病害虫発生・防除メールサービス(5月)

(平成28年5月16日発信)


 大阪府内の5月の病害虫発生状況と今後1か月の防除対策についてお知らせします。
 気温が高くなってきました。農作業中の熱中症には気をつけてください。高温時の薬剤散布は薬害がでやすいので注意しましょう。
農薬を使用する前には、農薬のラベル等で登録内容をよく確認してください。また病害虫防除グループホームページhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/ に掲載している防除指針もご参照ください。
 これまでもお知らせしてきたところですが、新たな農薬の評価手法(短期暴露評価※)が導入されることに伴い、登録変更(変更申請中のものを含む)により、使用が制限される農薬があり、注意が必要です。詳しくは、販売店で提供されるチラシ等や病害虫防除グループホームページ「短期暴露評価により変更される農薬の使用方法の周知等について」 http://www.jppn.ne.jp/osaka/H27nd/ARfDtuuti/ARfDH27_top.html で確認してください。

1 水稲
【もみ枯細菌病(苗腐敗症)】(昨年度、もみ枯細菌病の発生はやや少なかった。)
◇出芽時や育苗期間中の高温(30度を超える)や多湿は発病を助長するので適正に管理する。
◇向こう1か月の気温は高く、降水量が多い見込みと予報されている。
◇発病苗は本田に持ち込まない。
【縞葉枯病】(ヒメトビウンカ)(本年は越冬虫の捕獲虫数は少なかった。しかし、近年はウイルス保毒虫率が高い状況が続いている。)
◇縞葉枯病は、ヒメトビウンカにより媒介される。
◇ヒメトビウンカの密度を下げるため、耕起を早めに行うとともに畦畔の除草をする。
◇移植当日にプリンス粒剤やチェス粒剤、ブイゲットアドマイヤー粒剤等を、育苗箱施用する(移植当日までに使用できる農薬もある)。
【いもち病】(昨年度、葉いもち及び、穂いもちの発生は平年よりやや多かった。)
◇低温や多湿、日照不足の時に多発する。山間部などで、発生が多い。
◇向こう1か月の天候は、降水量が多い見込みと予報されている。
◇密植や窒素肥料の多用は、発生を助長するので注意する。
◇補植用の苗が発生源になることが多いので、早めに処分する。
◇発生が予想される場合は、移植当日までにビームプリンス粒剤やオリゼメートプリンス粒剤等の箱施用剤を処理する。
【スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)】
◇ピンク色の卵塊を発見した場合は、水中に掻き落とす。(卵は水中では生存できない。)
◇水深4 cm以下では自由に移動できないので、田植え後の浅水管理が有効である。
◇浅水管理がしやすいように、水田はなるべく均平にならす。
◇田植直後にスクミノン等を散布して、食害を防止する。
 スクミノン使用後は7日間湛水状態にし、かけ流しや落水はしない。
 水田以外(用水路等)には使用しない。
◇田植え後20日ほど経過し、葉が硬化すると食害を受けにくくなる。

2 ぶどう
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI殺菌剤の例 アフェットフロアブル
・QoI殺菌剤の例 ストロビードライフロアブル、ホライズンドライフロアブル(成分の一つファモキサドンが該当)
【灰色かび病】
◇開花期〜落花期に低温多湿が続くと多発生しやすい。
◇巨峰などでは、花流れの原因となる場合がある。
◇花かすが発生源となることが多いので、開花後に刷毛やブロワーで花かすを取り除く。
◇換気を適切に行って、湿度を下げるようにする。
◇発生が見られたら、オンリーワンフロアブル、ピクシオDF等を散布する。
【べと病】
◇気温20〜22度位で、雨が多いと発生しやすい。
◇例年、梅雨時期に発生するので、梅雨前の予防が重要である。
◇ICボルドー66D、ICボルドー48Q、ストロビードライフロアブル等を散布する。
(注)ジベレリン処理とボルドーの近接散布を避ける。

3 温州みかん
【そうか病】
◇樹齢の若い木ほど多発する。
◇昨年多発した園では、予防的にトップジンM水和剤等を散布する。
【ミカンハダニ】
◇発生を確認した場合は、ダニトロンフロアブル、コロマイト水和剤等を散布する。
◇殺ダニ剤に対する抵抗性の発達が懸念されるため、同一系統薬剤の連用を避ける。

4 もも
【せん孔細菌病】
◇強風雨で発生が助長される。
◇発病葉、発病果実は除去し、適切に処分する。
◇発生を確認した場合は、マイコシールド、スターナ水和剤等を散布する。
【アブラムシ類】
◇直接の吸汁害の他、ウイルス病を媒介することもあるので、防除が必要である。
◇発生を確認した場合は、モスピラン顆粒水溶剤、アドマイヤー顆粒水和剤等で防除する。

