平成18年度病害虫発生予察特殊報第1号
平成18年7月7日
栃木県農業環境指導センター
IYSVによるにら、たまねぎ、
ねぎの病害について
1 病原菌:Iris Yellow Spot Virus(IYSV)
2 作物名:にら、たまねぎ、ねぎ
3 発生経過
2005年6月、栃木県上三川町のにらで葉に退緑斑やえそ条斑を呈する症状が発生した。そ
こで、本県農業試験場病理昆虫研究室において罹病株を採取し、DAS-ELISA検定及び
RT-PCRを行った結果、IYSVに感染していることが明らかになった。
にらからIYSVを単一局部病斑分離し、ネギアザミウマによる伝播試験を行ったところ、原病
徴が再現され、接種葉のRT-PCRによりIYSVの感染が確認された(ニラえそ条斑病(新称)で
病名提案中)。
なお、県内のねぎ、たまねぎにおいても同様な症状が発生しており、DAS-ELISA検定及び
RT-PCRを行った結果、IYSVに感染していることが明らかになった。
4 病 徴
にらでは初期には葉身において長さ5mmほどの色が抜ける条斑が発生し、後にはっきりとし
た淡黄色〜白色のえそ条斑となる。さらに症状が進むとこれらは融合して、不鮮明なえそ病
斑となる。
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にらの初期症状 |
にらのえそ条斑 |
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たまねぎの病斑 |
ねぎの病斑 |
5 病原ウイルスの性質及び伝染
本ウイルスの形態は被膜を持つほぼ球状の粒子である。県内のトマト等で発生しているTS
WV、シクラメン等で発生しているINSVと同じトスポウイルス属に属する。
本ウイルスはネギ アザミウマにより媒介され、ウイルスを獲得したネギアザミウマは終生ウ
イルスを伝搬すること ができる。なお、経卵伝染、土壌伝染、種子伝染はせず、一般管理作
業による汁液伝染の可 能性は低い。
6 ネギアザミウマについて
にら、ねぎ、たまねぎ、にんにくなどの害虫である。体長は1.1〜1.6mm、体色は黄色のもの
から褐色のものまで変異が見られ、一般に夏期は淡色系、冬期は暗色系が多い。
発育は非
常に早く、産卵された卵は20℃で20日、25℃で16~17日で成虫になる。発生の最盛期は6月〜
9月で、この期間に気象条件が高温少雨に推移すると多発生となる。
7 防除対策
(1)にらの施設栽培では、紫外線カットフィルムを被覆したり、施設開口部に防虫ネットを張り、ネ
ギアザミウマの侵入を防ぐ。
(2)雑草うはネギアザミウマの増殖源となるので、ほ場内外の雑草防除を行う。
(3)薬剤によるネギアザミウマの防除を徹底する。
8 ネギアザミウアマ及びアザミウマ類に登録のある農薬
《にらに登録がある農薬》
アグロスリン乳剤 |
2,000倍 |
収穫7日前まで/3回以内 |
ネギアザミウマ |
モスピラン水溶剤 |
4,000倍 |
収穫前日まで/3回以内 |
アザミウマ類 |
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《たまねぎに登録がある農薬》
アグロスリン乳剤 |
2,000倍 |
収穫7日前まで/5回以内 |
アザミウマ類 |
エルサン乳剤 |
1,000倍 |
収穫7日前まで/4回以内 |
アザミウマ類 |
パプチオン乳剤 |
1,000倍 |
収穫7日前まで/4回以内 |
アザミウマ類 |
ダイアジノン乳剤40 |
1,000〜1,200倍 |
収穫21日前まで/2回以内 |
アザミウマ類 |
オルトラン水和剤 |
1,000倍 |
収穫21日前まで/5回以内 |
ネギアザミウマ |
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《ねぎに登録がある農薬》
オンコル粒剤5 |
3〜6kg/10a植溝土壌混和又は株元散布 |
定植時又は生育期(ただし収穫45日前まで)/1回) |
ネギアザミウマ |
ジメトエート粒剤 |
3〜6kg/10a作条施用 |
移植前〜収穫30日前まで/6回以内 |
アザミウマ類 |
モスピラン水溶剤 |
2,000倍 |
収穫7日前まで/3回以内 |
ネギアザミウマ |
アクタラ顆粒水溶剤 |
1,000〜2,000倍 |
収穫3日前まで/3回以内 |
ネギアザミウマ |
アルバリン顆粒水溶剤 |
2,000倍 |
収穫3日前まで/2回以内 |
ネギアザミウマ |
エルサン乳剤 |
1,000倍 |
収穫21日前まで/4回以内 |
アザミウマ類 |
オンコルマイクロカプセル |
1,000〜2,000倍 |
収穫14日前まで/1回 |
ネギアザミウマ |
アグロスリン乳剤 |
2,000倍 |
収穫7日前まで/5回以内 |
アザミウマ類 |
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注)農薬はラベルの表示を確認して正しく使用してください。
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