病害虫発生・防除メールサービス(9月)

(平成28年9月14日発信)


  9月の病害虫発生状況と今後1か月の防除対策についてお知らせします。
 台風による風雨だけでなく、低温や日照不足、長雨によっても農作物に病害が発生しやすい季節です。
 農作物の栽培管理には十分注意し、必要に応じて薬剤散布等の防除を行いましょう。

 ●各病害虫の発生状況は、巡回調査や植物防疫協力員の報告等をもとにしています。
 ●農薬使用の際は、病害虫防除グループホームページに掲載している防除指針もご参照ください。
  (病害虫防除グループホームページhttp://www.jppn.ne.jp/osaka/)
 ●新たな農薬の評価手法(短期暴露評価)が導入されることに伴い、登録変更(変更申請中のものを含む)によって、
  使用が制限される農薬があり、注意が必要です。
  詳しくは、販売店で提供されるチラシ等や病害虫防除グループホームページ
  「短期暴露評価により変更される農薬の使用方法の周知等について」
  http://www.jppn.ne.jp/osaka/H27nd/ARfDtuuti/ARfDH27_top.htmlで確認してください。


1 水稲
【いもち病(穂いもち)】(発生は平年並からやや少)
 ・低温や日照不足で発生しやすい。中山間部で発生しやすいが、近年平坦部での発生も見られる。
 ・密植や窒素肥料が多い水田では、発生しやすい。
 ・発生が見られたら、ブラシンフロアブル(収穫7日前まで)等で防除を徹底する。
 ・近隣府県ではQoI剤耐性菌が発生しているので、QoI剤の使用は1作1回に留める。
  QoI剤の例 アミスターエイト、イモチエース粒剤等
【もみ枯細菌病】(発生はやや少)
 ・出穂前後の多雨は発病を助長する。
 ・発病ほ場の稲わらやもみ殻は直接水田に還元せず、堆肥化など病原菌密度を減らしてから利用する。
【内えい褐変病】(発生は平年並)
 ・発病ほ場の稲わらや不稔もみは、堆肥化してから利用する。
【ウンカ類】(セジロウンカの発生は平年並)
 ・発生を確認した場合は、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤(収穫7日前まで)等で防除する。
 (注)スタークルとアルバリンは、同一成分を含むため、本田での使用は合計3回まで。
【斑点米カメムシ類】(予察灯への飛来量は平年並。ホソハリカメムシ、アカスジカスミ
             カメ、イネホソミドリカスミカメ等。)
 ・カメムシ類を水田に追い込むため、出穂後の畦畔は除草しない。
 ・発生を確認した場合は、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤(収穫7日前まで)等で防除する。
  (注)スタークルとアルバリンを含む剤は、同一成分を含むため、本田での散布は合計3回まで。
 ・カメムシ類は、日中はあまり活動しないため、薬剤散布は夕方か早朝に行う。
【コブノメイガ】(発生はやや少)
 ・発生を確認した場合は、トレボン乳剤(収穫14日前まで)等で防除する。
 ・羽化後2週間程度すると被害が目立つようになる。
【ジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)】
 ・次年度の発生を減らすため、ピンク色の卵塊を発見した場合は、水中に掻き落とす。
 (卵は水中では生存できない)


2 ぶどう
●SDHI剤、QoI剤、CAA剤は耐性菌が発生しやすいため、同系薬剤の連用は避ける。
 ・SDHI剤の例 アフェットフロアブル
 ・QoI剤の例  ストロビードライフロアブル、ファンタジスタ顆粒水和剤、
         ホライズンドライフロアブル(成分の一つファモキサドンが該当)
 ・CAA剤の例 レーバスフロアブル、ベトファイター顆粒水和剤(成分の一つベンチアバリカルブイソプロピルが該当)
【べと病】(発生は露地栽培で平年並)
 ・秋口になって気温が下がり、雨が多いと再び発生する。
 ・多発して落葉すると樹勢が低下し、次年度にも影響するので、収穫が終わった園も防除する。
 ・発生が予測される時期に、ICボルドー66D等を散布し予防する。
 ・収穫前日数に注意し、収穫期間近の場合は、収穫終了後に散布する。
【褐斑病】 (発生は平年並)
 ・秋期落葉期まで発生し、落葉を早めるので注意する。
 ・多発して落葉すると樹勢が低下し、次年度にも影響する。
 ・発生を確認した場合は、収穫終了後にジマンダイセン水和剤等で防除する。
【ブドウトラカミキリ】
 ・成虫発生時期は8月中旬〜10月上旬である。
 ・収穫後秋期に、モスピラン顆粒水溶剤等で防除する。

