容が異なるので、注意する。)
【根こぶ病】
◇あぶらな科野菜の連作を避ける。
◇定植時に温度が高いと発生しやすいので、早植えを避ける。
◇土壌pHが低いと発生しやすい。石灰質資材等を施用して、pH6.5〜7に調整する。
◇排水不良のほ場で発生しやすいため、排水を良好にし、過湿を避ける。
◇発生が予測される畑では、キャベツ、はくさい、ブロッコリーでは、定植前に、ネビジン粉剤やオラクル粉剤を土壌混和する。
【ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイ)】
◇育苗時期から発生が見られるので、苗床も含め、発生に注意し、初期の防除を徹底する。
◇被覆資材によるべたがけ、トンネルがけの防除効果は高い。
◇セル成型育苗トレイにプレバソンフロアブル5(キャベツ、はくさい)、ジュリボフロアブル(キャベツ、はくさい、ブロッコリー)等をかん注するか、プリンス粒剤(キャベツ、ブロッコリー)等を施用する。
◇発生初期にスピノエース顆粒水和剤(キャベツ、はくさい等)等を散布する。
【ハスモンヨトウ】(近年発生はやや多い。今年のフェロモントラップの誘殺虫数は平年並であった。トラップの誘殺状況についてはhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/H27nd/trap_deta/pheromone_trap/hasumon/hasumon_trapH27.htmlを参照。)
◇200個程度の卵塊で産卵し、若齢幼虫は集団で食害する。中齢幼虫になると分散する。
◇老齢幼虫になると薬剤は効きにくいので、若齢幼虫の防除に重点をおく。
◇発生を認めたら、アファーム乳剤(キャベツ、なばな類等)やフェニックス顆粒水和剤(キャベツ、はくさい、ブロッコリー)等で防除する。

10 野菜類・花き類
【オオタバコガ】(フェロモントラップの誘殺虫数はやや多かった。7月31日防除情報発表。トラップの誘殺状況についてはhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/H27nd/trap_deta/pheromone_trap/ootabako/ootabako_trapH27.htmlを参照。)
◇1頭の幼虫が数個の果実や蕾、新芽を食害するので、1頭あたりの被害が大きい。
◇被害を受けた果実は、果実内に幼虫が入っている可能性が高いので、被害果はほ場外へ持ち出し処分する。
◇老齢幼虫は薬剤が効きにくく、また果実内にいるため薬剤もかかりにくい。
◇発生を確認した場合は、フェニックス顆粒水和剤(なす、トマト、花き類)、プレオフロアブル(なす、トマト、花き類)等で防除する。
◇園全体を防除網(目合4mm)を設置して侵入を防ぐ。

 次の情報は、10月16日頃にお知らせします。

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