植物防疫ニュース(速報 第12号) 平成18年10月26日
栃木県農業環境指導センター

イネいもち病箱処理剤耐性菌の発生実態と防除対策
 
 平成16年に、ウィン(カルプロパミド)、デラウス(ジクロシメット)等のMBI-D系統薬剤に対するいもち病耐性菌の発生を、農業試験場が県北部の1ほ場で確認した。これを受け、平成17年に当センターでMBI-D剤耐性菌の発生状況調査を実施したところ、4市町6ほ場で耐性菌の発生を確認した(平成17年度植物防疫ニュース(速報第4号)参照)。
 そこで、全国的な発生の動向やMBI-D剤の連用などにより耐性菌の発生拡大が懸念されることから、平成18年においてもMBI-D剤耐性菌の発生実態を調査した。
 
1 MBI-D剤耐性菌の発生状況
(1)

 
平成18年6月から8月に、当センター及び農業振興事務所で採集したいもち病罹病葉を検定に供試した。
検定の結果、13市町50ほ場調査中、5市町24ほ場で耐性菌を確認した。
(2)
地域別では、平成17年までに発生を確認した那須地域、南那須地域に加え、新たに上都賀地域での発生を確認した。
 
   地域別MBI-D剤耐性菌の発生状況(平成18年10月26日現在)

    地域名
調査ほ場数
 
調査菌株数
 
耐性菌発生ほ場数
(発生ほ場率 %)
 耐性菌株数
(耐性菌株率 %)

   河内地域
   上都賀地域
   芳賀地域
   下都賀地域
   塩谷地域
   那須地域
   南那須地域
   安足地域
    3
    2
    1
    1
    3
   34
    5
    1
   11
   6
   3
   3
   9
  152
   21
   2
    0( 0 )
    1(50.0)
    0( 0 )
    0( 0 )
    0( 0 )
   22(64.7)
    1(20.0)
    0( 0 )
    0( 0 )
    4(67.7)
    0( 0 )
    0( 0 )
    0( 0 )
   66(43.4)
    3(14.3)
    0( 0 )

 
2 今後の防除対策
(1)
  
 
同一系統の薬剤の連用は耐性菌の発生要因となるので、耐性菌が発生している地域はもとより発生していない地域においても、MBI-D剤の連用を避け、作用機構の異なる抵抗性誘導剤やMBI-R剤等を使用する。
(2)
 
箱処理剤は年次ごとにローテーションで使用する。また、本田防除剤は箱処理剤と異なる系統の薬剤を使用する。
(3)
 
自家採種は耐性菌拡散の原因となるので、必ず種子更新を行う。なお、未消毒種子を購入した場合は、種子消毒を徹底する。

詳しくは、農業環境指導センターまでお問い合わせください。
п@028−626−3086
http://www.jppn.ne.jp/tochigi/
 


(参考資料)主ないもち病防除剤の作用機構による分類
  分  類 一般名(主な商品名)
種消
子毒
  剤
EBI剤 イプコナゾール剤(テクリード)、トリフルミゾール剤(トリフミン)、プロクロラズ剤(スポルタック)、ペフラゾエート剤(ヘルシード)

 箱

 処

 理

 剤
 
メラニン生合成阻害剤 MBI−R
(還元酵素阻害型)
トリシクラゾール剤(ビーム、フルサポート)
ピロキロン剤(デジタルコラトップ)
MBI−D
(脱水酵素阻害型)
カルプロパミド剤(ウィン)、
ジクロシメット剤(デラウス)
抵抗性誘導剤 プロベナゾール剤(Dr.オリゼ、ジャッジ)、
チアジニル剤(ブイゲット)
ストロビルリン系剤 アゾキシストロビン剤(アミスター)、
オリサストロビン剤(嵐)
その他の化学薬剤 イソプロチオラン剤(フジワン)

 本

 田
 
 剤




メラニン生合成阻害剤 MBI−R
(還元酵素阻害型)
フサライド剤(ラブサイド)、トリシクラゾール剤(ビーム)、ピロキロン剤(コラトップ)
MBI−D
(脱水酵素阻害型)
ジクロシメット剤(デラウス)、
フェノキサニル剤(アチーブ)
抵抗性誘導剤 プロペナゾール剤(オリゼメート)、
チアジニル剤(ブイゲット)
ストロビルリン系剤
アゾキシストロビン剤(アミスター)、メトミノストロビン剤(オリブライト、イモチエース)、
オリサストロビン剤(嵐)
抗生物質剤 カスガマイシン剤(カスミン)
有機リン系殺菌剤 IBP剤(キタジンP)、EDDP剤(ヒノザン)
その他の化学薬剤 イソプロチオラン剤(フジワン)、
フェリムゾン・フサライド剤(ブラシン)