3 温州みかん
【そうか病】(発生は平年並)
 ・長雨が続くと発生しやすい。
 ・発生を確認した場合は、トップジンM水和剤等で防除する。
【黒点病】(発生は平年並)
 ・雨によって広がるので、注意が必要である。
 ・降雨前に、ジマンダイセン水和剤(30日前まで)等で防除する。
 (注意)ジマンダイセン水和剤は、かんきつ(みかんを除く)では収穫90日前まで
【ミカンハダニ】(発生は平年並)
 ・発生を確認した場合は、ダニエモンフロアブル、コロマイト水和剤、マイトコーネフロアブル等で防除する。
 ・同一系統の薬剤を連用すると、抵抗性が発達する恐れがある。
 ・ダニトロンフロアブル、ピラニカ水和剤、サンマイト水和剤、マイトクリーンは交差抵抗性があるため、これらの薬剤の連用を避ける。
【ミカンサビダニ】
 ・被害果が数多く確認されてからの防除では充分な効果が得にくい。
 ・マイトコーネフロアブル、コロマイト水和剤、ダニエモンフロアブル等で防除する。

4 いちじく
【疫病】
 ・雨が続くと発生しやすい。
 ・雨水の跳ね上がりなどで伝染するので、敷きわらやマルチを行う。
 ・腐敗果は早めに園外に持ち出して、処分する。
 ・ランマンフロアブル等を散布して防除する。

5 もも
【せん孔細菌病】(発生は平年より多)
 ・秋期に風を伴った降雨が多くなると、越冬病原細菌の量が多くなる。
 ・収穫が終了した園地では、9月〜10月にICボルドー412等を散布する。台風等の影響により、
  落葉が多くなると、落葉痕からの感染が多くなるため、台風等の通過前に散布する。
 ・病斑のある枝を除去する。除去した枝は園外に持ち出して処分する。

6 なす
●農薬の使用にあたっては、QoI剤、SDHI剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避け、1作1回程度の使用に留める。
 ・QoI剤の例 アミスター20フロアブル、ストロビーフロアブル、シグナムWDG (成分の一つピラクロストロビンが該当)
 ・SDHI剤の例 アフェットフロアブル、カンタスドライフロアブル、シグナムWDG (成分の一つボスカリドが該当)
【うどんこ病】(発生は平年よりやや少)
 ・日照不足、乾燥条件下で多発。
 ・こまめに摘葉、摘芯を行い、過繁茂にならないようにする。
 ・草勢が弱ると多発しやすいので、肥切れにならないように管理する。
 ・発生初期に、トリフミン乳剤、ラリー水和剤等を丁寧に散布する。
【褐紋病】(発生は水なすほ場でやや少)
 ・発病した葉や果実、枝は直ちにほ場外へ持ち出して処分する。
 ・種子伝染するので、自家採種を行う場合は健全果から採種する。
【褐色腐敗病】
 ・発病した枝や果実は、直ちにほ場外へ持ち出して処分する。
 ・初期防除が重要なので、発病を認めた場合にはすぐに防除を行う。
 ・降雨による泥のはね上がりを防止するために、マルチや敷きわらを行う。
 ・発生が見込まれる時期に、ランマンフロアブル等で予防する。
 ・発生した場合は、ホライズンドライフロアブル等で防除する。
 ・輸送中にも発病するので、選果・箱詰めは病果に注意して行う。
【アザミウマ類】(発生はミナミキイロアザミウマが平年並からやや少)
 ・巡回調査ではミナミキイロアザミウマの他、ミカンキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマが見られる。
 ・発生が見られたら、アファーム乳剤、モベントフロアブル、プレオフロアブル(ミナミキイロアザミウマのみ)等を散布する。
 ・薬剤散布にあたっては、使用履歴を確認し、使用回数制限に注意する。
【ハダニ類】
 ・発生初期の防除効果が高いので、発見したら速やかにコロマイト乳剤やマイトコーネフロアブル等を散布する。
 ・使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。
【チャノホコリダニ】
 ・微小な害虫で、被害が大きくなるまで発生に気づきにくい。
 ・がく片が褐変するなどの被害が発生したら、コロマイト乳剤、スターマイトフロアブル等を散布する。
 ・使用回数が1回の薬剤が多いので、農薬の使用履歴をしっかり記帳して確認する。

7 トマト・ミニトマト(施設栽培)
●トマトとミニトマトで登録内容が異なる場合があるので、農薬の使用時には注意する。
【トマト黄化葉巻病(TYLCV)】
 ・感染してからは対策がないので、ウイルスを媒介するコナジラミ類の防除を徹底する。
 ・ほ場周辺に、こぼれ種から発芽したり、残さから再生したトマトがあれば、処分する。
 ・開口部に防虫網(目合0.4 mm)を設置し、日頃から破れ等がないか点検する。
 ・感染株は、直ちにビニル袋等に入れて口を縛り、完全に枯死させてから処分する。
【コナジラミ類】
 ・タバココナジラミは、吸汁による直接被害のほかに、トマト黄化葉巻病(TYLCV)を媒介する。
 ・開口部に防虫網(目合0.4 mm)を設置して侵入を防ぐ。
 ・発生を確認した場合は、コルト顆粒水和剤(トマト、ミニトマト)、コロマイト乳剤 (トマト、ミニトマト)等を散布する。

