病害虫発生・防除メールサービス(4月)

(平成28年4月15日発信)


 大阪府内の4月の病害虫発生状況と今後1ヶ月の防除対策についてお知らせします。
 春は強風の日が多いので、風のある時間帯は散布を避けるなど薬剤散布の際はドリフトに注意しましょう。
春の嵐のように強い風雨を伴った天候の後は、特に病害が発生しやすいので、ほ場を見回るなど注意し、初期発生時の防除に努めるようにしてください。
 農薬を使用する前には、農薬のラベル等で登録内容をよく確認してください。また病害虫防除グループホームページhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/ に掲載している防除指針もご参照ください。
 これまでもお知らせしてきたところですが、新たな農薬の評価手法(短期暴露評価※)が導入されることに伴い、使用制限となる登録変更(変更申請中のものを含む)が行われている農薬があり、注意が必要です。詳しくは、販売店で提供されるチラシ等や病害虫防除グループホームページ「短期暴露評価により変更される農薬の使用方法の周知等について」 http://www.jppn.ne.jp/osaka/H27nd/ARfDtuuti/ARfDH27_top.html で確認してください。

1 水稲
◇昨年、穂いもち病の発生がやや多かったので、発生したところでは特に種子消毒等の対策をしっかりと行う。
【育苗箱の消毒】
◇育苗箱などの資材は使用前にケミクロンG、イチバン等で消毒する。
【種子消毒】
◇農薬を使用する場合
・テクリードCフロアブル、スポルタックスターナSE等で消毒する。
◇温湯消毒の場合の注意
・乾燥した種子または塩水選後1時間以内の吸水の進んでいない種子を使用する。
・60度の湯に10分間浸漬する。引き上げ後、直ちに流水中で冷やす。
・処理した種子は、できるだけ速やかに浸種し催芽を行うか、病原菌が付着しない条件下で風乾後、湿度が低い冷暗所に保管する。なお保管期間はできるだけ短い方が望ましい。
【もみ枯細菌病(苗腐敗症)】
◇出芽時の高温(30度を超える)や多湿は発病を助長するので適正に管理する。
【苗立枯病】
・育苗中に、発生を認めたら、次の薬剤をかん注する。
 ダコニール1000(リゾープス菌)、タチガレエースM液剤(ピシウム菌、フザリウム菌)、 バリダシン液剤5(白絹病菌、リゾクトニア菌)、ベンレート水和剤(トリコデルマ菌)
  ※農作物病害虫防除指針・水稲(苗立枯病)の頁を参照。
    http://www.jppn.ne.jp/osaka/shishin/body/1512/1512%20V%20suitou.pdf
  ※各病原菌による症状等については、Web版大阪府園芸植物病害虫図鑑
  「ひと目でわかる花と野菜の病害虫」(社団法人大阪府植物防疫協会)
http://osaka-ppa.jp/zukan/index.php
【縞葉枯病】(ヒメトビウンカ)
     (近年、ウイルスを保毒したヒメトビウンカの発生がやや多い。)
◇縞葉枯病は、ヒメトビウンカにより媒介される。
◇育苗ほにヒメトビウンカが飛来しないように、周辺のイネ科雑草を除草する。

2 ぶどう(施設栽培)
【灰色かび病】(巡回では、平年並に発生は少なかった。)
◇開花期〜幼果期に発生すると被害が大きい。
◇巨峰などでは、花流れの原因となる場合がある。
◇換気を適切に行って、湿度を下げるようにする。
◇開花後の花かすが発生源となることが多い。落花直後の花かすを取り除く。
◇発生が見られたら、スイッチ顆粒水和剤等を散布する。
◇暖房機ダクトが設置されている施設では、ボトキラー水和剤のダクト内投入による散布も効果的である。
【コガネムシ類】
◇萌芽期に食害を受けると被害が大きい。
◇発生が見られたら、ダントツ水溶剤、アディオン水和剤等を散布する。

3 みかん
【アブラムシ類】
◇発生が見られたら、アルバリン顆粒水溶剤、モスピラン顆粒水溶剤(劇)等を散布する。

4 もも
【せん孔細菌病】(昨年はせん孔細菌病の発生がやや多かった。)
◇伝染源となる春型枝病斑を除去する。
(病斑の近くの葉には、集団的に本病の発生があるので参考とする。)
◇開花後は薬害が発生するので、ICボルドー412は散布しない。

5 いちじく
【霜対策】
◇霜除けは、遅霜の心配がなくなってから除去する。
◇霜害にあい樹勢が低下すると、カミキリムシ類など病害虫の被害を受けやすい。

6 なす(施設栽培)
◇夜間は保温のため閉め切ることが多いが、早朝換気が遅れ、施設内の湿度が高くなると病害が発生しやすい。適度に換気を行い、湿度を下げる。
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例
 アフェットフロアブル(ペンチオピラド)、カンタスドライフロアブル(ボスカリド)
【うどんこ病】
◇発生が予測される時期にベルクート水和剤、ダコニール1000等を予防的に散布する。
◇発生が見られたらトリフミン乳剤、アフェットフロアブル等を散布する。
【灰色かび病】(巡回では、平年並の発生であった。)
◇発病した葉や果実はできるだけ取り除き、ハウス外へ持ち出し処分する。
◇発生が予測される時期にボトキラー水和剤等を予防的に散布する。
◇暖房機ダクトを設置しているハウスでは、ボトキラー水和剤のダクト内投入による散布も効果的である。
◇発生が見られたらカンタスドライフロアブル、ゲッター水和剤等を散布する。
【アザミウマ類】(巡回では平年並の発生であった。)
◇発生が見られたらアファーム乳剤、モベントフロアブル、プレオフロアブル(対象:ミナミキイロアザミウマ)等を散布する。
◇アグリメックはアファーム乳剤と同じ系統の薬剤である。
◇施設栽培では、天敵(生物農薬)の利用も効果がある。
・スワルスキー、スワルスキープラス(アザミウマ類を食べるスワルスキーカブリダニ)
 活動可能温度:摂氏15〜35度
・パイレーツ粒剤(アザミウマ類等に寄生するカビ)
 適温:摂氏20〜30度
・ボタニガードES(アザミウマ類等に寄生するカビ)
 適温:摂氏18〜28度