5 いちじく
【アザミウマ類】
◇園地周辺の除草を行う。
◇発生を確認した場合は、ディアナWDG、モスピラン顆粒水溶剤等を散布する。
【イチジクヒトリモドキ】
◇葉や果皮を加害する黒い毛虫である。
◇蛹で越冬し、5月下旬〜6月上旬、第一世代の幼虫が現れる。
◇新梢生育期に食害を受けると被害が大きいので注意が必要である。
◇若齢幼虫は集団で加害するので、葉ごと処分する方法が効果的である。
◇発生を確認した場合は、アディオン乳剤、デルフィン顆粒水和剤等を散布する。

6 果樹類
【カメムシ類】
◇果樹をよく加害するカメムシ類は、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシの3種である。
◇もも、うめ、かき、ぶどう、みかんなどを加害する。
◇果実袋を使用した場合でも、果実の肥大に伴って果実袋と果実が密着すると、袋の上から吸汁されることがある。
◇園全体を目合4 mmのネットで覆い、侵入を防ぐ。
◇黄色蛍光灯を夜間点灯することでチャバネアオカメムシの被害を軽減することができる。
◇発生を確認した場合は、もも、かき、かんきつでは、アドマイヤー顆粒水和剤、アディオン乳剤、モスピラン顆粒水溶剤等を散布する。
◇作物毎に農薬登録が異なるので注意する。

7 なす(施設栽培)
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI殺菌剤の例 アフェットフロアブル(ペンチオピラド)、カンタスドライフロアブル(ボスカリド)
・QoI殺菌剤の例 アミスター20フロアブル(アゾキシストロビン)、ホライズンドライフロアブル(成分の一つファモキサドンが該当)
【すすかび病】(巡回では、発生は平年並であった。)
◇中・下位葉から発生することが多いので、注意して観察する。
◇被害葉は早めに除去し、ハウス外で処分する。
◇多湿が発病要因となるので、充分に換気する。
◇発生が予測される時期にベルクート水和剤等を予防的に散布する。
◇発生が見られたらトリフミン乳剤、カンタスドライフロアブル等を散布する。
【うどんこ病】(巡回では、発生は平年並からやや多かった。)
◇こまめに摘葉、摘芯を行い、過繁茂にならないようにする。
◇草勢が弱ると多発しやすいので、肥切れにならないように管理する。
◇発生初期に、トリフミン乳剤、アフェットフロアブル等をしっかり散布する。
【アザミウマ類】(巡回では、ミナミキイロアザミウマの発生は平年並からやや少なかった。)
◇ハウス周辺の除草を行う。
◇発生が見られたらアファーム乳剤、モベントフロアブル、プレオフロアブル(対象:ミナミキイロアザミウマ)、ダントツ水溶剤(対象:ミナミキイロアザミウマ)等を散布する。
◇アグリメックはアファーム乳剤と同じ系統の薬剤であるため、続けての使用は避ける。

8 なす(露地栽培)
【アブラムシ類】
◇定植時に使用した粒剤の効果が切れる頃から増加し始める。
◇テントウムシや寄生蜂などの天敵による防除効果が期待できるので、天敵に影響が大きい薬剤の使用は控える。
◇発生量が多い場合は、モスピラン顆粒水溶剤やウララDF等を散布する。
【ハダニ類】
◇ピレスロイド系の薬剤を多用すると、天敵が減少し、ハダニ類が増えやすい。
◇発生が見られたらマイトコーネフロアブルやコロマイト乳剤等を散布する。
◇使用回数が1回までの薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。
◇購入苗の場合は、育苗期の農薬使用履歴もしっかり確認する。
【チャノホコリダニ】
◇微小な害虫で、被害が大きくなるまで発生に気づきにくい。
◇発生を認めたらコロマイト乳剤、ピラニカEW等を散布する。
【ソルゴ囲い込み栽培の注意点】
◇この時期はソルゴが小さく防風効果がないので、風が強い畑では防風網を設置する。
◇天敵類に影響が強いピレスロイド系薬剤を使用しない。

