平成17年度病害虫発生予察特殊報第2号
栃木県農業環境指導センター 平成18年1月16日

Tomato yellow leaf curl virus による
トマト黄化葉巻病の発生について
 
1 病原ウイルスTomato yellow leaf curl virus (TYLCV)
 
2 作物名トマト
 
3 発生経過
   平成18年1月上旬に、下都賀農業振興事務所管内のトマトハウスにおいて、上位葉が黄化
  し、葉巻症状を呈する株が確認された。農業試験場病理昆虫研究室でPCR法による検定を行
  ったところ、1月12日に県内では未確認のTomato yellow leaf curl virus(TYLCV)によるトマト
  黄化葉巻病であることが判明した。
   本病は、平成8年に静岡県において日本で初めて発生が確認されてから、西南日本を中心
  に分布を拡大し、平成18年1月13日現在、24府県で発生が確認されており、大きな被害を
  もたらしている。
 
4 病 徴
   発病初期は、頂葉が葉縁から退色しながら葉巻症状を呈しその後、葉は表側に巻き
 葉脈間が黄化縮葉する。さらに病徴が進行すると頂部が叢生(そうせい)し、株全体が萎縮す
 る。特に生育初期に感染すると、激しく発病する。なお、発病後は開花しても結実しないことが多
 く、発病前に着果した果実は小玉傾向にあり、大きく減収する。
                       初期の症状                葉巻症状
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 





 
 
5 伝搬方法
   本病はシルバーリーフコナジラミのみによって媒介される。成虫及び幼虫ともにわずか約
 15分の吸汁でウイルスを獲得し、約1日の潜伏期間の後、死亡するまで伝搬能力を保持する。
 汁液伝染、種子伝染、土壌伝染、経卵伝染はしない。
 
6 ウイルスの寄主範囲
   国内で自然感染して症状が確認されているのは、栽培作物としてはトマト、ミニトマト、トルコ
 ギキョウだけであり、自然感染して無病徴の作物としてピーマンがある。雑草で自然感染が確認
 されているのは、センナリホウズキ、タカサブロウ、ノボロギク、ノゲシ、エノキグサ、ハコベ、ウシ
 ハコベ、ホソバツルノゲイトウがあるが、いずれも無病徴である。
 
7 防除対策
(1)罹病株は伝染源となるので、見つけ次第抜き取る。抜き取った株は放置せず、土中に埋没す
  るか、ビニール袋などで密封し枯死させてから処分する。
(2)シルバーリーフコナジラミの発生を確認したら直ちに薬剤による防除を行う。薬剤については
  アルバリン顆粒水溶剤、スタークル顆粒水溶剤、バリアード顆粒水和剤、ベストガード水溶剤、
  モスピラン水溶剤、アプロード水和剤、サンマイトフロアブル等を散布する。
(3)施設栽培ではシルバーリーフコナジラミの侵入を防止するため、施設の開口部に防虫ネット
  (0.4mm目以下)を張る。
(4)シルバーリーフコナジラミの寄主植物は500種以上あると言われており、施設内外の雑草は
  生息、増殖場所となるので、除去する。また、鉢物など栽培に関係ない植物は施設内に持ち込
  まない。
  ※薬剤散布時には、使用基準をよく確認する。ミニトマトは登録内容が異なるので注意する。

TEL 028−626−3086
http://www.jppn.ne.jp/tochigi/