7 なす(露地栽培)
【育苗期の管理】
◇アザミウマ類、ハダニ類、アブラムシ類、チャノホコリダニ等の微小な害虫に特に注意し、初期防除を徹底する。
【ほ場準備】
◇なす、トマト、じゃがいもなどのナス科野菜の連作は避ける。
◇なす畑の周囲に牧草のソルゴーを植えることで、風の害を防ぐとともに、土着の天敵を育み、アブラムシ類やアザミウマ類の被害を軽減することができるので、ほ場面積に余裕がある場合は、ソルゴーを植えるスペース(ほ場周囲に幅1〜2m)を確保する。

8 トマト・ミニトマト(施設栽培)
◇施設内の湿度が高くなると病害が発生しやすい。適度に換気を行い、湿度を下げる。また、病害による被害葉は早めに除去し、ハウス外に持ち出して処分する。
◇トマトとミニトマトで農薬の登録内容が異なる場合がある。農薬の使用時には注意する。
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI剤の例
 アフェットフロアブル(ペンチオピラド)、カンタスドライフロアブル(ボスカリド)、シグナムWDG(成分の一つボスカリド)
・QoI剤の例
 シグナムWDG(成分の一つピラクロストロビン)
【葉かび病】(巡回では発生は平年よりやや少なかった。)
◇発生が見られたら、トリフミン水和剤、シグナムWDG、アフェットフロアブル等を散布する。
◇トリフミン乳剤はトマトのみに適用があり、ミニトマトでは使用できない。
◇多発する場合は、次作から葉かび病抵抗性品種を用いる。ただし、抵抗性品種でも葉かび病の系統によっては発病することがあるので注意する。
【すすかび病】
◇発生した場合は、トリフミン水和剤、シグナムWDG等を散布する。
◇ファンベル顆粒水和剤はトマトのみに適用があり、ミニトマトでは使用できない。
【灰色かび病】(巡回では、平年よりやや多い発生であった。)
◇例年この時期から発生が増える。
◇葉の先端、開花後の花がら、ガク周辺から発生することが多いので、こまめに取り除く。
◇被害葉や果実は早めに除去し、ハウス外に持ち出して処分する。
◇発生が見られたら、ゲッター水和剤、アフェットフロアブル等を散布する。
【トマト黄化葉巻病(TYLCV)】(タバココナジラミ)
◇トマト黄化葉巻病(TYLCV)は、タバココナジラミによって媒介されるウイルス病である。感染してからは対策がないので、コナジラミ類の防除を徹底する。
◇感染株はすぐに処分する。感染株をビニル袋等に入れて口を縛り、完全に枯死させてから処分する。
【コナジラミ類】
◇タバココナジラミは、吸汁による直接被害のほかに、トマト黄化葉巻病(TYLCV)を媒介する。
◇施設では、開口部を寒冷紗(目合0.4ミリ)で被覆し、成虫の侵入を阻止する。
◇作業者が、コナジラミ類を付着させたまま、複数のハウスを移動しないよう注意する。
◇発生が見られたら、コルト顆粒水和剤、コロマイト乳剤、ベストガード水溶剤等を散布する。

9 たまねぎ
【べと病】・【白色疫病】(巡回では発生が多く、多発ほ場も見られた。病害虫発生予察注意報第1号(4月6日発表))
◇例年3〜5月に発生する。
◇発生適温は15度である。雨が続くと発生しやすい。排水不良の畑で発生が多い。
◇発生が見込まれる時期にジマンダイセン水和剤かランマンフロアブルを散布する。
◇発生が見られたら、リドミルゴールドMZかホライズンドライフロアブル等を散布する。
(注)リドミルゴールドMZ(3回)とジマンダイセン水和剤(5回)は、同一成分(マンゼブ)を含むため合計5回まで


10 あぶらな科野菜(かぶ、こまつな、しろな等)
【白さび病】
◇春に雨が多いと発生が多い。
◇かぶ、しろな、こまつなでは、発生が見込まれる時期にランマンフロアブル等を散布する。
◇あぶらな科野菜は、農薬の適用作物名での分類(「かぶ」「こまつな」「だいこん」「キャベツ」「ブロッコリー」等)と大ぐくりなグループとしての分類(「非結球あぶらな科葉菜類」「なばな類」等)があり、それぞれで農薬の登録内容が異なるので注意する。(農薬登録における適用作物名http://www.acis.famic.go.jp/shinsei/3986/3986beppyou1.pdf)
◇特に、「非結球あぶらな科葉菜類」「なばな類」などは、そのグループに含まれる作物名、品種名等が決まっており、類似の作物でも含まれない場合があるので注意が必要である。

次の情報は、5月15日頃にお知らせします。

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