9 トマト・ミニトマト(施設栽培)
◇トマトとミニトマトで農薬の登録内容が異なる場合がある。農薬の使用時には、よく確認する。
◇農薬の使用にあたっては、SDHI殺菌剤、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・SDHI殺菌剤の例 アフェットフロアブル(ペンチオピラド)、カンタスドライフロアブル(ボスカリド)、シグナムWDG(成分の一つボスカリドが該当)
・QoI殺菌剤の例 シグナムWDG(成分の一つピラクロストロビンが該当)
【葉かび病】(巡回では、発生は平年よりやや少なかった。)
◇過湿条件で発生するため、灌水、換気、温度管理に注意する。
◇発生が見られたら、トリフミン水和剤、シグナムWDG、アフェットフロアブル等を散布する。
◇トリフミン乳剤はトマトのみに適用があり、ミニトマトでは使用できない。
【ウイルス病】
◇府内でトマト黄化葉巻病(TYLCV)やトマト黄化えそ病(TSWV)等の発生が確認されている。
◇アブラムシ類、コナジラミ類、アザミウマ類などがウイルスを媒介する。
◇罹病してからでは対策がないので、予防に努める。
◇媒介昆虫の防除を徹底する。
◇開口部に設置した寒冷紗なども、破れ等がないか点検する。
◇感染株は見つけ次第、株元から切り取り、ビニル袋等に入れて完全に枯死させる。
【コナジラミ類】
◇開口部に防虫網(目合0.4 mm)を設置して侵入を防ぐ。
◇発生を確認した場合は、コルト顆粒水和剤、コロマイト乳剤、ベストガード水溶剤等を散布する。

10 たまねぎ 
◇農薬の使用にあたっては、QoI殺菌剤、CAA殺菌剤、フェニルアミド系剤は、耐性菌が生じやすいため、連用は避ける。
・QoI殺菌剤の例 アミスター20フロアブル
・CAA殺菌剤の例 レーバスフロアブル
・フェニルアミド系剤の例 リドミルゴールドMZ(成分の一つメタラキシルMが該当)
【べと病】(巡回では発生が引き続きやや多い。発生のピークは過ぎたが、罹病株がやや多い状態が続いている。(病害虫発生予察注意報第1号(4月6日発表)、病害虫防除情報(5月11日発表))
◇例年3〜5月に発生する。
◇発生適温は15度である。雨が続くと発生しやすい。排水不良の畑で発生が多い。
◇発生が見込まれる時期にジマンダイセン水和剤かランマンフロアブルを散布する。
◇発生が見られたら、リドミルゴールドMZかホライズンドライフロアブルなどを散布する。
(注)リドミルゴールドMZ(3回)とジマンダイセン水和剤(5回)は、同一成分(マンゼブ)を含むため合計5回まで

11 きく
◇農薬の使用にあたっては、QoI殺菌剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避ける。
・QoI殺菌剤の例 ストロビーフロアブル
【黒斑病、褐斑病】
◇雨滴によって感染が拡大するので、晴れ間にしっかり防除する。
◇ダコニール1000、ストロビーフロアブル等を散布して予防する。
【白さび病】
◇ストロビーフロアブル、ステンレス等を散布し、予防に努める。
【ハモグリバエ類】
◇発生がみられたら、トリガード液剤(マメハモグリバエのみ)、スピノエース顆粒水和剤等を散布する。
【アザミウマ類】
◇発生源となる周辺の除草を行う。
◇発生を確認したらディアナSC、ハチハチ乳剤等を散布する。
【アブラムシ類】
◇吸汁による直接被害の他、ウイルスを媒介することもある。
◇発生を確認したらアドマイヤーフロアブル、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤等を散布する。
(注)スタークル顆粒水溶剤とアルバリン顆粒水溶剤は、同一成分を含むため合計の使用回数は5回まで。

12 野菜類・花き類
【オオタバコガ】
◇新しい食害痕や虫糞の排出に注意し、幼虫時に捕殺する。
◇被害を受けた果実は、果実内に幼虫が入っている可能性が高いので、早めに処分する。
◇老齢幼虫は薬剤が効きにくく、また果実内にいるため薬剤もかかりにくい。
◇発生を確認した場合は、スピノエース顆粒水和剤(なす、トマト、きく)、プレオフロアブル(なす、トマト、花き類)等で防除する。
◇黄色灯を終夜点灯することで成虫の飛来を抑制できる。(文末参照)

13 黄色灯によるヤガ類、チャバネアオカメムシの防除
[対象害虫]
◇もも、みかんの果実を吸汁するアカエグリバ等の吸汁ヤガ類、チャバネアオカメムシ。
◇野菜・花き類を食害するハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、オオタバコガ等。
◇成虫の飛来を抑制するもので、幼虫に対して防除効果はない。
◇もも、みかんの果実を吸汁するクサギカメムシ、ツヤアオカメムシに対して防除効果はない。
[設置方法]
◇ほ場内の照度が1ルクス以上になるように、設置する。
◇ほ場の上方や外側にも光が行き届く方が効果が高い。
◇日没1時間前から、日の出1時間後まで点灯すると効果が高い。
◇水稲やきくは夜間に強い光を受けると開花しない。周辺にこのような作物がある場合は黄色灯の設置方向に注意する。

 次の情報は、6月15日頃にお知らせします。

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