8 きゅうり
●農薬の使用にあたっては、QoI剤、SDHI剤は耐性菌が発生しやすいため、連用は避け、1作1回程度の使用に留める。
 ・QoI剤の例 アミスター20フロアブル、ストロビーフロアブル、フリントフロアブル25、ホライズンドライフロアブル
         (成分の一つファモキサドンが該当)
 ・SDHI剤の例 アフェットフロアブル
【うどんこ病】(発生は平年よりやや少)
 ・草勢が弱ると多発しやすいので、肥切れにならないように管理する。
 ・日照不足、乾燥条件下で多発する。
 ・こまめに摘葉を行い、過繁茂にならないようにする。
 ・発生が見込まれる時期にベルクート水和剤、フルピカフロアブル等を予防散布する。
 ・発生した場合は、トリフミン乳剤、ガッテン乳剤等で防除する。
【べと病】(発生は平年並)
 ・台風のあと発生することが多い。
 ・ハウス内が多湿になると発生しやすいので、排水、換気に注意する。
 ・肥切れになると発生しやすいので、追肥をこまめに行う。
 ・発生が見込まれる時期にジマンダイセン水和剤やランマンフロアブル等で予防する。
 ・発生を確認した場合は、リドミルゴールドMZやホライズンドライフロアブル等を散布する。
  ※ジマンダイセン水和剤、リドミルゴールドMZは同一成分を含むため合計3回まで。
【褐斑病】(発生は平年並)
 ・過湿条件で発生しやすいので、ハウス内の過湿を避ける。
 ・窒素過多は発生を助長するので、窒素肥料のやりすぎに注意する。
 ・べと病や炭そ病に似た病斑を形成するので、正確に診断し、薬剤を選択する。
 ・発生が見込まれる時期にジマンダイセン水和剤やベルクート水和剤で予防する。
【ワタヘリクロノメイガ(ウリノメイガ)】(発生は平年よりやや少)
 ・ハウス抑制栽培の生育初期に発生が認められることが多い。
 ・ハウスの開口部を寒冷紗(目合2 mm)等で被覆し、成虫の侵入を防止する。
 ・生長点および脇芽の先端を食害するので、幼虫を捕殺する。
 ・発生初期にゼンターリ顆粒水和剤、スピノエース顆粒水和剤等を散布して防除する。

9 キャベツ等あぶらな科野菜
●作物によって農薬の登録内容が異なるので、注意。
【根こぶ病】
 ・あぶらな科野菜の連作を避ける。
 ・定植時に温度が高いと発生しやすいので、早植えを避ける。
 ・土壌pHが低いと発生しやすい。石灰質資材等を施用して、pH6.5〜7に調整する。
 ・排水不良のほ場で発生しやすいため、排水を良好にし、過湿を避ける。
 ・発生が予測される畑では、キャベツ、はくさい、ブロッコリーでは、定植前に、ネビジン粉剤やオラクル粉剤を土壌混和する。
【ハイマダラノメイガ(ダイコンシンクイ)】
 ・育苗時期から発生が見られるので、苗床も含め、発生に注意し、初期の防除を徹底す  る。
 ・被覆資材によるべたがけ、トンネルがけの防除効果は高い。
 ・セル成型育苗トレイにプレバソンフロアブル5(キャベツ、はくさい)、ジュリボフロアブル(キャベツ、はくさい、ブロッコリー)等を
  かん注するか、プリンス粒剤(キャベツ、ブロッコリー)等を施用する。
 ・発生初期にスピノエース顆粒水和剤(キャベツ、はくさい等)等を散布する。
【ハスモンヨトウ】
(近年発生はやや多。今年のフェロモントラップの誘殺虫数は平年並。)
 ・200個程度の卵塊で産卵し、若齢幼虫は集団で食害する。中齢幼虫になると分散し、周辺の作物を加害する。
 ・老齢幼虫になると薬剤は効きにくいので、若齢幼虫の防除に重点をおく。
 ・発生を認めたら、アファーム乳剤(キャベツ、なばな類等)やフェニックス顆粒水和剤(キャベツ、はくさい、ブロッコリー)等で防除する。
【コナガ】(近年発生は少なかったが、昨年秋にキャベツ等の一部で発生がやや多。)
 ・発生を認めたら、コテツフロアブル(キャベツ、はくさい、かぶ)、プリンスフロアブル(キャベツ、はくさい、ブロッコリー)、
  アファーム乳剤(キャベツ、はくさい、かぶ)等で防除する。
 ・薬剤抵抗性を生じやすいので同一系統薬剤の連用を避け、ローテーション散布を行う。
 ・幼虫による被害が多いのは秋と春。

10 野菜類・花き類
【オオタバコガ】
 ・1頭の幼虫が数個の果実や蕾、新芽を食害するので、1頭あたりの被害が大きい。
 ・被害を受けた果実は、果実内に幼虫が入っている可能性が高いので、被害果はほ場外へ持ち出し処分する。
 ・老齢幼虫は薬剤が効きにくく、また果実内にいるため薬剤もかかりにくい。
 ・発生を確認した場合は、フェニックス顆粒水和剤(なす、トマト、花き類等)、プレオフロアブル(なす、トマト、花き類等)等で防除する。
 ・園全体を防除網(目合4 mm)を設置して侵入を防ぐ。


  次の情報は、10月14日頃にお知らせします。

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