平成17年度病害虫発生予察特殊報第3号
栃木県農業環境指導センター 平成18年2月16日

サクセスキクイムシによるなし果実の被害について
 
 本県において、サクセスキクイムシ(Xyleborus saxeseni Ratzeburg)の食害痕(穿孔)がなしの果実で確認された。本種はなしの幹及び主枝を加害するキクイムシ類の主要種で、成虫が木質部に食入して、樹勢の低下や胴枯病などの枝幹病害を併発して枯死に至らせることが知られている。
本種による果実への穿孔被害は、本県では初めて確認されたものである。
 
1 発生確認までの経過
  平成17年9月に、南那須農業振興事務所管内のなし園において果実に直径約1o程度の食害 痕(穿孔)が確認された(写真1、2)。被害果の内部にはキクイムシの成虫が認められた(写 真3)。現地より持ち込まれた標本を、独立行政法人森林総合研究所九州支所森林動物研究グループに同定依頼した結果、平成18年1月にサクセスキクイムシと同定された。
 
2 サクセスキクイムシの特徴
(1)形態:雌成虫は、体長が約2oで細長く、少し光沢をもつ茶褐色〜黒褐色である。
(2)生態と被害
  年1〜2回発生する。成虫で樹内越冬し、4〜5月頃脱出して倒木などに深く穿孔する。孔道の直径は約0.7oで食入後に細かい木屑を排出する。比較的大木、老木、太い幹や主枝を好んで加害する。
(3)寄主作物
各種針葉樹、広葉樹に寄生する。果樹類ではなし、りんご、もも、かき、くりなどで弱った枝幹部への穿孔被害が多く報告されている。           
 
写真1 被害果 写真2 被害部拡大 写真3 成虫(背面)

3 防除対策
(1)樹勢の衰弱した樹は本種の加害を受けやすいので、適切な肥培管理等により樹勢の維持を図る。 
(2)被害果が認められた樹の周辺には、本種に加害を受けている樹がある可能性が高いため、食入後の細かい木屑を目印として被害樹がないかよく観察する。
(3)被害樹を確認した場合、サクセスキクイムシの活動時期である4〜5月に、トラサイドA乳剤200倍液(農薬登録内容:4〜7月(但し、収穫21日前まで)/5回以内)を樹幹部に十分散布し、食入を防止する。既にキクイムシが食入して木屑の排出があっても、主幹部にトラサイドA乳剤を散布をすることにより、 殺虫効果が認められている。
 
TEL 028−626−3086
http://www.jppn.ne.jp/tochigi/