栃木県病害虫発生予察特殊報     栃木県農業環境指導センター  

平成12年度第1号(平成12年6月7日発表)


 
  県内のりんご栽培ほ場で、腐らん病の発生が初めて確認されました。本病は、枝や幹に発生し、
 りんご樹を枯死させてしまう病害です。5月上旬の降ひょうでできた傷口から菌が侵入し、被害の
  拡大するおそれがあります。

                  病害虫名:りんご腐らん病Valsa ceratosperma


 
 1.発生確認までの経過
  本病は、東北地方や長野県などの冬季寒冷地帯で最重要病害の1つとなっており、本年はすで
 に、北海道や岩手県で注意報が発表になっています。
  本県では、5月に入り、県内のりんご栽培ほ場で腐らん症状の樹が発生し、枝の枯死や幹での
 病斑が目立つようになりました。当センターで病原菌の分離培養を行い、農水省農業環境技術研
 究所の石井英夫博士に同定を依頼したところ、本病であることが確認されました。

 2.腐らん病の病徴 
   糸状菌(カビ)の一種で、菌糸、柄胞子、子のう胞子で越冬し、伝染源となる。病徴は、枝に発生
  する「枝腐らん」と主幹、主枝に発生する「胴腐らん」がある。
  ・枝腐らん―開花頃から7月頃にかけて2〜3年枝の葉が黄変してしおれ、枝全体が枯死する。
   ・胴腐らん―春先から初夏にかけて樹皮が不正形で赤褐色となり、指で押すと弾力性がある。
        病斑部分の樹皮はアルコール臭を発する。
   いずれの場合もさめ肌状となり、黒い粒々の柄子殻が発生する。柄子殻からは黄色の胞子角が
  生じ、胞子角形成後に感染が多い。
    柄胞子と子のう胞子が風雨により飛散し、傷口だけから感染する。

 

 3.胴枯病との区別
  ・腐らん病―赤褐色の病斑部からアルコール臭を発し、さめ肌状の黒い粒々が発生する。
  ・胴 枯 病―暗褐色の病斑と健全部との境に亀裂ができる。
        発生は地際部に多い。

 4.防除対策
  @早期発見、早期防除を行い、地域単位での菌密度の減少に努める。
  A枝腐らんは、健全部を含めて切り取り、園外に持ち出して焼却処分する。切り口は、塗布剤で保
     護する。
  B胴腐らんは、健全部を含む病斑を大きめに削り取り、トップジンMペーストやベフラン塗布剤など
    を広めに厚く塗布する。削り屑は集めて焼却する。
  C泥まきで防除する場合は、水でよく練った泥を病斑部より大きめに塗りつけ、乾燥防止のため、
   ポリエチレンで被覆し、1年間放置する。病斑部は削り取らなくてもよい。
  D薬剤散布による防除を行う場合は、仕上げ摘果終了後にトップジンM水和剤、ベンレート水和剤な
     どを散布する。
  Eその他せん定後の切り口の保護、適正な樹勢管理などの樹勢の維持に努める。
 

詳しくは農業環境指導センターにお問い合わせください。
                          Tel(028)626-3086
                          Fax(028)626-3012