県内のりんご栽培ほ場で、腐らん病の発生が初めて確認されました。本病は、枝や幹に発生し、
りんご樹を枯死させてしまう病害です。5月上旬の降ひょうでできた傷口から菌が侵入し、被害の
拡大するおそれがあります。
病害虫名:りんご腐らん病(Valsa ceratosperma)
1.発生確認までの経過
本病は、東北地方や長野県などの冬季寒冷地帯で最重要病害の1つとなっており、本年はすで
に、北海道や岩手県で注意報が発表になっています。
本県では、5月に入り、県内のりんご栽培ほ場で腐らん症状の樹が発生し、枝の枯死や幹での
病斑が目立つようになりました。当センターで病原菌の分離培養を行い、農水省農業環境技術研
究所の石井英夫博士に同定を依頼したところ、本病であることが確認されました。
2.腐らん病の病徴
糸状菌(カビ)の一種で、菌糸、柄胞子、子のう胞子で越冬し、伝染源となる。病徴は、枝に発生
する「枝腐らん」と主幹、主枝に発生する「胴腐らん」がある。
・枝腐らん―開花頃から7月頃にかけて2〜3年枝の葉が黄変してしおれ、枝全体が枯死する。
・胴腐らん―春先から初夏にかけて樹皮が不正形で赤褐色となり、指で押すと弾力性がある。
病斑部分の樹皮はアルコール臭を発する。
いずれの場合もさめ肌状となり、黒い粒々の柄子殻が発生する。柄子殻からは黄色の胞子角が
生じ、胞子角形成後に感染が多い。
柄胞子と子のう胞子が風雨により飛散し、傷口だけから感染する。
3.胴枯病との区別
・腐らん病―赤褐色の病斑部からアルコール臭を発し、さめ肌状の黒い粒々が発生する。
・胴 枯 病―暗褐色の病斑と健全部との境に亀裂ができる。
発生は地際部に多い。
4.防除対策
@早期発見、早期防除を行い、地域単位での菌密度の減少に努める。
A枝腐らんは、健全部を含めて切り取り、園外に持ち出して焼却処分する。切り口は、塗布剤で保
護する。
B胴腐らんは、健全部を含む病斑を大きめに削り取り、トップジンMペーストやベフラン塗布剤など
を広めに厚く塗布する。削り屑は集めて焼却する。
C泥まきで防除する場合は、水でよく練った泥を病斑部より大きめに塗りつけ、乾燥防止のため、
ポリエチレンで被覆し、1年間放置する。病斑部は削り取らなくてもよい。
D薬剤散布による防除を行う場合は、仕上げ摘果終了後にトップジンM水和剤、ベンレート水和剤な
どを散布する。
Eその他せん定後の切り口の保護、適正な樹勢管理などの樹勢の維持に努める。