平成16年度病害虫発生予察特殊報第1号

栃木県農業環境指導センター 平成16年11月15日  


    IYSV(Iris yellow spot virus)による
             トルコギキョウの病害について

1 病原ウイルス: IYSV(Iris yellow spot virus)

2 作物名:トルコギキョウ

3 発生経過
 平成16年4月、県南部(小山市、佐野市)の施設栽培のトルコギキョウで葉にえそ斑点や萎縮等の症状を示す株が発生した。農業試験場病理昆虫研究室で抗原抗体法及びPCR法で検定したところ、県内で未発生のIYSV(Iris yellow spot virus)と同定された。
  なお、本病は2001年6月に、佐賀県で初めて発生が確認されている。

4 病徴
 症状は品種によっても異なるが、一般的には葉の黄化、えそ輪紋、茎のえそ条斑及び株の萎縮等を生じる。

[佐野市のほ場での発生状況] 

[小山市のほ場での葉のえそ斑点症状]

5 病原ウイルスの性質及び伝染
 本ウイルスの形態は被膜を持つほぼ球状の粒子である。県内のトマト等で発生しているTSWV、シクラメン等で発生しているINSVと同じトスポウイルス属に属する。
 本ウイルスはネギアザミウマにより媒介され、一度ウイルスを獲得したネギアザミウマの個体は終生ウイルスを伝搬することができるが、経卵伝染については明らかではない。また、管理作業による汁液伝染、土壌伝染、種子伝染の有無についても不明である。 

6 ネギアザミウマについて
 ネギアザミウマは、ネギ、タマネギ、ニンニクなどの害虫である。体長は1.1〜1.6mm、体色は黄色のものから褐色のものまで変異が見られ、一般に夏期は淡色系、冬期は暗色系が多い。発育は非常に早く、産卵された卵は20℃で20日、25℃で16〜17日で成虫になる。発生の最盛期は6月〜9月で、この期間に気象条件が高温少雨に推移すると多発生となる。

7 感染植物(海外における報告も含む)
 リンドウ科:トルコギキョウ
 ユリ科:タマネギ、ニラ、リーキ
 アヤメ科:ダッチアイリス
 ヒガンバナカ科:アマリリス、クリビア(クンシラン)
 ヒユ科:センニチコウ
 アルストロメリア科:アルストロメリア 

8 防除対策
(1)媒介虫であるネギアザミウマの防除を徹底する。
(2)本病が疑われる株は、見つけ次第直ちに抜き取り、施設外の土中に埋める。
(3)ネギアザミウマの繁殖場所となるので、施設内外の除草を徹底する。
(4)施設栽培では、開口部に防虫網や寒冷紗を張り、施設内へのアザミウマの侵入を防
  ぐ。
(5)栽培終了後、施設を密閉し、作物や雑草を枯死させてアザミウマを死滅させる。

 トルコギキョウでアザミウマ類に登録がある薬剤

  薬 剤 名 使用方法  倍数(使用量)  使用基準
ジェイエース粒剤 株元散布 1株当たり1〜2g 発生初期/5
スカウトフロアブル 散布  2000倍 −/5
ペイオフME液剤 散布  2000倍 発生初期/3
マブリック水和剤20 散布  4000倍 発生初期/2
TEL 028−626−3086
http://www.jppn.ne.jp/tochigi/